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第二章
34 乳母のたくらみ
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「揃いも揃って、下賤で愚かな者たちの分際でっ!」
乳母は自室で怒り狂っていた。
東王院家の乳母ともあろう者が、
一人の生徒に対して酷い言いがかりをつけ
権力をかざし、退学を強要したことが問題視されたのだ。
学校長が静かに、しかしハッキリと乳母に告げた。
「この教育の場において、
身分で優遇したことはございません。
全ての生徒は平等に、
こちらで学ぶ権利を有しています」
乳母は負けじと言い返す。
「四天王家の子女の安全は最優先されるべきでは?」
すると学校長は穏やかに笑って言ったのだ。
「もちろん生徒の安全は最優先されるべきです。
では、今回の件が安全を脅かすものであったかどうか
天帝と四天王家に判断をゆだねましょう」
「ええっ!? そ、それは……」
口ごもる乳母に、学校長はトドメを差す。
「南王門家の方々が状況を説明してくださるそうです。
まあ、学校内の防犯カメラの映像もありますし」
天帝や他の四天王家に知られるなんて。
それだけは避けねばならない。
乳母は大慌てで懇願する。
「お待ちください!
姫様をお守りするのが私の仕事なのです!
全ては、姫様を思うが故なのです!
どうか、皆さまへのご報告だけはおやめください!」
乳母が泣きながら懇願したため、
このようなことは避けるよう進言されたのち、
やっと解放されたのだ。
”こんな騒ぎが知られたら、
姫様の評価が下がってしまう”
自分のせいであることを棚に上げ、
乳母はイライラと唇を噛んだ。
そしてその怒りはセーランにも向けられる。
”姫様にはもっとがんばってもらわないと。
私の立場が低いままじゃない”
そして馬鹿にしたような笑みを浮かべながら考える。
”美人だし、勉強も教養も秀でてはいるけど、
何か惹きつけるような魅力がないのよね、うちの姫様は”
それに一番の問題は、”象徴”の発現だ。
もちろんセーランの”能力”自体は高く、糸から縄までを
自由自在に動かすことができる。
それを駆使した攻撃や防御は可能だ。
だから学校での”訓練”は常に成績優秀でいられたが。
しかし華族や武家にはない能力が、四天王家にはある。
アヤハが南王門家の象徴である”朱雀”の資質を用いて
鳥に変化できるように、
本来セーランも”龍”の力を用いて、龍になれるはずなのだ。
現にセーランの父は立派な黒龍に、兄は飛龍になれる。
「少なくとも、火竜くらいには
なってもらわないとねえ」
片眉をあげ、呆れたような口調で乳母はつぶやく。
「そうでなければ私、
”位階”も”名号”ももらえないじゃない」
乳母が求めているのはセーランの成長や幸せなどではなく、
自分の地位と名声のみだったのだ。
ーーーーーーーーーーーー
「皆様、ごきげんよう。
今日は本当に良いお天気ね」
セーランが話しかけると、クラスメイトはビクっと体を硬直させる。
「ええ! 本当に!」
そして作り笑顔を浮かべ、そそくさと
何かを思い出したように去って行くのだ。
セーランはため息をつく。
それはそうだろう。
あれだけ乳母が権威を振りかざした上、
セーランの体調を案じただけのアイレンに退学を迫ったのだ。
皆はアイレンの家が、上位華族である”天満院家”だから
退学を免れたのだ、と誤解していた。
だから自分が乳母のターゲットになってしまったら
退学はまぬがれないだろうと思い、避け始めたのだ。
実際は同じ四天王家のアヤハに厳しく咎められ
学校からも苦情を言われたため、
そのようなことは二度と起こり得なかったのだが。
失った人望は元には戻らないのだ。
セーランは一人寂しく、昼食を取ろうとしたが。
「あら、セーラン様。学食に行かれます?」
アイレンが呑気に話しかけてきたのだ。
最も自分を恐れ、避けられてもおかしくないのに
屈託なく話しかけてくるアイレンに、セーランは戸惑う。
「……え、ええ」
「今日は迷いますわね。
メインはAランチが魅力的ですけど
デザートはBランチのほうが好みなんですもの」
「あ、あら、そうですの?」
思わず聞き返すセーランに、アイレンはうなずく。
「学食の人に言えば、変えてくれるんじゃない?」
ジュアンが言うと、アイレンは首を振った。
「バランスを考えての組み合わせなんですもの。
