【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

enth

文字の大きさ
39 / 126
第二章 新たなる力と仲間

39.聖女と神官の復活

しおりを挟む
 39.聖女と神官の復活

 俺はアリーを説得、いや勧誘する。
 魔人なんかやめて、旨いもの食おうぜ。

「王子がどっかのグルメ漫画みたいなこと言い出した!」
 ”魔人辞めたら、人間より旨いものを食わしてやる!”
 という言葉に反応したのか、フィオナが嘆いている。

 エリザベートも呆れたように笑う。
「この異世界で、退職代行業でも始めたの?」
 確かに俺は以前、フィオナも聖女を引退させたっけ。

 ジェラルドも首をひねる。
「魔人に知性や理性があったとして、
 ”旨いもの”に惹かれるかどうか……」

 俺はそんな三人に言い放つ。
「いいんだよ、別に。
 メアリーの答えがYESでもNOでも、結果は一緒だ」
 俺は補助魔法で、仲間たちの攻撃力や防御力を上げていく。
 三人はハッ! と気付いた。そして全員が構える。

 ついでに俺は、魔人がマーサをさらった時のことを思い出し、
 ”幻覚”などのステータス異常を防止することにした。

「あれ? ってどんな効果なんです?」
 フィオナが不思議そうに自分の体を見渡す。
「”反転”のアビリティも付加しておいたよ。
 ただ耐性つけるだけじゃつまらないからな」
 万が一、メアリーが何か仕掛けてきたら、
 彼女は自分の幻覚に踊らされることになる。

 そして俺はに向かって叫んだ。
「準備は良いか? いくぞ!」

 あの腹部にいた神官が、体内を這うように移動し
 頭部近くまで来ていた。

 俺の長く、意味不明な”説得”は、
 彼が内部からメアリーに近づくための時間稼ぎだったのだ。

 メアリーが焦った顔になり、後ろを見ようと頭部が横向きになる。
 その瞬間、メアリーの周りがドロドロと溶け始めた。

「ギャーーーッ!」
 メアリーは悲鳴をあげながら、蒸気に包まれ白く発光している。

 あの神官が中からメアリーを清めているのだ。
 そしてメアリーと妖魔は、少しずつ分離していく。

 ジェラルドとエリザベートは横に回り、
 地中からはみ出た魔人の体を攻撃する。

 ぶよぶよとしたその体と頭部をジェラルドが切断し
 それらが接合する前に、エリザベートが切り口を
 火炎魔法”フレイムウェイヴ”で焼き切ろうとした。

 しかしエリザベートが連続で燃やし続けても
 その切り口から勢い良く噴出する”聖なる力”に押され、
 あっという間に切断部分はくっついてしまう。

 メアリーの顔周辺が溶けだし、隙間が出来たのを見て
 フィオナがそこに右手を突っ込んで叫んだ。
「引っ張り出します!」

 マジかよ、と思いつつ、
 俺も一緒に反対側の隙間に片手を突っ込んだ。
 ものすごい腐臭が鼻をつき
 手に纏わり付くグニャグニャした感触が気持ち悪い。

 しかし顔の奥には当然のように、メアリーの肩があった。
 妖魔に丸飲みされた後、顔だけ表面に出していた、ということか。

 俺はメアリーの脇に手を入れ、フィオナと目を合わせ、
 せーの! で思い切り引っ張った。
 メアリーの体がズルリ、と前に出てくる。
 胸のあたりまで飛び出て、骨と皮ばかりの腕も出てきた。

「……アアア!」
 痛みがあるのか、メアリーがうめいた。
 フィオナが慌てて、治癒を施した。
「癒しながら引っ張らないとダメかもしれませ……」

 その時、魔人の頭部横についた巨大な目玉がグルン、と動いた。
 そうだ、こいつはもともと、
 ”禁忌の印をつけられた妖魔”だった!

 その飽くなき欲求はただ一つ、聖なる力の吸収のみ!

「きゃあああああああ!」
 フィオナの右腕が、ずぶりと魔人の額にのめり込む。
 古代の文様で描かれた”禁忌の印”の中央に。

 そしてそのままグイグイ引き込まれていく。
 俺はとっさに彼女の体を支えた。

 ”禁忌の印”から真っ赤な光が放たれる。
「ヤバイ! 力を吸われるぞっ!」
 俺が叫ぶと、フィオナが泣きそうな声で言う。
「なけなしの力なのにー!」
 ……まあ、そうだけど。
 だからといって、”まあ取られても良いか”とはならんよな。

