勇者、英雄、魔王、ダンジョンマスター、商人、領主。これらの共通点を述べよ。――全部俺がこなしてきた職業だな。~勘違いする最強たちは?~

パタパタ

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増員ですか?

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【トランスティション】

 魔王城から帰ってきた俺こと和田修平。
 荷物を預かっているわけだが、……悲しいかな。男には我慢ならない時がある。

 探しに行くか。ウェルちゃんを。
 一緒に水浴び、ランランラ~ン。
 あの太陽みたいな微笑みと戯れるんだいっ。

「修平お兄ちゃんのお背中大きいねって……どちら様?」
「言葉を発しないでくださいまし。変態」 

 扉を抜けると、……そこは雪国でした。
 冷たく刺さる視線に、凍える態度。氷点下の言葉と、別次元の寒さ。
 ギャグが滑ったなんて非じゃないくらいに。

「修平君ってそんな人だったんだ?」
「マジか。……俺、声に出していたか」

 麗奈までもドン引きしていた。
 なぜ見知らぬ少女と一緒にいるのかわからないが、これだけははっきりしている。

 魔王適せ――いっ。覚えてろよ!!
 そう。
 幕間を挟んだので、説明しなおすとしよう。
 俺は魔王に選抜されてしまい、そのせいで、内に秘めた欲望が前面にプッシュされてしまったのだ。
 
 魔王の称号も上手く外せることができた――とたかをくくっていたが、間違いだったらしい。
 残り香を舐めていた。

「何か言ったらどうでしょうか?
 あんな子に手を出すなんて……人間の屑さん」

 良かった。まだ俺は人間に分類されているようだ。
 ……って、違うっ。

 本当に誰なんだ?
 紅く短めな髪を乱し――麗奈とイチャイチャしている。
 ってイチャイチャだと!?
 髪と同じ、赤色の瞳がすっかり蕩けていた。
 
「エヘヘッ。麗奈お姉さまの肌はすべすべです」
「もう。ちょっと止めて」

 俺の麗奈とで態度が違い過ぎないか。
 ……よくやった。麗奈の肌はすべすべなのか。
 いやいや。落ち着け、落ち着くんだ俺。欲望を抑えろ。

「素晴ら……」

 小声まで押し殺すことに、何とか成功した。
 二人に聞かれた様子はない。つまり、俺は完全に無視されている。
 それもそれで悲しいな。
 それにしても、どっかで見た覚えがある。
 
【仕方ないっしょ。可哀想だからヒント、上げてもいいし――】

 同情するなら答えをくれ。
 何で態々ヒントから入るんだよ。

【なら教えてやらないし――】
「あ、ちょっと」
「まだいたんですか。同じ空気を吸いたくありませんので、どうぞここから消えてください」
「ミラちゃんダメだよ。そこにいる修平君がさっき言ってたひとだから」
「本当ですか?」

 この百合少女はミラというのか。
 俺の顔をまじまじと見つめる。

「何でこのような家畜同然のごみと一緒のパーティーを組んでいるのですか。麗奈お姉さまはあんなにお強いで」
「わぁわぁああ」

 遂に俺は人間から降格しました。
 麗奈が慌てふためき、声を挙げる。
 ミラの口を閉ざして、俺から引き離しているが、何だったんだろうか?