栄養士さんの仕事にダメ出しはできないわ」
謎のこだわりを見せるアイレンに、
ジュアンはハッキリ言う。
「私はオムライス一択。金運を上げるのよ」
「えっ! オムライスにそんな力が?!」
素直に驚くセーランに、アイレンは説明する。
「黄色い食べ物は金運をあげるって。
風水よね? 私もジュアンに聞きましたの」
興味深げなセーランに
ジュアンは風水について説明する。
「お店を帝都に作る時にも考慮しましたわ。
配色はもちろん、建物の角を他店に向けない、とか」
色の心理的な効果や縁起を担ぐ楽しさを聞き、
感心した表情でセーランがつぶやく。
「面白い文化ですわね」
「まあ、気休めなんでしょうけど。
今の私はおこずかいをあげてもらうためにも
ヘビ皮の財布が欲しいわ」
「え! ヘビ?!」
それを聞き、セーランは露骨に怖がる顔をする。
「あら? 苦手ですの? 私は可愛くて好きだけど」
アイレンが言うと、セーランは首を横に振る。
「苦手というより、私たち東王門家にとって、
出来るだけ避けたい存在なのです」
ジュアンは不服そうに言う。
「商売人にとっては神なんですけどねえ」
食堂に着き、そのまま”なし崩し”に、
三人で昼食を取ることになる。
「セーラン様はお魚がお好きなんですか?」
「小骨が苦手だけど、
乳母がなるべく魚を食べたほうが良いって」
アイレンの問いに、セーランは苦笑いで返す。
もともとセーランは、好きなものを聞かれるのが苦手だった。
どうしても、”どう答えるのが正解か”考えてしまうからだ。
アイレンは小首をかしげ、自分の皿を寄せて言う。
「この酢豚のお肉、柔らかくて美味しいですよ」
他人の皿から取るなど、初めての経験だった。
まごついていると、横からジュアンが箸を出し
手本のように取っていく。
「いただきます、っと。ここの料理人、本当に腕が良いわ」
どうしよう、と思って周囲を見ていると、
みんながチラチラとこちらを見ているのに気づいた。
”ここで断ったら、また高慢だと思われるかも”
セーランは焦りつつ、いただきます……とつぶやき、
一つ箸でつまみ、自分の皿に移した。
そして思い切って食べる。
揚げた肉など、乳母だったら絶対反対するだろう。
そう思いつつも。
「本当に……美味しいですわね!」
笑顔を見せたセーランに、アイレンも笑顔を返す。
「下味がしっかりついてますよね~」
周囲の空気が柔らかいものへと変わった。
その午後から、以前のように
セーランの周りにはクラスメイトが戻っていた。
彼女を恐れる必要はないと理解したのだろう。
皆と楽しく語らうセーランを見て、
アイレンは安堵する表情を浮かべていると。
「寛容なご対応、感謝しますわ」
振り返ると、そこには真っ赤な髪の美姫が立っていた。
アイレンのところにアヤハがやってきたのだ。
「とんでもない! 私の方こそ、申し訳なくて」
アイレンが慌てて言うと、
紅玉のような瞳を細め、アヤハは困ったような顔で微笑む。
「私たちは世界を飛び回り、世界中を守らねばならぬのに
狭い狭い世界で生きているのよ。
ふふっ、変な話でしょう?」
彼女の言わんとすることを察し、アイレンは微笑む。
「それは私たちも同じです。
ご一緒に世界を広げられること、
誇らしく、また嬉しく思っております」
アヤハは嬉しそうにうなずき、去っていった。
「ええ、楽しみね、天満院 アイレン様。
今後ともよろしくお願い申し上げます」
と言い残して。
去って行くアヤハを見ながら、
ジュアンがポツリとつぶやく。
「でもまあ、世界を広げるって面白いけど、
時おり危険や苦痛を伴うわよね」
ーーーーーーーーーーーー
「ね、一度、お父様にお会いして、
結婚の準備についてご相談しようかと思うの。
ほら、卒業までのスケジュールもありますし」
セーランの言葉に、乳母は飛び上がって驚く。
今までセーランが、自分の父親に会いたいなどと
言い出すことは一度も無かったのだ。
乳母は慌てて言う。
「そ、それでしたら私にお任せください。
いつもの通り、完璧に進めておりますから
姫様が手を煩わせることなど何もございませんわ」
セーランは恥ずかしそうにつぶやく。
「それにレイオウ様の意向もお尋ねしたいし。
アヤハにも直接、お父様に聞くのが良いって勧められたの」
「なんですって?!」
乳母は思わず叫んでしまう。
南王門家のアヤハが直接、父親に会うよう勧めたというのか。
それが意味することを考え、凍り付いてしまう。
”もしかして……気付いたの?”
