【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第一章 異世界転移と悲惨な結末

18.勝ち気な従妹

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 18.勝ち気な従妹

「……やっと終わったわ」
 机の上には、闇の魔力が込められた魔石が積まれている。
 今週納品する分をやっと作り上げたのだ。

 毎週毎週、この数を納めなくてはならない。
 かなりの労力と時間を要する、キツイ仕事だった。

 でも我が公爵家はこれを大量に納品することで、
 王族に対し従順の意を示してきた。

「”第二の王族”なんて呼ばれてる公爵家だ。
 国王や王妃は常に牽制したいだろうな」
 レオナルドが言う通りだ。

 だから我が一族は過剰なまでに、
 王家に対し服従を表明している。
 誰よりも率先して動き、王族の敵を滅していく。

 ふぅ、と息を付き魔石の山を見つめて思う。
「それにしても100個はキツイわね。
 ……ジョアンナは余裕なのかしら?」

 従妹いとこにあたるペラドナ侯爵家のジョアンナも
 私と同じくらいの魔力がある、と表明しており
 もう半分の100個を負担している。

 私は淡いオレンジの髪、薄いグリーンの瞳をした従妹を思い出す。
 ジョアンナは私と違い、いつも可愛らしく甘え上手だ。
 常に男性に囲まれ、楽しそうにしている。

 しかし見た目の可憐さとは裏腹に、上昇志向が強い娘だ。
 本当は王族と婚姻を結びたかったようだが
 王太子は伯爵家の娘を妻に迎え、
 第二王子は大国の貴族の娘と婚約した。

 そして残ったレオナルドに対しては……。
 私は、エリザベートオリジナルの持つ、
 あの日の記憶を思い出す。

 ************

「エリザベート様、本当にお可哀そうだわぁ。
 私には絶対ぜえったい務まりませんもの。
 だって……ウフフ、あの噂の第三王子でしょ?」

 オレンジ色の髪を揺らし、ジョアンナが笑う。
 その目は私に対するあざけりが込められていた。

「母親は下級貴族の出で、もう亡くなっているんでしたっけ?
 王族なのにたいした魔力も持たず、
 帝王学すら受けていらっしゃらないのよね?
 将来、この国の要職に付くとは思えませんわね、フフフ」

 何が面白いのか、ジョアンナは楽しそうに
 私の婚約者レオナルドをディスっていた。

 でもエリザベートの心中は意外にも穏やかだ。
 いつものようにほうが困るから。

 国王より褒美として贈られた別荘地。
 隣国の王より魔獣討伐のお礼に贈られた宝石。
 その他なんでも、エリザベートが手にする全てのものを
 ジョアンナは欲しがったのだ。

 両親や侍従に甘え、イジケて拗ねたり。
 最後には泣き叫んでヒステリーを起こすのが定番だった。

 そうなると、両親であるペラドナ侯爵夫妻が
 エリザベートのところに来て懇願するのだ。
「ジョアンナが可哀そうで見ていられないのよ」
「親戚間でトラブルになる前に、譲ってあげてくれないか」

 この二人はローマンエヤール公爵夫妻が、
 不在の時を必ず狙ってくるのだから
 エリザベート自身が対応することになる。
 最後は面倒くさくなり、譲ることが多かった

 でも今回は、ジョアンナは欲しがったりしなかった。

 その代わり”出来損ない王子”と噂される男と
 婚約したエリザベートを、嘲笑と歓喜の目で見つめている。

 しかしその時、彼女の側にいた見知らぬ子息がぼやいた。
「本当に……なんというか、もったいない。
 この国一番の美貌と魔力を持つあなたが……」

 それを聞いて、ジョアンナは急に鬼の形相になり
 彼をキッと睨んだ。その子息は大慌てで言う。
「あ、君も同じくらいの魔力があるんだよね?
 いやあ、すごいなあ、君たち一族は」

 彼はフォローしたつもりだろうが、
 ジョアンナは仏頂面のままだ。
 勝気な彼女は、実力だけでなく美貌も
 エリザベートより自分が上だと言いたいのだろう。

 ジョアンナからは、そこまで魔力を感じないのだが、
 それをうまく隠せるというのも才能なのだろうか。

「この後任務が控えておりますので、先に失礼しますわ」
 面倒な従妹からさっさと離れるため
 エリザベートはその場を後にした。

 ************

 通常、レオナルドはパーティなど出席しない。
 しかし今日のパーティは、王太子の婚約披露だ。
 欠席は反逆とみなされる恐れすらあるだろう。

 レオナルドに会うのは久しぶりだった。
 幼い頃はしょっちゅう会ったが、
 彼が寄宿学校に入学してからは数えるほどだ。

 しかも悪いウワサや批判の声ばかりが耳に届いてくる。
 あの優しくほがらかな彼に、何があったのだろう。
 エリザベートは密かに心を痛めていたのだ。

 姿が見えない……もしかして、来ないつもり?
 会場でそんなことを考えていたら。

「あらあ? もしかして、お一人で参加されるおつもり?
 ウソでしょお、そんな恥ずかしいことありますぅ?」
 ジョアンナが、さっきの子息を引き連れて絡んでくる。

「……どうぞ、おかまいなく」
 私がそういっても、彼女は離れていかなかった。
「だってえ、エリザベート様がお可哀そうでぇ、ウフフ」
 エリザベートはため息をつく。

