砂中で咲く石Ⅰ~Barter.11~

志賀雅基

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第39話

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 第一駐屯地正面正門扉の第一突入班、銃撃隊に組み込まれた霧島と京哉は他の要員らと共に砂嵐が去る僅か前に中型ヘリから降ろされた。
 息もつけず目も開けられない砂嵐に耐えること十数秒、唐突に砂嵐は止む。携帯を持つ連絡係が戦闘開始を大声で報告した。

 間髪入れず上空の小型ヘリ三機が急降下しチェーンガンでアタックを掛けた。同時にヘリ後部から対空砲に向けてグレネードが発射される。
 一旦離脱する間に砲声が轟いた。最小射程のため殆ど時差なく迫撃砲弾が飛来し駐屯地内に着弾する。これも対空砲の位置を狙ったものだ。

 次弾装填までに小型ヘリ、リアタック。

 それらの爆音を聞きつつ地上班は人海戦術及び力業で頑丈なフェンスを薙ぎ倒し、最初の強敵である金属塀の扉に無反動砲二基で交互に砲弾をぶち込み破壊し始める。

 同じ班で霧島と京哉が元から知っていたメンバーは無反動砲を発射しているレズリー、RPGのバイヨル、あとは銃撃隊のクーンツくらいだったがフレンドリーファイアなる同士討ちを避けるため、地上班四十八名は互いの顔を頭に叩き込んであった。

 駐屯地内から対空砲火の一連射があり、無反動砲弾や金属の破片から身を避けつつ全員が空を仰ぎ見る。だが幸い小型ヘリは無事のようだ。

 上空ヘリからの指示で迫撃砲の次弾が潰したのか、それから対空砲は沈黙したままだった。ここぞとばかりに小型ヘリはチェーンガンとドアガン、グレネードで地上を思うさま蹂躙する。

 迫撃砲の砲声が二度響き、駐屯地内から人々の甲高い声が聞こえてきた。

「あと一発で開くぞ!」

 無反動砲に砲弾をセットしながら男が叫び、皆が一様に頬を引き締める。内側に悟られていない訳はなく敵が待ち構えている筈だ。霧島が前に出る。京哉も倣った。

「第二、第三班突入!」

 他班の状況を大声でクーンツが報告すると同時に分厚い金属ドアが吹き飛ぶ。

「開いたぞ、突入だ! 突入!」

 金属板が倒れると霧島と京哉がサブマシンガンをフルオートでぶちかまして弾幕を張った。ここで残弾を惜しんで失敗はできない、一瞬でロングマガジン三十発を使い切る。すぐさまスリングで肩にかけていたサブマシンガンと持ち替えて薙いだ。

 同じくサブマシンガンを持ったメンバーの男も銃口をこちらに向ける兵を次々と倒している。だが兵は限りなく湧いてきてキリがない。そこで敵の一団に対し後方爆風に味方を巻き込まぬよう確認したバイヨルがRPGを発射した。

 RPG砲弾は敵兵の一人の胸を突き破るように着弾し信管を作動させたロケット弾は炸裂、弾けるように敵は夜闇に散る。先陣を切る霧島が低く通る声を短く発した。

「行くぞ!」

 もうフレンドリーファイアの危険があるので迫撃砲や上空の小型ヘリからの支援は期待できない。霧島と京哉は自前の銃を手に周囲を警戒しつつ先へと進む。
 建物の陰から飛び出してきた兵士二人に霧島はシグ・ザウエルP226でダブルタップとヘッドショット。