そう思ったが、すぐさまそれを否定する。
アヤハがその可能性をセーランに告げなかったのは、
まだ確証はないからだろう。
ただ東王に会えば明らかになるから、会えと言ったのだ。
乳母は必死に笑顔を作りつつ、セーランをなだめる。
「でも、お会いになるのはお勧めしかねます。
東王は、姫様の”象徴の発現”がまだであることを
かなりご不満の御様子でしたから」
それを聞き、セーランの笑顔がかき消える。
やはり父は、自分に対して失望しているのか。
急にしょんぼりと落ち込むセーランに、
乳母が慰めるように言う。
「もう少し先にいたしましょう、ね?
姫様はもっと頑張らねばならぬのですよ」
必死に時間稼ぎをするが、乳母の焦りは隠せなかった。
南王門家が気付いているのだ。
バレるのは時間の問題だろう。
乳母は何か手を打たねば、と必死に考えた。
乳母は自室で怒り狂っていた。
東王院家の乳母ともあろう者が、
一人の生徒に対して酷い言いがかりをつけ
権力をかざし、退学を強要したことが問題視されたのだ。
学校長が静かに、しかしハッキリと乳母に告げた。
「この教育の場において、
身分で優遇したことはございません。
全ての生徒は平等に、
こちらで学ぶ権利を有しています」
乳母は負けじと言い返す。
「四天王家の子女の安全は最優先されるべきでは?」
すると学校長は穏やかに笑って言ったのだ。
「もちろん生徒の安全は最優先されるべきです。
では、今回の件が安全を脅かすものであったかどうか
天帝と四天王家に判断をゆだねましょう」
「ええっ!? そ、それは……」
口ごもる乳母に、学校長はトドメを差す。
「南王門家の方々が状況を説明してくださるそうです。
まあ、学校内の防犯カメラの映像もありますし」
天帝や他の四天王家に知られるなんて。
それだけは避けねばならない。
乳母は大慌てで懇願する。
「お待ちください!
姫様をお守りするのが私の仕事なのです!
全ては、姫様を思うが故なのです!
