【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第三章 武器は"情報"と"連携"

60.聖騎士団への勧誘

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 60.聖騎士団への勧誘


「失礼します」
 そう言ってジェラルドが部屋に入っていく。
 彼は今日、聖騎士団の本部に呼ばれたのだ。

 ジェラルドはかつて、この団に入るために
 死ぬ気で努力し、実績を積んていた。

 しかしその成果は全て貴族の子弟に奪われ、
 彼は入団することが出来なかったのだ。

 だが、ふたを開けてみれば、
 ”最強”と銘打たれた聖騎士団は名ばかりで
 お金やコネで入団した軟弱な貴族の子弟の集まりだったのだ。

 すでに国内だけでなく、世界中にその実情がバレつつあり、
 メッキがはがれ切るのも時間の問題だろう。


 そうそうたる面々が並ぶ中、
 聖騎士団のキャバン団長が、
 ジェラルドに続いて部屋に入った俺を見て、
 あからさまに不快そうな顔をして言う。
「……なぜ殿下がこちらに?」

 俺は気にせず、にこやかに答えた。
「彼は俺の警護なんだぜ?
 彼がここに来るなら、俺も来ないわけにはいかないだろ。
 離れていては守ってもらえないからな」

 我ながらしょうもない言い訳だが、
 仮にも王族である俺に”出て行け”とは言えない彼は
 フン、と鼻で笑った後、俺に吐き捨てるように言う。

「殿下には関わりのないことですので、
 くれぐれも口出しは無用でございます」
 俺はうんうん、とうなずいておく。

 その余裕が気に障ったのか、
 キャバン団長はジェラルドに向きなおり
「君のような素晴らしい人材を、
 護衛のようなを任せるには忍びない、と
 我々が満場一致で、新たな役割を用意したのだ。
 感謝するがいい!」

 こんなのほっといて良いのに、
 真面目なジェラルドはムッとして答える。
「現在の仕事は大変やりがいもあり、
 また重要な任務だと心得ております。
 他の仕事など全く望んでおりません」

 抗議であり拒否なのだが、
 聖騎士団長をはじめ、軍のお偉方はこの答えを
 ”主に忠実であり、極めて謙虚である”と思ったらしい。
 全員が意味もなくうなずきながら笑顔を浮かべている。

 キャバン騎士団長は片眉をあげ、ジェラルドに言う。
「そうか? もっと良い役割を用意したんだが?」

 そう言って、控えていた部下に合図を送った。
 彼らはすぐに運んできたのは……
 立派な聖騎士団の制服とマントだったのだ。

 どうだ? 嬉しいだろう? と言った面持ちで、
 軍の上層部はジェラルドに言う。

「君を聖騎士団の副団長に命じようと思ったのだが……」
 それを受け、別のお偉いさんが続ける。
「残念だなあ? 他の仕事は望んでない、とは」
「いやー、君には不要だったか?」
 そう言って、聖騎士団長を含む全員が大声で笑った。

 俺は目の前のおっさんの群れに対し、ため息が出てしまう。
 普通に命じて普通に良いだけなのに、
 いちいちやり取りが嫌味ったらしく、
 なによりウザったいではないか。

 聖騎士団の制服とマントを、ジェラルドは目を細めて見ている。
 口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
 俺には彼の気持ちが、痛いほどわかった。

 あの目は、子どもの頃に欲しかったオモチャを見る目だ。
 戦隊モノや人気アニメの、どこかチープな作りをした
 箱に”対象年齢5歳”、とか書かれているやつ。

 軍の幹部おっさん達が一通り笑った後、ジェラルドは無言で頭を下げた。
 それを感激して声が出ないと思ったのだろう。
 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて、
 キャバン聖騎士団長は何か言おうとしたが。

