【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第一章 異世界転移と悲惨な結末

17.教会の思惑

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 17.教会の思惑

 今回、俺たちが演じた”聖女の引退劇”のあらすじとは。

 ”緑版スマホで妖魔の出現場所を調べ、視察と称して向かう。
 妖魔が出現したら、緑版スマホのライトや剣の攻撃などで
 一連の動作にを付け、
 フィオナが聖なる力を行使する姿を誇示する。

 そしてあたかも”妖魔を滅する代わりに、
 聖なる力が失われてしまった”かのように演じる”

 これでフィオナは聖女を、正々堂々と引退できるはずだったのに。

 ディランはニコニコしながら、フィオナの手を取る。
「……正直、嬉しいよ。聖女の任務は危険なものもあるから。
 それに大切な君を、常に僕の側に置いておける」

 フィオナが困惑しながら手を引くが、離してもらえない。
「いえ、私が聖女ではない以上、結婚の話もなくなります

「えええ! そんなっ! 悲劇ではありませんか!」
 それを聞いてショックを受けたのは助けられた人々だった。

 しかし、我らがフィオナはいきなり笑顔で言い切った。
「えっ? 別に悲劇ではありませんよ?
 ただの王命ですから。ね? ディラン様」

 彼女の空気を読まないマイペースさは、
 時々ものすごい破壊力を持っている。

 さすがに凍り付くディラン。
 それでも必死に笑顔を作って言う。
「そ、そんなことはない。僕たちは毎日……」

 フィオナもものすごい笑顔で首を横に振った。
「毎日食べ歩きましたねー、私たち。
 まあ、大丈夫です、教会はすぐに次の方を決めますよ」

 その言葉に、ディランの顔がこわばった。
「……君は、その言葉の意味を分かっているのか?」
 深刻なその表情に、俺は不安になった。
 何か、もっと深い理由があるのか?

 ディランは俺の視線に気が付いて言う。
「場所を変えよう」

 俺たちは手を振る人々に別れを告げ、
 ディランの用意した馬車へと乗り込んだ。

 ************

「なぜ護衛も一緒に乗る!」
 自分の横に座るジェラルドを見て、不機嫌そうにディランが言う。
「俺の護衛だからだよ」
 その向いあわせに、エリザベート、俺、フィオナが座っている。

「せめてフィオナがこちら側に来てくれ」
「席順でごねるな、子どもかよ。
 ……話を進めるぞ。聖女とは教会の生贄か?」

 ディランは苦笑いしつつ答える。
「ずいぶんとダイレクトな物言いですね」

 フィオナを無理やり聖女に仕立てたのは
 てっきり報奨金と活動費目当てだと思ったが。
 それ以上の目的があったんだな。

 俺の横でエリザベートが、緑板スマホを扇で隠しつつ”検索”を始める。
 今までフィオナが聖女になった経緯など
 調べたことなかったからな。

「まさかあんな小芝居をして、聖女の力を失わせるとはね」
 ディランは鼻で笑いながら言う。

 あれが芝居だと見抜いているということは。
 コイツは最初から知っていたのだ、
 フィオナが聖女の力など持っていないことを。

「問題ないだろ? 教会が必要なのは聖なる力ではなく、
 ”聖女”という存在なんだから」
 俺がふざけた調子で言うと、ディランは軽蔑した目で睨んでくる。

「そこまで判っていて……
 次に聖女になる者が哀れだと思わないのか!」
「フィオナを見殺しにするお前の方が卑劣だろう」

 俺が言い返すと、ディランは強い調子で反論する。
「違う! 僕なら助けることができる!
 奴らの思い通りにはさせない!」

 検索で何かを見つけたらしいエリザベートがつぶやく。
「そう思っているのはご自分だけですわ。
 ……グエル大司教は、あなたの味方じゃなくてよ」
 その言葉に、俺たち全員が驚いた顔になる。

 俺とジェラルド、フィオナは”……誰それ?”という顔だが
 ディランは知っている人物の名前で、
 それが裏切者らしいと知った時の顔だ。

「嘘だ! いや、なぜそのことを……」
 エリザベートは彼を見据えて言う。
「嘘だと思ったら、シュバイツ公爵家あなたの家の権限で、
 請求書や指示書を閲覧してごらんなさい?
 全ての書類の名義がフィオナの名で書き換えてあるわ」

「何だと!? 話が違うじゃないかっ!」
 ディランは馬車で立ち上がり、よろめいて座りなおす。

 フィオナは顔面蒼白になっている。
 心当たりがあるのだろう。
「あの散財を全部、私のせいってことにするのね!」

「まさに生贄ですね」
 ジェラルドの言葉に、ディランは頭を抱えてうつむく。

「それなのに、貴方はどうやって彼女を助けるつもりだったの?
 グエル大司教は結婚に反対してるじゃない」
 エリザベートが彼に尋ねる。

 検索すれば事実を教えてくれる緑板スマホのおかげなのだが
 ディランは飛び上がるほど驚いた後、苦笑いする。
「本当に詳しいな。さすがはローマンエヤール公爵家。
 ”第二の王族”と呼ばれるだけはある」

