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第三章 四つの創家
場数の差-①
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「申し訳ありません」
シアーラが城に戻り、真っ先にしなければならないことがあった。一目だけと願ったファイネッテとの面会では、当然ながらすぐそばにローゼンタールの息のかかった側近がいた。だが、二人きりになる機会など、次にいつ訪れるか分からない。再会の喜びに瞳を潤ませるファイネッテの顔を見上げ、自身も顔をくしゃりと歪めて、シアーラは膝を折り、喉につっかえるその言葉を無理やり捻り出した。
「ファイネッテ様。四家の歴史について、再度確認をいたしました。その結果……創家は建国当初より諍いが絶えなかったと。理想といえるような四人の姿は、どこにもありませんでした」
シアーラの声は震えていた。
記録番の言葉だけでは信用できないと、許される限りの時間を使い、シアーラ自身の目でも確かめた結果だった。建国当初の色褪せた文献を必死に読むシアーラに、記録番は哀れみの目を向けていた。当然、保管されていた全ての記録に目を通すことはできない。数十人の歴史研究者を向かわせたとしても、何年もかかるだろう。だが、最も希望を託していた建国当初ですら、起きていたのは常に誰かの裏切りと利権の争い。見るに堪えぬ歴史だった。
側近は、何をわけのわからないことをという顔をして、王女とシアーラを交互に見た。だが、ファイネッテには伝わっていた。
ファイネッテの顔色は見るからに変わっていった。驚き、衝撃と、落胆。そして、怒り。
永遠にも思われる沈黙が降りた。
「……どうせ、そんなことだろうと思ってたわ」
次に聞こえた、何かを失ったその声色を聞いて、シアーラは泣きそうな顔になりながらファイネッテを見上げた。
「ファイネッテ様」
「だって、おかしいわよね。そうだったら、こんなふうになるわけない」
取り繕った謝罪や、それでもやれると彼女を鼓舞するようなことはもうできないと分かっていた。
ファイネッテを支えていたものを、自ら外した。その重みが、二人の間の空気となってずしりとのし掛かる。
自分のせいで彼女を騙してここまで連れてきてしまった。もちろん、まだシアーラは諦めてはいない。でも、誤った情報で主を動かせてしまった。
――それでも、諦めないで欲しい。
その言葉をファイネッテに伝えることはできなかった。
シアーラが城に戻り、真っ先にしなければならないことがあった。一目だけと願ったファイネッテとの面会では、当然ながらすぐそばにローゼンタールの息のかかった側近がいた。だが、二人きりになる機会など、次にいつ訪れるか分からない。再会の喜びに瞳を潤ませるファイネッテの顔を見上げ、自身も顔をくしゃりと歪めて、シアーラは膝を折り、喉につっかえるその言葉を無理やり捻り出した。
「ファイネッテ様。四家の歴史について、再度確認をいたしました。その結果……創家は建国当初より諍いが絶えなかったと。理想といえるような四人の姿は、どこにもありませんでした」
シアーラの声は震えていた。
記録番の言葉だけでは信用できないと、許される限りの時間を使い、シアーラ自身の目でも確かめた結果だった。建国当初の色褪せた文献を必死に読むシアーラに、記録番は哀れみの目を向けていた。当然、保管されていた全ての記録に目を通すことはできない。数十人の歴史研究者を向かわせたとしても、何年もかかるだろう。だが、最も希望を託していた建国当初ですら、起きていたのは常に誰かの裏切りと利権の争い。見るに堪えぬ歴史だった。
側近は、何をわけのわからないことをという顔をして、王女とシアーラを交互に見た。だが、ファイネッテには伝わっていた。
ファイネッテの顔色は見るからに変わっていった。驚き、衝撃と、落胆。そして、怒り。
永遠にも思われる沈黙が降りた。
「……どうせ、そんなことだろうと思ってたわ」
次に聞こえた、何かを失ったその声色を聞いて、シアーラは泣きそうな顔になりながらファイネッテを見上げた。
「ファイネッテ様」
「だって、おかしいわよね。そうだったら、こんなふうになるわけない」
取り繕った謝罪や、それでもやれると彼女を鼓舞するようなことはもうできないと分かっていた。
ファイネッテを支えていたものを、自ら外した。その重みが、二人の間の空気となってずしりとのし掛かる。
自分のせいで彼女を騙してここまで連れてきてしまった。もちろん、まだシアーラは諦めてはいない。でも、誤った情報で主を動かせてしまった。
――それでも、諦めないで欲しい。
その言葉をファイネッテに伝えることはできなかった。
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