 その姿を恥じていると勘違いしたジョアンナは、
 周囲の貴族に聞こえるようにまくし立てる。

「これだけ着飾っても独りぼっちなんて
 私だったら惨めで耐えられませんわあ」

 相手にするのもバカバカしい。
 さっさと王太子たちに挨拶をして帰ろう、そう思った時。

 会場にさざ波のようにざわめきが広がる。
 皆がテラスに面した掃き出し窓を見ていた。
 大きく開かれたそこから入って来たのは。

 艶のある黄金の髪、深いブルーの瞳。
 中肉中背だが、それなりに鍛えているようで華奢ではない。
 陽光にきらめく端正な顔は
 この世の者とは思えぬほど美しかった。

 仕立ての良いロイヤルブルーの服には金の刺繍が施され、
 とても上品で威厳があり、彼に似合っていた。

 しかしそれを着崩し、ネクタイを軽く緩め、
 襟を乱雑に開いているところも
 だらしないと言うよりも色気があった。

 彼は感情のない顔で前に進むと、会場を見渡す。
 視線があった女性が顔を赤らめる。

 私の横でジョアンナも彼を見つめていた。
 夢見るような顔でうっとりとつぶやく。
「なんて素敵な方……天使が舞い降りたみたいだわ。
 どこのご子息かしら?」

 しかし彼が一直線にこちらに向かっているのに気づき
 ジョアンナは小さく悲鳴をあげ、
 自分の連れの子息の腕を振り払って叫んだ。

「貴方、もう帰って良いわ!
 今日のパートナーは解消よ!」
「ジョ、ジョアンナ?! どうしたの?」

 彼女は昔からそうだ。
 欲しいものがあると抑えが効かない。
 そして手に入ると信じて疑わないのだ。

 レオナルドは無表情のまま近づいてくる。
 そして数メートル前まで来た時、
 ジョアンナが前へとしゃしゃり出て言った。

「あの、私、良かったらご案内させて……」
「結構だ」
 目もあわせずに短く答えるレオナルド。

 それでもジョアンナは諦めない。
「私、ペラドナ侯爵家のジョアンナと……」
「聞いてない。そもそも話しかける許可を出していない」

 その言葉にジョアンナは鼻白んだあと、
 すぐに気が付いて顔全体を青くする。

 話しかける許可が必要ということは、王族だと。

「遅くなったな、エリザベート。
 さっさと行こうぜ」
 すっと腕を出すレオナルド。
 私はうなずき、その腕を取った。

 青かった顔を今度は真っ赤にしてジョアンナがつぶやく。
「うっ嘘でしょ? この人……この方があの」
「そうよ。私の婚約者、レオナルド王子よ」

 レオナルドは、黙っていれば最高の王子様なの。

 唇を震わせて私たちを見ていたジョアンナは叫んだ。
「ちょ、ちょっと待って! エリザベート様。
 任務でお急ぎでしたわよね? 私が代わってあげるわ!」

 私は眉をひそめて答える。
「さすがにこれは代わることができないわ。
 ご挨拶をすませたら直行するのでご心配なく」

 ジョアンナは絶対に諦めない。
「いいから私に譲りなさいよ!
 ね、王子様もそのほうが良いでしょ?
 彼女、なんて呼ばれてるかご存じ? 暗黒の」

「黙れよブス」
 レオナルドが振り向いてつぶやく。
 貴族にあるまじき暴言に、周囲の人々が息をのんだ。

「俺は人のものを欲しがる奴が、死ぬほど嫌いなんだよ。
 自分の力で得たものでもないのに、横取りして嬉しいか?
 乞食以下だろ、そんなの。みっともない」

 チヤホヤされるばかりで、いまだかつて、
 このような扱いを受けたことがなかったジョアンナは
 彼の言葉に、口を縦に長く開いたまま硬直していた。

 レオナルドは無表情のまま、言い放つ。
「俺の婚約者はエリザベートと決まっている。
 いいか? お前じゃない。
 言葉がわかるなら黙ってろサル」

 ふう、と息をついて、彼は歩き出す。

 そして私たちは王太子たちに挨拶を済ませ、
 レオナルドは学校、私は任務を理由に退席したのだ。

 帰り際、ジョアンナが立ち尽くしているのが見えた。
 オロオロしながら必死で誰かいないか探している。
 連れの子息は怒って帰ってしまったのだろう。

 結局、”着飾ったのに独りでパーティーに参加する”
 ことになったのは、ジョアンナのほうだった。

 外に出ると、レオナルドは横を向いたまま、私に言った。
「この間、学校を抜け出てルブレまで行ってきた」
「あんな離れた港町に?! またそんな、規律違反して」
 呆れて笑う私に、彼も少しだけ笑ってくれた。

 そして別れ際、彼は私に小さな袋をくれた。
「……やるよ」
 そう言って後ろ手で手を振り、去っていったのだ。

 袋の中身は、この国ではめずらしい薄荷ハッカのキャンディ。
 それも、たった一つだけ。

「あの時はちょっと胸がスカッとしたわね」
 彼は私が、”暗黒の魔女”と呼ばれることを嫌うのを知っている。
 だからそれを言いかけたジョアンナを抑えてくれたのだろう。

 母親譲りの国一番の美形で、
 見た目は”ザ・王子”なのに
 出てくる言葉はいつも、率直で粗雑だった。

「俺は、フェラーリに乗ったからといって
 自分も高級になったと勘違いする男じゃねえ」
 レオナルドに転移した彼はそう言っていたけど、
 オリジナルも外見をひけらかすようなことはしなかったのだ。

「なんとなく、似てるところあると思わない?」
 私はオリジナルのエリザベートに語り掛け、一人で笑った。
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