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21:冬の装いは脱ぎにくい
しおりを挟む「凪咲さん……」
囁くような声色で名を呼ばれ、キスをしながら押し倒されてゆっくりとベッドに倒れ込む。
深いキス。唇を放せばどちらともなく微かに息を漏らし、もう一度キスをする。
武流の手が服の上からやんわりと胸に触れてくる。数度撫でるように触れて、時折手のひらで包むように揉み、するりと滑ると服の裾をめくってきた。
彼の手が肌を撫でて直接胸に触れる。くすぐるような欲を誘うような動きだ。ただ時折洋服を巻き込んだりぎこちなく動くのは、キスをしながら服の中に手を入れているため触りにくいのだろう。
キスを終え、武流の瞳がじっと見つめてくる。乞うような瞳。それでいて瞳の奥には見ているこちらまで燃やしてしまいそうな熱を宿している。
「俺も脱ぎますから、凪咲さんも」
「……はい」
彼の言葉に頷いて返し、もぞと上半身だけを起こした。
改めて服を脱ぐのはやはり恥ずかしくなる。だが恥ずかしがる凪咲を余所に武流はあっさりとシャツを脱ぎ、鍛えられた上半身を露わにさせた。
脱ぎ方も、露わになった体も、脱ぎ終えたシャツを放る仕草さえも、何もかもが男らしい。普段の穏和な武流とはまた違った『男』を強く感じさせるその姿に、凪咲の鼓動が速まる。
緊張して上手くボタンを外せない。それでもと上を脱ぎ、ブラジャーをはずし、次は……、となった瞬間にカァと顔が赤くなった。
下も脱いだ方がいいのだろうか。
だけどそうなると武流に全てをさらすことになる。
しかも今日は寒かったのでスカートの下に厚手のタイツを履いているのだ。スカートはともかく、タイツを脱ぐ様はいささかムードに欠けるのではなかろうか。
しまった、せめてタイツはやめておくべきだったか……。と、今朝方、寒い寒いと呟きながら当然のようにタイツを履いた自分を恨んでしまう。
「……凪咲さん、どうしました?」
「い、いえ、あの……。なんか、タイツを脱ぐ姿が格好悪い気がして」
「タイツ?」
「はい。今日は寒かったからもこもこしたタイツを履いていて……、それで……」
せめて黒ストッキングならば様になっただろう。網タイツだったなら逆に色気のある女だと思ってもらえたかもしれない。だというのに、よりにもよって裏起毛のもこもこタイツだ。
そう凪咲が顔を真っ赤にし、それだけでは足りないと顔を手で覆いながら話す。冷静になれば上半身裸でいったい何を恥じらっているのかと自分でも呆れてしまいそうなものだが、あいにくと今の凪咲の思考は緊張やら期待やら羞恥心でろくに働かないのだ。
そんな凪咲の訴えに武流は「タイツ」と呟くとしばし呆然とし……、
次いで口元を押さえると、「くっ……」と何かをこらえるような声を漏らし、あわてて顔を背けてしまった。
笑いが堪えきれなかったのだ。見れば肩が震えている。
そのわかりやすい反応に、元より湧き上がっていた凪咲の中で羞恥心が一気に嵩を増した。
「わ、笑わないでください!」
「いえ、だって、こんな状況でタイツって……。それも真剣な顔で話すから……」
「私、これでも真剣に考えたんですよ。もしモコモコのタイツを見て武流さんがシラケちゃったらどうしようって、ムードの無い女だって思われたらどうしようって……!」
「そんなこと思いませんよ」
まだ笑いが収まっていないのかゆるんだ表情で、それでも武流がこちらを向くと、そっと凪咲の腕に触れてきた。
キスをしてくるのは笑ってしまったお詫びだろうか。試しにと凪咲がわざとらしく怒るような表情を浮かべれば、もう一度キスをしてくれた。
「俺が脱がしても良いですか?」
「……笑わないなら」
「もう笑いません」
笑わない、と言いつつも武流の表情は緩んでいる。
それを指摘しようと凪咲は口を開いたが、出かけた言葉は「あっ」という小さな声に変わってしまった。
武流の手がすると足を撫で、ゆっくりとタイツを降ろしていく。
足先をするりと滑るように脱がされると少しだけひやりとした風が肌を掠めたが、まるで冷えた足を暖めるように足首にキスをされた。足首に、脹脛に、と彼の唇がまるで己で脱がしていったタイツの後を遡るように上がっていく。
自分の足に、武流がキスをしている。
その光景は蠱惑的でさらに凪咲を昂らせた。目の前の光景に思わずゴクリと生唾を飲んでしまう。
彼の唇が触れた場所が熱い。脹脛から膝へ、太腿へ、まるで一つ一つ火を灯すように唇が触れていく。
だがさすがにスカートをたくし上げて内股へと進まれた時には恥ずかしさが勝って「ま、待ってください!」と声をあげてしまった。
「さ、さすがにそれは……」
恥ずかしい、と弱々しい声で訴え、ずりと下がって武流から距離を取ろうとする。
だが武流はそんな凪咲の足を掴み、それどころかするりとあっという間にスカートを脱がしてしまった。不意を突かれ「きゃぁ!」とも「ひゃぁ!」とも聞こえる間の抜けた声をあげてしまう。
気付けばタイツもスカートも無く、ショーツ一枚の姿だ。今更ながらに恥ずかしくなってあわあわと身を縮めて隠そうとするも、相変わらず武流は足を掴んだままでそれを許してくれない。
「あ、あの……、流石に恥ずかしいんですが……」
「それなら電気を暗くしますね」
武流が一度体を放し、ヘッドボードに置いてある室内灯のリモコンを手にした。
ピッと軽い電子音が部屋に響き、天井から降り注いでいた光が和らぐ。
だが真暗にはしなかったようで薄暗いオレンジ色の明かりが室内を満たした。先程までの明るい部屋よりはマシとはいえ、それでもこれでは丸見えだ。むしろ薄暗くなって妙な雰囲気を感じてしまう。
だがそんな恥ずかしさを覚える凪咲とは逆に、武流は再び凪咲の足を掴むと顔を寄せてきた。内股にわざと音をたてるようにキスをしてくる。少しずつ降りていくように……。
「武流さん……」
「今まで俺もガッツいていたし、リビングという事もあってどうしても焦っていました」
突然今までのことを振り返られ、凪咲は頭上に疑問符を浮かべながらも「確かにそうですね」と返した。
事実、今まで二度ほど密事に及んでいたが、どちらも互いに求め合うあまり時間を掛けなかった。いつ乃蒼が起きてきてしまうかという焦りがあったのも事実だ。
といっても前戯も碌にせず挿入したというわけではない。負担にならないように武流は凪咲の体を慣らし、そしてちゃんと確認してくれた。おかげで互いに急いてはいたが痛みはなかった。
だが武流はそれがどうにも気掛かりだったらしい。
「だから、今まで時間を掛けられなかった分、今夜は俺にさせてください」
何を、とは言わずに武流が強請ってくる。
その言葉に凪咲が拒否できるわけがない。カァと顔が熱くなるのを感じながら、それでも頷いて返した。
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