『カールロット公爵令嬢は魔女である』~冤罪で追放されたので、本当に災厄の魔女になることにした~

あだち

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一、カールロット公爵令嬢は魔女である、ことにされた

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『いいことレダリカ、誰よりも賢く、誰よりも美しい女におなりなさい。どんなときでも動じずに、優雅に微笑んでいなさい』

『あなたはカールロット公爵の娘なのだから。この国の、未来の王の妻にと、誰よりも望まれてしかるべき人間とおなりなさい』

 七歳のときに、一つ年下の異母妹であるルゼが屋敷に迎えられた。それからというもの、それまで子どもの教育に無関心だったお母様が、突然そう言い始めた。何度も、何度も。それ以外に何を言われたか思い出せないくらい、同じことを言っていた。というより、それ以外に言われたことは特にない。

 私はもともと、国内でも指折りの名家に生まれた以外には大して取り柄もなかった。引っ込み思案で消極的で、親しく話せる友人もほとんどいないような性格だった。

 しかしというか、だからこそというべきか、この言いつけは必ず守ろうと決めた。
 というのも、お母様の変貌はお父様が隠し子を連れてきて、かつその子を私より気にかけていたからだというとことは、幼心にもなんとなく察し、同情したからだ。
 そして何より、それを言いつけてきたお母様の視線に込められた怒りと恨みと憎悪が、私の心をきつく縛り上げたのだ。

 カールロットの正統な娘が他の家の娘に負けるなというのはつまり、正妻の娘が愛人の娘に遅れをとるなんて論外、という意図が込められていた。その気迫のこもった目は、以降もたびたび夢に見た。

 かくして、身分以外に何も持っていなかった私は、それから血のにじむような努力に向き合うこととなった。この国のすべてを手に入れるのにふさわしい、王妃となることを望まれる女になるために。

 それは一年後にお母様が事故で亡くなってしまったあとも、ルゼとの姉妹仲が親密になった後も私の中で弛むことはなかった。
 それどころか、私は一層自分を厳しく律した。夜明けと共に、いや、冬は夜明けより早く起き出して本を開き、足の痛みに気がつかないふりをしてダンスの練習に明け暮れ、美容にいいと聞いた化粧水はどんな遠方からでも手にいれて片端から試していった。

 ――それが、他に何も言い遺してくれなかったお母様から、唯一受け取ったものだったからだ。

 十年ほど続いたそんな生活は、それを苦に感じるいとまもなかった。ほとんど強迫観念にとりつかれていたと言っていいと思う。
 分刻みのスケジュールに忙殺されていたお陰で、貴重な、ほぼ唯一と呼べる友人とも、いつの間にか疎遠になっていた。私は寂しさから目を背けて、次の家庭教師を迎える準備をした。

 その間、妹のルゼはほったらかしにしてしまっていた。
 いや、何度か、一緒に勉強しないかと誘ったこともあった。が、その度にルゼは愛らしい笑顔で「お姉様と違って、ルゼには必要ありませんもの」と言って庭へと走って行ってしまったものだ。揺れる金髪が、庭の緑によく映えて、ことさら眩しかった。
 私は羨ましさと寂しさに蓋をして、歴史書や家系図録を机に積んだ。

 そんな私の努力は、別にお父様に誉めてもらえるわけでもなかったが、成果は王太子であるヴァンフリート様との婚約内定という形で現れた。
 私と殿下は当時互いに十七歳、十八歳。昨年のことだ。

 わたしは歓喜した。自分のしてきたことは間違っていなかったのだ。全部肯定された。わたしは未来の王妃として国に望まれている、お母様、あなたの言った通りになった!
 
 ――そのわりに、お母様の喜ぶ顔を想像できなかったが、それについて自分を振り返る時間なんてもちろんなかった。
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