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片思いごっこ
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朝目が覚めると、隣人の部屋のベッドで寝ていた。隣人はソファで寝ていて、それがあまりにも普段通りだったから、ああ、なんてエロい夢を見てしまったのだと思った。夢とはいえまた隣人を邪なオカズにしてしまった。そう思うと罪悪の念が拭えなかった。
しかしあれが本当なら夢のようだったのに。夢で残念な気もする。
「やっべ!」
慌てて時計を見るが、そういえば今日は二人とも休みだったことを思い出した。
ほっと胸を撫で下ろしてソファで眠る隣人を見つめる。
格好いいな。
あんな夢を見たせいか、妙に隣人の唇が艶めかしく見えていけない。
キスしたいな。無理だけど。
ゆっくりしていたかったけれど、なんだか久々に感じた性欲と、隣人をオカズにしてしまった罪悪感で、そっと寝床を抜け出すと必要なものを持って自分の部屋に戻った。
「おはよう。幻ちゃん」
「あ、おー」
出勤時顔を合わせた時は冷静さを装うのが大変だった。動揺しているのはバレなかっただろうか。最近ようやくいい感じに親友をやれているというのに、こんな邪な悶々を抱くなんて。早く封印してしまわなくては。
「あのさ、幻ちゃん昨日」
「ああ悪い悪い、先に寝ちゃって」
悪酔いしてしまった。酒もほどほどにしなければ。
「あ、……うん」
少しの間沈黙する。
「じゃ、俺行くわ」
夢に見た内容なんて隣人にはわかるはずがないのに、気まずさを感じて沈黙を破るように笑顔でその場を離れた。
「あ、いってらっしゃい」
隣人も笑顔で俺を見送る。普段と変わらない朝なのに、なんだか今日はお互いの間に不思議な空気が流れていた。
その不思議な空気感は数日続き、あの日を境に少しだけ二人の関係が変わってしまったような気さえした。
俺が隣人を意識し過ぎているのか? そんな俺の些細な変化に隣人も微妙な受け答えになってしまうのか。
今までどんな風に接してきたのか急にわからなくなったようで気持ちが悪い。
早く元に戻りたい。
そう思えば思うほど不器用な俺はギクシャクとしてしまった。
その頃から、隣人の家を尋ねてくる男の姿を目撃するようになった。
訪ねてきたその男を隣人が笑顔で招き入れるのを何度か見た。
別に男友達がいたって不思議じゃないし、そもそも隣人はゲイじゃないんだし、気にすることじゃないのはわかっている。けれど無性にそのことが気になって苛ついた。これまでは俺が隣人の部屋に行くことはあっても誰か他の奴を招き入れたりはしていなかったのに。
別に俺とあいつは恋人同士じゃないんだから、嫉妬するなんておこがましいのはわかっている。
だけど見かける度に胸がチクチクと痛んだ。
その男を迎え入れる時にたまたま顔を合わせた隣人がこちらに向かって挨拶してきたけれど、適当な笑顔を見せて部屋に入ってしまった。
何してんだ。俺は。
そう思いながら部屋の壁にしだれかかる。
恋人にはなれない。そうわかっていても、一番仲の良い親友でいたい。そう思っている。
なのに今はその座すら危うくなっている。
それすらも傲慢なのだとわかりながら、嫉妬心が止められない。
いっそもうフェードアウトした方が楽だろうか。
これからあいつに彼女が出来て、彼女を優先するようになって、俺とも遊ばなくなって。隣からあいつがその彼女とセックスするような音でも漏れ聞こえてきたりして、その後結婚して子供が出来て。
そんなあいつの人生を隣で見ていくことに耐えられるだろうか。
でもそれはきっと訪れる未来で、当たり前で。
だったらいっそそうなる前に引っ越しでもしようか。
(ああ、また逃げるのかな。俺)
そんな風に考えていたら頬を涙が伝っていった。両手で顔を覆い床に崩れ落ちる。
だから恋なんてしないでいようと決めたのに。