 フィオナの体全体を赤い光が包み込み、
 魔人の体内へと流れが生じ……
「!?」

 ゴオオオオオオオ!
「うわあ!」
 俺はフィオナから弾き飛ばされた。

 フィオナは魔人の頭部に肩までのめり込ませたまま
 体は白く発光していて、まぶしくて見えない。
 しかも大地震が起きたかのように、地面が激しく揺れている。

 ものすごい勢いで、魔人からフィオナに向かって
 何かが流れ込んでいた。
 濁流のようなは、フィオナを包んで渦を巻いている。

 俺たちはゆっくりと視界が下がるのを感じていた。
 地面が、ゆるやかに陥没していく……

 そして光の渦はフィオナへと収束し、消えていった。

「フィオナ!」
 俺は彼女に駆け寄る。
 腕がズルっと抜け、気を失った彼女は倒れ込む。
 彼女に息があり、毒性などの異常がないことを急いで確かめる。

 良かった、無事だ。

 ……それにしてもなんだ? 今のは。
 なけなしの”聖なる力”を取られたにしては
 ずいぶんと派手な演出だったが。

 はっ! と気付いたエリザベートが叫ぶ。
「見て! 魔人の体!」
 巨大な頭部を残し、
 ブヨブヨの部分は空気が抜けたように潰れている。
 今ので中身が無くなった、ということか?

 ジェラルドがその抜け殻を切ると、
 今度はまったく蘇生しなかった。
 もはや、治癒の力を持たないのだ。

 その時、温かくも力強い声が聞こえた。
「さあ、娘をここから救い出すのだ。
 ダンとブリュンヒルデの息子よ」

 あの神官の声だ。
 俺はフィオナを地面に置いて、メアリーの前に向かった。
 そして両手を伸ばして言う。

「君の多大な貢献に我々は深く感謝し、心から詫びよう。
 ありがとう、そしてすまなかった、メアリー」

 青白い顔に黒い髪を張りつかせ、
 メアリーは俺をにらんでいる。
 しかし、俺の手を取ってつぶやく。
「……許さないから」
「ああ、それで良い」

 そう答える俺に引っ張り出されながら、
 メアリーは仏頂面で首を横に振る。
 違う、そうじゃない、と。

 そして完全に妖魔の体から抜け出したメアリーは
 抱き上げる俺を見て言ったのだ。

「”人間”よりも美味しいもの、
 山ほど食べさせてくれないと、許さないから」
 そう言って、口元を少しほころばせた。

 ************

「やっぱさ、液体窒素は気化する際に
 体積が何百倍にもなるからな。
 聖なる力もそうなんじゃないの?」
 俺の言葉に、エリザベートが笑う。
「だから、スピリチュアルな力とそれを一緒にしないの!」

 メアリーと分離した後の妖魔は容易く倒せた。

 まずは頭部と体を切断し、
 力を使い果たし倒れた神官を救出した。
 そして頭部をエリザベートが火炎魔法”地獄の業火インフェルノ”で焼き切る。

 後は残された体のたるみきった皮を切断し、
 そこから体内に残されていた人々を救出。

 横たわる彼らの前にフィオナが立ち、片手をかざした。
 中位の回復魔法である”癒しの風ヒールウィンド”だ。

 淡く美しい輝きがその手から広がっていく。
 そして一気に、半死の彼らを蘇生する。
 真っ白な顔に血の気が戻り、
 意識を回復させ、身を起こしてキョロキョロし始めた。

「……すごいな、この人数をいきなりかよ」
 俺は思わず感嘆の声をもらす。

 真の聖女として、フィオナが”覚醒”したのだ。

 妖魔が封じていた膨大な量の聖なる力は
 ものすごい勢いで、一気にフィオナに流れ込んだ。

 俺が直前につけていた”反転”の効果のせいだ。

「今までの、何百倍、何千倍の力ですね!」
「技の種類も段違いに増えているわ」
 フィオナがいろいろ試す姿を見て、
 ジェラルドとエリザベートが興奮している。

 当の本人は複雑そうだ。
 浮かない顔のフィオナに俺は尋ねる。
「どうした? なんか調子悪いのか?」

「いえ、絶好調です。
 でもなんか、思い出しちゃって。
 ”不良にカツアゲされたサラリーマンが
 給料日前で数十円しか持ってないことを知られたら
 哀れんだ不良が逆に千円くれた”、って話」

 ……なんだその、切なくも情けない話は。
 まあ、”なけなしの力”だったのが、これだもんなあ。

 俺は苦笑いでフィオナの肩を叩き、
 もう一人の回復を彼女に頼んだ。

 そこには木にもたれかかるように、
 あの神官が座っている。

 俺は名前を呼ぼうと思ったが、逡巡してしまう。
 その様子を見て、エリザベートがクスッと笑い。
 俺に教えてくれたのだ。

「ダルカン大将軍様に聞いたでしょ?
 ……僧侶ユリウス様、よ」
 そうだ。かつて勇者のパーティーの一員だった者。
 勇者俺の父戦士ダルカン魔法使いエリザベートの叔父弓手俺の母、そして僧侶のユリウス、だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...