どうか、皆さまへのご報告だけはおやめください!」
乳母が泣きながら懇願したため、
このようなことは避けるよう進言されたのち、
やっと解放されたのだ。
”こんな騒ぎが知られたら、
姫様の評価が下がってしまう”
自分のせいであることを棚に上げ、
乳母はイライラと唇を噛んだ。
そしてその怒りはセーランにも向けられる。
”姫様にはもっとがんばってもらわないと。
私の立場が低いままじゃない”
そして馬鹿にしたような笑みを浮かべながら考える。
”美人だし、勉強も教養も秀でてはいるけど、
何か惹きつけるような魅力がないのよね、うちの姫様は”
それに一番の問題は、”象徴”の発現だ。
もちろんセーランの”能力”自体は高く、糸から縄までを
自由自在に動かすことができる。
それを駆使した攻撃や防御は可能だ。
だから学校での”訓練”は常に成績優秀でいられたが。
しかし華族や武家にはない能力が、四天王家にはある。
アヤハが南王門家の象徴である”朱雀”の資質を用いて
鳥に変化できるように、
本来セーランも”龍”の力を用いて、龍になれるはずなのだ。
現にセーランの父は立派な黒龍に、兄は飛龍になれる。
「少なくとも、火竜くらいには
なってもらわないとねえ」
片眉をあげ、呆れたような口調で乳母はつぶやく。
「そうでなければ私、
”位階”も”名号”ももらえないじゃない」
乳母が求めているのはセーランの成長や幸せなどではなく、
自分の地位と名声のみだったのだ。
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「皆様、ごきげんよう。
今日は本当に良いお天気ね」
セーランが話しかけると、クラスメイトはビクっと体を硬直させる。
「ええ! 本当に!」
そして作り笑顔を浮かべ、そそくさと
何かを思い出したように去って行くのだ。
セーランはため息をつく。
それはそうだろう。
あれだけ乳母が権威を振りかざした上、
セーランの体調を案じただけのアイレンに退学を迫ったのだ。
皆はアイレンの家が、上位華族である”天満院家”だから
退学を免れたのだ、と誤解していた。
だから自分が乳母のターゲットになってしまったら
退学はまぬがれないだろうと思い、避け始めたのだ。
実際は同じ四天王家のアヤハに厳しく咎められ
学校からも苦情を言われたため、
そのようなことは二度と起こり得なかったのだが。
失った人望は元には戻らないのだ。
セーランは一人寂しく、昼食を取ろうとしたが。
「あら、セーラン様。学食に行かれます?」
アイレンが呑気に話しかけてきたのだ。
最も自分を恐れ、避けられてもおかしくないのに
屈託なく話しかけてくるアイレンに、セーランは戸惑う。
「……え、ええ」
「今日は迷いますわね。
メインはAランチが魅力的ですけど
デザートはBランチのほうが好みなんですもの」
「あ、あら、そうですの?」
思わず聞き返すセーランに、アイレンはうなずく。
「学食の人に言えば、変えてくれるんじゃない?」
ジュアンが言うと、アイレンは首を振った。
「バランスを考えての組み合わせなんですもの。
栄養士さんの仕事にダメ出しはできないわ」
謎のこだわりを見せるアイレンに、
ジュアンはハッキリ言う。
「私はオムライス一択。金運を上げるのよ」
「えっ! オムライスにそんな力が?!」
素直に驚くセーランに、アイレンは説明する。
「黄色い食べ物は金運をあげるって。
風水よね? 私もジュアンに聞きましたの」
興味深げなセーランに
ジュアンは風水について説明する。
「お店を帝都に作る時にも考慮しましたわ。
配色はもちろん、建物の角を他店に向けない、とか」
色の心理的な効果や縁起を担ぐ楽しさを聞き、
感心した表情でセーランがつぶやく。
「面白い文化ですわね」
「まあ、気休めなんでしょうけど。
今の私はおこずかいをあげてもらうためにも
ヘビ皮の財布が欲しいわ」
「え! ヘビ?!」
それを聞き、セーランは露骨に怖がる顔をする。
「あら? 苦手ですの? 私は可愛くて好きだけど」
アイレンが言うと、セーランは首を横に振る。
「苦手というより、私たち東王門家にとって、
出来るだけ避けたい存在なのです」
ジュアンは不服そうに言う。
「商売人にとっては神なんですけどねえ」
食堂に着き、そのまま”なし崩し”に、
三人で昼食を取ることになる。