「大変名誉なことではございますが、
 今の自分には不要なものでございます。
 つつしんでご辞退させていただきます」

 頭を下げたまま、流れるようにジェラルドが言い切った。
 静まり返る軍の幹部たち。

 そのうちの一人が、”あ!”、と何か気付いたように、
 笑顔を戻してジェラルドに言った。
「いったんは辞退すべき……そう思ったのか?
 そのような礼儀的な謙遜は不要だ。
 素直に応じ、喜んで良いのだぞ?」

 ジェラルドは顔をあげ、まっすぐに相手を見て言う。
「いえ、光栄ではございますが
 辞退する気持ちは謙遜ではございません。
 今の任務を超えるものではありませんので」

 ぼうぜんとしていた彼らの顔が、
 次第に真っ赤に変わっていく。

 まずはキャバン聖騎士団長がキレた。
「何故だ! お前は元々、聖騎士団への入団を希望していただろう!」
「はい。しかしとして落とされました」

 ジェラルドの答えに一瞬、
 ぐっと詰まったが、彼はすぐに言い返す。
「その後、修練し力をつけたのだろう?
 多くの業績を残したのだ。
 だから入団を認めると言っている!」

 ジェラルドはいつものように爽やかに、物腰柔らかに答えた。
「誠に残念ながら、すでに入団を希望しておりませんので。
 現在すでに自分にとって最も大切な任務を抱えており、
 それを最優先したいと思っております」

 全員が俺に視線を移し、睨みつけてくる。
 こんなクズを守るのが、そんなに大事なわけないだろう。
 全員の目が、そう語っている。

 軍の幹部がジェラルドに、厳しい口調で命じた。
「国に対して無責任だと思わんのか?
 この聖騎士団の結成理由を知っているだろう?」
 俺とジェラルドは眉をひそめる。

 聖騎士団はそもそも、軍の常備軍ではない。
 国と教会の敵を倒しに遠征するための軍隊だ。

 ただ、”敵”の定義があやふやであるため、
 多くの国民や貴族の子弟たちは、
 この団への入団を”己の強さの証明”だと思っていたのだが。

 ジェラルドは静かに答える。
「もちろん存じております。
 国やが危機に面した時には、
 どのような職務についていようと、
 はせ参じる所存でございます」

 なおも説得しようとする聖騎士団長にジェラルドは言った。
「私は”騎士の称号”を持つ者として、
 からすでに、数件の任務を命じられているのです。
 それをまずは果たさねばなりません」

 ぐうの音も出ず、固まるオッサンたち。
 国 より 世界ですから。
 ”騎士の称号”を与えた国の依頼を優先するのは当然なのだ。

 俺たちはこの展開を緑板スマホで知っていた。
 ”なぜ呼ばれたのか”と検索し、
 ”聖騎士団の副団長に命じるため”という回答を見た時は
 二人で脱力したが、すぐにエリザベートやその母君と相談し
 対策を立てておいたのだ。

 軍の面々は顔を見合わせて困惑していた。
 断られるなど夢にも思っていなかった上、
 絶対にジェラルドを逃したくなかったから。

 ジェラルドの成果を横取りした貴族の子弟三人組が
 弱い魔獣相手に情けない姿を晒した以降、
 この団の実力のなさはどんどん広がっていく一方だから。

 一人の男がジェラルドに懇願する。
「せめて我が軍の副団長として
 赴任してもらえないだろうか?」

 ジェラルドは申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「それは不可能ですね、申し訳ございません。
 私はすでに、ロンダルシア軍が結成した傭兵団の
 団長に任命されておりますから」

 真っ赤な顔で大きく口を開けたままのキャバン団長と
 絶望的な表情で口をつぐむ軍の幹部たちに、
 ジェラルドは一礼し、退出した。
 並べられた聖騎士団の制服とマントには目もくれず。

 昔の価値観のままでなくて残念だったな。
 人も夢も成長するんだぜ。

 俺は約束通り、何にも言わないまま、
 彼らに手を振り、ニコニコしながら部屋を出て行った。
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