 京哉も同じく速射でヘッドショットを食らわせ三人を倒した。
 フルオートの一薙ぎで倒されないよう、皆が散開しながら二人に続く。

 地図上で第一武器庫とされていた小屋にレズリーが無反動砲を発射した。赤毛の大男は十五キロ以上もある砲を軽々と担いで二弾目を装填しトリガを引く。

 派手に炎と煙の後方爆風が巻き起こり、小屋の壁は木っ端微塵の素通しになった。
 その小屋跡に向けバイヨルがとどめとばかりにRPGをぶち込んで兵の火器を無力化する。

 敵兵は数こそいたがパニック状態で右往左往し、武器を手にしていない者も多かった。霧島と京哉は銃口を向けてくる者だけを的確に撃っては歩を進める。

 手持ちの官品であるスペアマガジン二本の他にデポで見つけたスペアマガジンもそれぞれ二本ずつベルトに挟んで所持していた。そこまで使う気はないが残弾の心配はせずに済む。

 当然ながら本当は霧島だってこんな所で人など殺したくはなかった。だが自分の一言がきっかけとなり大きな流れができあがったのだ。それでもよそ者である自分たちは、喩えるなら奔流の真ん中にある頑丈な中州にいたようなものである。

 状況から抜け出すことが難しかったのも事実だが、幾らでも言い訳は思い付き傍観も不可能ではなかったのだ。

 しかし自ら流れの一滴になるのを覚悟して飛び込んだのは、義理でも責任感でもない。ただ皆が死ぬのを眺めていたくなかった、それだけだ。
 何も一緒に死にたい訳ではない。京哉と二人で日本に帰るのは大前提である。けれどここで傍観者の立場を選び、結果だけ耳にしても到底納得できないだろうと感じた。

 己が納得し見届けるために参加する。そう決めた以上は霧島自身が前に口にした通り、中途半端な真似をして周囲を惑わしてはならないと覚悟も決めていた。

 敵兵を撃ち倒しながら霧島はまた考える。長い長い時間をかけて先人たちがこれだけの武器を集め、反政府武装勢力もこれだけの兵力を結集するだけの力を持つに至った。そこに自分たちという異分子が飛び込み、流れの方向を決定づける因子のひとつになった。

 予測通りにこれら全てが某大国のスパコンレヴェルでのシミュレーション通りならば、自分たちが妨害されなかった点から、おそらく反政府ゲリラが勝つことが予想できる。問題はその先だ。

 某大国は自らの利になるから反政府ゲリラに勝たせるのだ。逆を言えば勝ったゲリラの存在は某大国の利になる。ここにきてようやくまとまり勝ちを得たゲリラを某大国はどうしたいのか。何故クーデターを成功させ得るまでゲリラを集結させた……?

「忍さん、十一時方向、二人!」

 数えていた京哉の残弾一発、その華奢な躰を背で庇いサブマシンガンを持った敵の腹にダブルタップ。コンマ数秒と掛からずマガジンチェンジした京哉がヘッドショットで斃す。今度は霧島が残弾一、京哉の援護でこちらもマグチェンジした。

「あんたらと一緒だと撃つものがないな」

 大統領官邸エントランスまで約百メートル、隣のクーンツが走り出しながら笑う。

「官邸内はそうも言ってはいられんぞ」
「分かってるさ、選りすぐりの親衛隊ご一行様だろう?」
「第二、第三班は?」
「まもなく到着、いいタイミングだな」

 見えてきた官邸周囲を護るように十を越す人影があった。武装したそれは遠目にも分かる飾緒を着けた制服姿である。栄えある軍人として死ぬための晴れ姿でもあるまいしと、眉をひそめて霧島は一旦皆の進軍を止めた。傍の建物の無人を確認して陰に潜ませる。

 班の人員から霧島と京哉はライフルを借り、制服の男たちを片端から撃ち倒し始めた。この程度の距離ならスナイパーの京哉でなくても当たる。可能な限り霧島は肩を狙いジャスティスショットで済ませた

「分かりやすくていいですね」
「バックの明かりも消さないとは、素人以下のようだな」
「張り子の虎ってヤツかも」

 反撃は一度霧島の耳を衝撃波が掠めただけ、難なく制服たちを排除した。
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