隣人と再会出来た偶然を喜んだあの時の俺は今はいない。
「どうして隣になんて越してきたんだ」
可愛いリンちゃんのまま、時間と共に忘れてしまった方が楽だったな。
しかしあれが本当なら夢のようだったのに。夢で残念な気もする。
「やっべ!」
慌てて時計を見るが、そういえば今日は二人とも休みだったことを思い出した。
ほっと胸を撫で下ろしてソファで眠る隣人を見つめる。
格好いいな。
あんな夢を見たせいか、妙に隣人の唇が艶めかしく見えていけない。
キスしたいな。無理だけど。
ゆっくりしていたかったけれど、なんだか久々に感じた性欲と、隣人をオカズにしてしまった罪悪感で、そっと寝床を抜け出すと必要なものを持って自分の部屋に戻った。
「おはよう。幻ちゃん」
「あ、おー」
出勤時顔を合わせた時は冷静さを装うのが大変だった。動揺しているのはバレなかっただろうか。最近ようやくいい感じに親友をやれているというのに、こんな邪な悶々を抱くなんて。早く封印してしまわなくては。
「あのさ、幻ちゃん昨日」
「ああ悪い悪い、先に寝ちゃって」
悪酔いしてしまった。酒もほどほどにしなければ。
「あ、……うん」
少しの間沈黙する。
「じゃ、俺行くわ」
夢に見た内容なんて隣人にはわかるはずがないのに、気まずさを感じて沈黙を破るように笑顔でその場を離れた。
「あ、いってらっしゃい」
隣人も笑顔で俺を見送る。普段と変わらない朝なのに、なんだか今日はお互いの間に不思議な空気が流れていた。
その不思議な空気感は数日続き、あの日を境に少しだけ二人の関係が変わってしまったような気さえした。
俺が隣人を意識し過ぎているのか? そんな俺の些細な変化に隣人も微妙な受け答えになってしまうのか。
今までどんな風に接してきたのか急にわからなくなったようで気持ちが悪い。
早く元に戻りたい。
そう思えば思うほど不器用な俺はギクシャクとしてしまった。
その頃から、隣人の家を尋ねてくる男の姿を目撃するようになった。
訪ねてきたその男を隣人が笑顔で招き入れるのを何度か見た。
別に男友達がいたって不思議じゃないし、そもそも隣人はゲイじゃないんだし、気にすることじゃないのはわかっている。けれど無性にそのことが気になって苛ついた。これまでは俺が隣人の部屋に行くことはあっても誰か他の奴を招き入れたりはしていなかったのに。
別に俺とあいつは恋人同士じゃないんだから、嫉妬するなんておこがましいのはわかっている。
だけど見かける度に胸がチクチクと痛んだ。
その男を迎え入れる時にたまたま顔を合わせた隣人がこちらに向かって挨拶してきたけれど、適当な笑顔を見せて部屋に入ってしまった。
何してんだ。俺は。
そう思いながら部屋の壁にしだれかかる。
恋人にはなれない。そうわかっていても、一番仲の良い親友でいたい。そう思っている。
なのに今はその座すら危うくなっている。
それすらも傲慢なのだとわかりながら、嫉妬心が止められない。
いっそもうフェードアウトした方が楽だろうか。
これからあいつに彼女が出来て、彼女を優先するようになって、俺とも遊ばなくなって。隣からあいつがその彼女とセックスするような音でも漏れ聞こえてきたりして、その後結婚して子供が出来て。
そんなあいつの人生を隣で見ていくことに耐えられるだろうか。
でもそれはきっと訪れる未来で、当たり前で。
だったらいっそそうなる前に引っ越しでもしようか。
(ああ、また逃げるのかな。俺)
そんな風に考えていたら頬を涙が伝っていった。両手で顔を覆い床に崩れ落ちる。
だから恋なんてしないでいようと決めたのに。
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「どうして隣になんて越してきたんだ」
可愛いリンちゃんのまま、時間と共に忘れてしまった方が楽だったな。
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