「セーラン様はお魚がお好きなんですか?」
「小骨が苦手だけど、
乳母がなるべく魚を食べたほうが良いって」
アイレンの問いに、セーランは苦笑いで返す。
もともとセーランは、好きなものを聞かれるのが苦手だった。
どうしても、”どう答えるのが正解か”考えてしまうからだ。
アイレンは小首をかしげ、自分の皿を寄せて言う。
「この酢豚のお肉、柔らかくて美味しいですよ」
他人の皿から取るなど、初めての経験だった。
まごついていると、横からジュアンが箸を出し
手本のように取っていく。
「いただきます、っと。ここの料理人、本当に腕が良いわ」
どうしよう、と思って周囲を見ていると、
みんながチラチラとこちらを見ているのに気づいた。
”ここで断ったら、また高慢だと思われるかも”
セーランは焦りつつ、いただきます……とつぶやき、
一つ箸でつまみ、自分の皿に移した。
そして思い切って食べる。
揚げた肉など、乳母だったら絶対反対するだろう。
そう思いつつも。
「本当に……美味しいですわね!」
笑顔を見せたセーランに、アイレンも笑顔を返す。
「下味がしっかりついてますよね~」
周囲の空気が柔らかいものへと変わった。
その午後から、以前のように
セーランの周りにはクラスメイトが戻っていた。
彼女を恐れる必要はないと理解したのだろう。
皆と楽しく語らうセーランを見て、
アイレンは安堵する表情を浮かべていると。
「寛容なご対応、感謝しますわ」
振り返ると、そこには真っ赤な髪の美姫が立っていた。
アイレンのところにアヤハがやってきたのだ。
「とんでもない! 私の方こそ、申し訳なくて」
アイレンが慌てて言うと、
紅玉のような瞳を細め、アヤハは困ったような顔で微笑む。
「私たちは世界を飛び回り、世界中を守らねばならぬのに
狭い狭い世界で生きているのよ。
ふふっ、変な話でしょう?」
彼女の言わんとすることを察し、アイレンは微笑む。
「それは私たちも同じです。
ご一緒に世界を広げられること、
誇らしく、また嬉しく思っております」
アヤハは嬉しそうにうなずき、去っていった。
「ええ、楽しみね、天満院 アイレン様。
今後ともよろしくお願い申し上げます」
と言い残して。
去って行くアヤハを見ながら、
ジュアンがポツリとつぶやく。
「でもまあ、世界を広げるって面白いけど、
時おり危険や苦痛を伴うわよね」
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「ね、一度、お父様にお会いして、
結婚の準備についてご相談しようかと思うの。
ほら、卒業までのスケジュールもありますし」
セーランの言葉に、乳母は飛び上がって驚く。
今までセーランが、自分の父親に会いたいなどと
言い出すことは一度も無かったのだ。
乳母は慌てて言う。
「そ、それでしたら私にお任せください。
いつもの通り、完璧に進めておりますから
姫様が手を煩わせることなど何もございませんわ」
セーランは恥ずかしそうにつぶやく。
「それにレイオウ様の意向もお尋ねしたいし。
アヤハにも直接、お父様に聞くのが良いって勧められたの」
「なんですって?!」
乳母は思わず叫んでしまう。
南王門家のアヤハが直接、父親に会うよう勧めたというのか。
それが意味することを考え、凍り付いてしまう。
”もしかして……気付いたの?”
そう思ったが、すぐさまそれを否定する。
アヤハがその可能性をセーランに告げなかったのは、
まだ確証はないからだろう。
ただ東王に会えば明らかになるから、会えと言ったのだ。
乳母は必死に笑顔を作りつつ、セーランをなだめる。
「でも、お会いになるのはお勧めしかねます。
東王は、姫様の”象徴の発現”がまだであることを
かなりご不満の御様子でしたから」
それを聞き、セーランの笑顔がかき消える。
やはり父は、自分に対して失望しているのか。
急にしょんぼりと落ち込むセーランに、
乳母が慰めるように言う。
「もう少し先にいたしましょう、ね?
姫様はもっと頑張らねばならぬのですよ」
必死に時間稼ぎをするが、乳母の焦りは隠せなかった。
南王門家が気付いているのだ。
バレるのは時間の問題だろう。
乳母は何か手を打たねば、と必死に考えた。
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