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第二章 新たなる出会い
20 帰ってきたぞ、覚悟と6階層へ
しおりを挟むああ、やっと我が家に帰ってきた。
家に着いたのは、真夜中だった。みんな、寝てるかなと思っていたら、明かりがついている。
俺が玄関をあけると、レオとライヤが飛びついてきた。
ああ、3日ぶりのもふもふだ。俺の目から涙がにじみ出る。
「お帰りなさい。ってなに、泣いてんのよ。」
母さんがきた。母さんの顔を見てほっとする。俺は相当疲れているようだ。
山のようなお土産をもち帰り、久しぶりといっても3日ぶりだが家族団欒を楽しんだ。
朝いつものように目が覚め、朝食を食べる。母と俺とライヤとレオ。
ほんと、少し前までは俺と母さんの二人きりだったのに、レオとライヤが来て家の中も明るくなった。
牧場もいろいろな人が集まりにぎやかになった。すべて、ダンジョンから始まった。
俺は仕事に行く前に話があると母さんに伝えた。すると母さんも俺に話したい事があると言った。
まずは、俺が昨日熊本まで行ってきた事。ダンジョンと自衛隊の事を話した。
そして、俺は秘密にしていたダンジョンの事を、俺んちで働く人達に打ち明けようと思っている事も言った。
ダンジョンを移動することはできないので、何人でるかわからないが、もしこの場所から離れる時の費用として1億を渡そうと思い、30億円を用意した事も話した。
ダンジョンの事を秘密にしていた俺を非難しようが、ダンジョンの事を話されてもしょうがないと思っている事も話した。
俺の希望は、この地で仲間たちと今までのように暮らしていくことなのだ。
ダンジョンでドロップアイテムを手に入れ、暮らしていければよいと思っている。
ダンジョンがあれば、1階層から5階層で衣食住すべて手に入る。
俺はレオとライヤで探索を続けていくだけだ。
俺が階層探索を続けるのは、もし強力な魔物がダンジョンから出てきて万が一の時に対応できるようにするためだ。
一人では生きていけない。それを知った俺は、ここにいる者を守るだけだ。
逆にそれ以外は、言い方は悪いが切り捨てるつもりだ。
今の俺には大切にしたいもの、守りたいものがはっきりとしているから。
別に、ダンジョンを制覇したいと思っていない。そんなの、自衛隊に任せておけばよい。
それが、俺の覚悟だった。それを聞いていた母さんの目に涙がにじんだ。
「達也。立派になって、あなたも、もう一人前なのね。母さんもあなたに打ち明ける決心がついたわ。」
えっ、一人前って独立した子の前で何決心したの。何打ち明ける気でいるの。
まさか、再婚か。父さん死んでまだ1年とちよっとだけど、いい人でも見つけたのか。早すぎないか。
俺はドキドキしてきた。
「母さん、町議に立候補するわ。そしてゆくゆくは、町長になるわ。」
・・・・・・・
再婚、ちがった。
えっ、どうゆうこと。
母さんどこ向かって走っていくの。
「あのね、最近うちも商売がひろがって、なにかとうるさくなってきたのよ。特に、お金のことに関してはあれこれ言ってくる人も増えたし、脅しともとれる言動を取る人もいるわ。それでね、思ったの。
すべて、力すなわち権力ね。権力さえあれば誰にも文句をいわせない。
だから、ゆくゆくは町の一番偉い人に、町の権力者になろうと思ったの。
そして、この町を牛耳ろうと思うの。」
母さん、ちょっと待って。
なんか、話の方向性が変わっているよ。牛耳るって町をマフィアにしてボスにでもなるんですか。
とにかく、母さんなりに覚悟を決めたのだけはわかった。
母さんは、ライヤとレオに向かって、スローガンは「老人と魔物に易しい町、KANDANイズベストよ。」と言っている。
母さんが政治家だったのが判明した。しかも実現しそうで怖い。
こうして、俺たちは改めて覚悟の違いはあるが、ここを守るという事だけは一致したのを確認した。
俺は、働いてくれる近隣の人達21名を目の前にして緊張している。
だって、これからダンジョンの事を告白するのだから。
なんだ、何が始まるのか、みんながざわついている。
俺は勇気を出して言った。
「えー皆さんにこれから重大な発表があります。秘密にしていましたが、実はうちにはダンジョンがあります。」
・・・・・・・・・
あれ、反応がないな。皆不思議そうな顔をしている。
「たっちゃん、ダンジョンってなにか?」
年寄りたちはダンジョンを知らなかったー!