 ほとんどのことをがバレてると考えた彼は語り出した。
「問題はほとんどが金で解決できることだ。
 不正はシュバイツ公爵家僕の家が補填すれば良い」

 つまり教会の悪事がバレないよう、
 金と人材でフォローして、
 ”生贄”の必要性をなくすということか。

 フィオナが感嘆の声をもらす。
「どうして、そこまでしてくださるのです?」

 ディランはゆっくりを顔を上げ、フィオナを見て笑った。
「最初は、僕の外見や地位に引かれてきた害虫だと思った。
 たいした力もないくせに、
 聖女のふりをして近づく欲の強い人間だって」

 ディランは超絶美形の公爵子息だ。
 こびを売られるのもウンザリだったろう。

 エリザベートと一緒だ。
 美貌、家柄、才能。惚れてもらう要素がありすぎる者は
 本当に想われることが逆に難しいのかもしれない。

「でも君は違った。聖女だってことを必死に否定し
 特別扱いや贅沢を拒否していた。
 今まですり寄って来た女とは全然違ったんだ」

 俺の記憶の中の、オリジナル・フィオナは確かにそうだった。
 むしろ毎日、特別扱いされることに怯えていたのだ。

 ディランはフィオナに向きなおし、手を取って言う。
「君はただ謙虚で温厚なだけじゃない。
 ここまで僕に関心なく、フラットに接する人は初めてだ!」

 自分にまったく興味ない女。
 その存在に感激したってことか。

 フィアナはため息をつき、優しい声で告げた。
「ディラン様。珍しいものに心惹かれるのは誰しも一緒です。
 貴重に思え、欲しくなるのも。
 でもね、人はいつか、自分の”定番”オーソドックスに帰っていくのです」

 ……醤油のことだな。醤油と、味噌。
 俺とエリザベート、ジェラルドは目を合わせる。

「新鮮さとか、斬新さとか、最初は感動するんです。
 そしてそのうち、飽きてしまうのです。
 でも自分にとってオーソドックスなものは永遠なのです」

 ……西洋料理のことだな。ファルシとかコンフィとかブレゼとか。
 白米に味噌汁が一番と、昨夜も嘆いていたから。

 フィオナはディランの手を強く握り返して言う。
「ここ数日の食べ歩き、とっても美味しかったし楽しかったです
 でもこれは定番にはなり得ません。
 ……でも私を理不尽な運命から、
 少しでも助けようとしてくれたことは感謝します。
 ありがとうございます」

 ディランは黙り込んだ。
 自分のフィオナに対する執着が、
 真の愛情なのか、ただの目新しいものへの興味なのか
 判断しかねているのだろう。

 やがで苦し気に、恥ずかしそうにつぶやいた。
「……今の僕には、断言することはできない。
 すまない、フィオナ。
 でも側にいて欲しかったのも、助けるつもりだったのも本当だ」

 俺は初めて、こいつに好感を持った。
 意外と真面目で、正直なやつじゃないか。

 そして視線を俺に向けて言う。
「あなたの敵は、思っている以上に強大だ」
「うすうす気づいてたよ。今回ので確信したけどな」

 馬車がちょうど、俺の宮殿の前に着いた。

 俺たちが降り、彼は馬車の窓から言う。
「最後の贈り物として、教会の偽装書類は処理しておくよ。
 どうせあいつら、新しい聖女の名に書き換えるのだろうけど」
「その前に、俺たちがなんとかするさ」

 俺の返事に、ディランは少し驚き、安心したようにうなずく。
 たぶんこいつは、だいぶこじらせてはいたが、
 そんなに腐った奴ではないのかもしれない。

 ディランは最後にフィオナに笑いかける。
「フィオナ。君のスタンダードになりたかったよ」

 そう言って彼は去っていった。

 ************

 部屋に戻った俺たちはすぐ、”結末”を確認した。
 それを見たフィオナが悲鳴をあげる。

 ”聖女は力を失い、その地位を追われたことを恨み
 新しい聖女の殺害を試みて捕まる。
 そして公開処刑で生きたまま魔獣に食われる”

「どうして?! ひどい結末のままだわ」
 怒った表情でエリザベートが言う。
「そんなバカな……」
 ジェラルドは困惑し、震えるフィオナを支えている。

「……やっぱりな」

 三人が俺を見た。
 俺は彼らに向かって緑板スマホを向ける。

「おかしいと思ったんだ。
 何をやっても変わらないだろ?」
 三人は神妙な顔でうなずく。

 あれから状況は変わったし、これからも変えるつもりだ。
 その実行力は充分にあるだろう。

 しかし、それでも。
 俺たちが悲惨な末路を迎えることに変わりは無い。

「そもそも最初から気付くべきだったんだよ。
 クズ王子と言われた俺はともかく、
 誠実なジェラルド、温厚なフィオナ、
 責任感の強いエリザベートが、
 世の中を揺るがすような犯罪をおかすわけないって」

 不安な表情の彼らに、俺は苦笑いで続ける。
「そりゃそうだ。何をしようと関係ねえ。
 俺たちが”生贄”になることは、すでに決定しているんだよ」

 フィオナはもちろん教会の。
 ジェラルドはおそらく聖騎士団の。
 俺は王家の、だが、エリザベートは何だ?

 俺たちから視線をそらし、エリザベートは静かに言う。
「……公爵家は強くわ」

 先ほどディランが言っていたではないか。
 ローマンエヤール公爵は”第二の王族”と呼ばれている、と。

 そんな存在、放っておくわけないだろう。
 国民ではなく、この国の王族俺のクソ家族が。
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