「……あのことは……隠して……」
「……お姉さまだって……」
「……いいから……お願い」
「……お姉さまがそういうなら……」

 二人はこそこそ話し合っている。
 ――何か、隠しごとをしているらしいが。

「この世は終わりだ」
「待って待って。別に悪口を言ってたとかじゃないから。修平君といるの嫌いじゃないから」
「そうか。なら良かった」

 隠し事の一つや二つはあるだろう。
 現に俺だってあるわけだし、これ以上追及し続けるのは無粋だよな。
 
 まあ、気にならないといえば、嘘になるけど。
 いつかスリーサイズまで聞き出してやるぜっ。

 ――あっぶなっ。

 危う今度こそ見放される所だった。
 右よーし。左よーし。
 もう一度、……右よーし。
 うん、二人に聞かれていないようだ。

「それで、ミラとはどこで知り合ったんだ?」
「それはね、えっと……」
 
 しどろもどろになる麗奈。
 何か答えにくいものなのか。
 
「それは……きゃっ」
「ちっ邪魔だ。そんな所に突っ立てんじゃねぇよ」

 見ていられなくなったのだろう。
 ミラの口が開く。
 そんな彼女と別の部屋から飛び出だしてきた大男が衝突した。

 体格が違い過ぎる。
 ミラノだけが、尻餅をついた。
 
「この間抜けっ。貴方こそちゃんと周りを見なさいよ」
「ああん?
 この俺に立てつこう……よく見たらいい体してんじゃねぇか。俺の女にしてやるよ」
「ひっ!?」

 ああー。そういえばと、思い当たる節がある。
 怯えた表情で思い出すとか、最低だな。

 震えるミラへと麗奈が駆け寄る。

「おねえさま」
「大丈夫だから」
「へっ。そっちの趣味ってか。仕方ねぇから俺が男の良さを教えてやるよ」
「やめ」
「止めた方がいいですよ」

 ミラ、彼女は盗賊に捕まっていた三人の内の一人。
 何で麗奈と出会ったのかは分からない。
 でも、理由なんてどうでもいいことだ。
 ――今ここにミラがいて、誰かの助けを必要としている。
 大事なのはその事実のみ。

 俺は彼女へと這い寄る手を、跳ね除けた。 

「何だやろうってのか?」
「俺は!
 百合が大好きなんだ!!
 姦しい女子の戯れを側で見守ることが生きがいなんだっ。本当に好きだ。大好きだ。……語彙力が欠けちゃうくらいに愛している」
「そ、そうか。じゃあな」

 汗を垂らしながら、逃亡するおっさん。
 俺の威圧と熱意に戦意を喪失したんだな。
 漏れ出てしまった殺気も、百合愛がうまく誤魔化しているはず……。

 麗奈とミラの二人は、ポカ~ンと口を開けて固まっていた。
 俺は腰を落として、ミラと目線を合わせる。

「…………」
「俺はミラに罵倒されても、苦にならない。だけどさぁ、他の人は違うんだよ。だからな、他の男にそういう気持ちを持ってもぐっと堪えて、全部俺に向けてく吐き出してくれないか?」
「触らないでください、この変態。鬼畜、屑。
 百合好きだからって慣れ慣れしくしないで下さる」
「最後のだけはストレートに俺に来たな」
「頭もお悪いようで。全部貴方に向けたものですのに……これでいいですか?」

 おおっ全部俺でしたか。
 涙目の少女に罵られるとか、最高だぜっ。

「ああ。それとできれば、麗奈に」
「ふんっ。最初から貴方に慰めてもらう気はありませんので」

 そう言うと、ミラは麗奈の胸に顔を埋める。
 最初こそ驚いていた麗奈だが、優しくミラの頭を撫で始める。
 大丈夫そうだな。麗奈の包容力が強いのかも。
 堪能している感じがした。

「恥ずかしいし、ちょっと外を走ってくる」
「うん。かっこよかったよ」

 ――かっこよかったか。
 ちょっぴり嬉しいな。
 神から与えられた能力じゃなく、自分のものだけで褒められたのは初めてかもしれない。 

 さて、ここからはバリバリ魔法を使っていきますか。
 俺は奴の後を追う。

「み~つけた」
「うわっ。いまさら何の用だよ?」
【メモリーアルター】

 路地裏を走っている姿を発見する。
 俺が思想改竄魔法を唱えたら、ガクッとうなだれた。

「百合は素晴らしい。百合は素晴らしい。百合は素晴らしい。
 はいっ、復唱!!」
「百合は素晴らしい。百合は素晴らしい。百合は素晴らしい」
「ああ。百合はー」
「すばらし~い。百合はすばらし~い……」

 両腕を大きく広げて、そのまま走り去っていく。
 表情がやばかったが、特に問題ないな。

 ――やれやれ。
 どうやら新しい同士を作り出してしまったようだ。
   
 
 
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