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第一章 始まり

8 2階層スライム宝の山

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あれから、2階層、野菜スライムの探索を続けた。
いろいろな野菜たちと様々な色の魔石が手に入った。畑仕事が必要ないくらい。
しかも、ダンジョン製野菜は季節も関係ないし一定の揃った形と大きさで美味しくて新鮮だった。



毎日、大量の野菜スライムを倒しているので、野菜ドロップの量が増えるいっぽうだ。

俺と母さんのふたりだけでは消費できないので、ご近所さんに配ったり、牛鶏のえさにしてあげている。もちろん食べられる野菜だけだが。
牛鶏の食べっぷりがよく、牛乳の出は良いうえ、卵の質も向上・量産、言うことなしだ。



あと、週に一回 自宅から少し離れている場所にある、道の駅の販売所に、地元野菜として一般販売してもらっている。

生産農家が各々、野菜を入れたビニール袋に自分の名前と金額が書かれたシールを貼り、台に陳列する。
あとは販売所に売ってもらい、後日売れた金額が振り込まれ生産者は売上金額により手数料を支払う仕組みになっている。

季節外れの野菜、今なら茄子なす胡瓜きゅうりなどは少ないので出すとすぐに売れ、人気がある。

すごいぞ野菜スライム。





そんな感じで気づくと肌寒い季節になっていた。もう少ししたら雪が降るな。
降り始めるとあっという間に積もるからな。


販売所も、この時期、野菜の生産量が減るので値段が高騰した。
高いのに、俺の野菜(ダンジョン製)たちは店頭に並べると人気物ですぐ売り切れる。旬物でない野菜は味や大きさが劣るが、俺の野菜たちは関係ない。
売り場の人に、量と回数を増やせないかと言われたが笑ってごまかした。

季節外れの野菜の大量陳列に不思議に思う人もいるので、そこは目立たないようこっそりやるしかない。

まさか、ダンジョンで狩っているとは言えない。


しかも、どこで調べたのか、直接、家に野菜(ダンジョン製)の問い合わせが増えてきている。
俺が思っていた以上に、寒いこの時期に季節外の野菜をほしがる人が多いので、気をつけなければ。



大量のあまった野菜たちの処分に困った解決策だったが、俺の良い小遣い稼ぎになる。

季節は寒いが、俺のふところは暖かだ。



だが、袋詰め作業も大変になってきたので、母さんにも手伝ってもらい始めた。
母さんに手間賃こずかいを要求され、神崎牧場・袋詰め家族協議が勃発した。

やれやれ。



とにかく、毎日ダンジョンにこもったおかげで、2階層迷路も探索が進んだ。





ある日、体は緑色で変わった葉のスライムが大量にいる場所があった。
あれは、いちごの葉ではないか。うじゃうじゃいる。


俺は、「これが本当ダンジョンだあー」と叫びながら突進した。



まだまだ俺も子供ガキだな。大量に大粒いちごをゲットした。
俺は、甘くてみずみずしく、大粒いちごに大満足だった。




2階層は?ダンジョンだった。
美味しいし、楽しいぞ、2階層ダンジョン。




その次の日、見たことがあるのに思い出せない葉の大きなでかスライムがいた。
なんとなく、期待値大の予感がする。


俺は、慎重に近づきスライム水を撒き、いつもより素早くかつ正確に引き抜くと核をナイフで攻撃した。
一瞬爆発したかのように光ったが、なんと、そこには立派な通常の倍くらいの大きなマスクメロンがあった。
俺はつい嬉し泣きをしてしまった。

メロンスライム略して『メロすら』、2階層『ボススライム』でいいんじゃねえ。




さっそく、帰って食べようとしたが、母さんに見つかったので二人で食べた。
半分だけでも充分大きく、すばらしいとしか言えない甘さとみずみずしさで、とにかく旨かった。
ふたりで感動しながら無言で食べ、あっというまになくなってしまった。



果物スライムは奥にいくほど出てくるようになった。
しかも複数出現する。俺は、2階層スライムを夢中で倒していった。





そして、見つけた新スライムに俺はを受けた。


体が茶色薄透明でやはり大きめの、でかスライムがいた。
やばい、なんと3本のおおきな松茸が頭から生えてる、きのこの王様マツタケスライムを3匹発見した。

2階層の『第2のボススライム』でいいのではないだろうか。




俺は無意識のうちにマツタケスライムが土に潜る前には捕まえていた。
すかさず、核を攻撃すると、光る粒子の拡散のあとには俺の手に9本の松茸があった。



自分でも驚くほどのスピードの荒業だった。
たくさんの野菜スライム倒しているうちにレベルアップし、水をかけなくても、地面に埋まる前に捕まえることができ、瞬殺できるようになっていた。




松茸おいしかったです。
松茸ごはんと焼松茸、土瓶蒸しにしていただきました。
松茸、最高です。
母さんも、松茸に大満足です。
定期的に、マツタケスライムとメロンスライムを捕まえることで、家族協議解決しました。

俺は『マツすら』を一番に、『メロすら』を二番目に倒すと心に誓いました。




と思っていましたが、2階層ダンジョン恐るべし、次に見つけたのはトリュフスライムでした。
しかも白トリュフ。
きのこ系スライムは大きな茶色スライムで椎茸や舞茸スライムは頭にびっしり生えています。
見たことのない、ごつごつした形のきのこが頭にびっしり生えている、きのこスライムだったので【鑑定】してみたら、幻のきのこ、白トリュフスライムでした。
トリュフ食べたことがなかったので知らなかったが、ネットで調べたらすごい高値価格で取引されています。




メロンや松茸が高額なのは、手間や数の少なさからくるその希少性からだ。
でもダンジョンでは関係ないので、たとえ松茸でも俺んちでの評価は、今ではほかのきのこや野菜と同等になっている。
だって、母さんと二人では食べきれないほど狩っているから。
うちの牛鶏やつらでさえ食べてるぞ。マツタケはどうかと思っていたがうちの牛鶏やつらだった。
それでも、消費しきれず、余る。


松茸やトリュフは生産地も関係するので簡単には道の駅には卸せない。
そこで、なんでも売ってるネットオークションに出すことにした。
ネットにだしてみたところ、産地もごまかしたのに落札された。それらしくラッピングして画像もだして、安値で始めたからだろうか。


しかも最初は安値販売だったが、徐々に取引件数が増えるたびに、落札者からの”いいね“の高評価がつき感想に力が入っているというか熱く語るというか、とにかく高値で競り落とされるようになった。

高級きのこ食べ慣れていないから俺は比較できないが、なぜか、ダンジョンきのこを取引した皆が絶賛してくれる。



とにかく高い評価のおかげで入札件数が増え、値は跳ね上がり、売れる。
出品して1分もしないうちに50件も入札があったときは、さすがネットと感心したが、こうも毎回だと見張られている気がして落ち着かない。



特定の出品者が商品を出すと通知される便利機能を達也は知らなかった。





通年なら冬の北海道は雪で家の中にこもりがちだが、ダンジョン探索と市場への卸しとネット販売で、俺の今年の冬は超多忙をきわめた。
高級きのことメロンは金になる。
2階層ダンジョンのおかげで、かなり儲けていった。







ダンジョン製野菜きのこ果物は、新鮮さが普通より10倍は長持ちするし、なおかつ形や大きさがすべて一定で季節に関係なく安定した高品質と味で、料理人には夢のような食材だった。しかも最大の特徴は、回復薬の成分も少なからずあるため、食べれば食べるほど体によい。
市場とネットでは、ひそかに謎の食材生産者として有名になっていたのも達也は知らなかった。




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