君の敵

なとみ

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第一章 優秀な復讐者

翔太-②

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 えへ、と可愛い子ぶった笑みを見せるが、柚琉が真剣な表情を崩さないのを見て、一瞬だけ笑みを引っ込めた。

「おじさんには俺も世話になってたからさ~」

 翔太の母はいわゆる夜職で、子どもの世話をする余裕などなかった。
 柚琉の父は、ある日公園で出会った薄汚れた翔太を家に連れてきて、着替えさせて食事を与えた。母もはじめは難色を示していたが、翔太の母ともちゃんと話し合った末、仕事の間は彼の面倒を見ることで落ち着いたようだった。
 柚琉も最初は両親をとられたような気持ちになって翔太をよく思わなかったが、彼の人あたりの良さに乗せられて、いつの間にか翔太が家に入り浸るのを受け入れていた。
 よく考えればあの時から、翔太のヒモ気質は確立されていたのかもしれない。
 柚琉とは高校が違ったけれど、それでも翔太と柚琉の家との付き合いは続いていて、特に、父親のいない翔太は父によく懐いていた。

 父が亡くなったことと翔太がこう・・なのは無関係なのかもしれないが、柚琉はいつも申し訳なさを感じていた。

 これ以上は聞いても、いつも彼は答えない。それが分かっていたから、柚琉は話を変えた。

「木佐先生の件、何か分かった?」
「あー」

 何かを思い出すように目線を上げて、翔太は言った。

「真奈美さんが言ってたな。文立(ぶんりつ)大学に木佐教授いるじゃん。あの息子だって。ボンボン。顔はいいけど面白みない~、看護師にも事務にも手を出さないインポが~って言ってた」
「インポ……」

 柚琉が翔太に向ける目が、より冷ややかさを帯びる。

「腕はいいみたいだよ。看護師にも事務にも気ぃ遣ってくれるいい先生。だけど、とにかくバックに守屋教授がいるから怖いんだって。木佐先生の前では変なこと言えないって言ってた。真奈美さんはホラ、俺みたいなのが好きだから、話半分に聞いといたほうがいいかもしれないけど」
「だと、使えそうなネタはない、か……」

 考え込む柚琉に、翔太は続けた。

「あ、でもね、友香子さんが、昔山都さんと病院で看護師してた人知ってるよって」
「うそ」

 柚琉の目が丸くなり、それが期待に輝く。
 守屋教授がかつて父を診察していたのは、山都病院だ。
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