俺は洞穴すなわちダンジョンについての説明をはじめ、今までの探索について魔物やドロップアイテムについてを説明した。みな不思議な顔をしている。
理解してねー!!
俺はダンジョンに行き、スライム一匹捕まえてきた。皆の前で魔核を破壊し、魔石に変わるのを見せた。
「新種のクラゲだ。」「おおー、すごい手品か。」とか反応はあったが、俺の想像していた反応とは違う。
なぜだー!!!
説明するのに、ものすごく疲れた。探索するより体力気力を使った。
たぶん、半分の人は理解していないと思う。
「それで、達坊は何が言いたいんじゃ。」
高田のじいちゃんが言った。
「だから、ダンジョンはいろんなアイテムが出て便利だけど、魔物は危険なんだ。
いつ、ダンジョンからでてきて襲ってくるかわからない。」
「俺たちに戦えと言っとるのか。」
「違―う。もし、恐いと思ったら金は出すから引っ越しを考えてほしいんだ。」
「なんだ、わしらを追い出したいのか。」
「全然違―う。何で伝わらないんだよ。もう。」
「まあ、ちょっと待て。みんな、達坊の話を聞いて、まず、ここを出て行きたいと思った者はいるか。」
高田のじいちゃんが、全員に聞いた。誰一人として、出たいという者はいなかった。
「うむ、それじゃあ、その魔物とやらと戦いたいと思う者はいるか。」
誰もなにも言わない。
「ダンジョンという物があるのはわかった。しかし、わしらは戦いも引っ越しもしない。
ふむ、そうじゃのう、達坊に聞くが、今まで通りじゃ行かんのか?」
俺は言葉に詰まった。
「わしらもバカではない。お前がいつも食材をどこからか持ってきているのを知っておる。まあ、実際に見ても、なんで魔物が化けるのかはよくわからんが。だが、そのおかげで皆健康だし、楽しく働いてもいる。ダンジョンについてもよくわからんが、わしたちは今のままでいいと思っておるんじゃ。」
「そうね。やりがいがあるし今のままでいいわ。」
「そだね。」「そうよね。」
みんなが高田のじいちゃんに賛同する。
「わしらはもう年だ。いつお迎えが来るかわからん。なんとなく暮らしていたが、最近は体も調子よいし、やりがいも感じておる。だから、変わる必要はないんじゃ。」
「そ、そうだ。これを見てくれ。」
俺は世界樹にもらった葉をみせた。
「これを煎じて飲めば、10歳若返る葉っぱだ。」
「そんなものはいらん。」
ええー、拒否!!高田のじいちゃん男前発言。
「じゃが、もしもの時は飲むかもな。」
どっちだよ。
母さんが言った。
「私からも発表があります。
私、1年後の町議員に立候補したいと思います。そして3年後に町長になろうと思います。」
「おおー、すごい」などのどよめきが起きた。俺のダンジョン告白より盛り上がっている。
俺の覚悟の告白は一体なんだったんだろう。
もはや、この気持ちはダンジョンにぶつけるしかない。
というわけで、レオとライヤと俺で、ダンジョン6階層にきました。
6階層ダンジョン・デビューだ。
6階層は5階層の風景に似ている。広い草原スペースだ。草以外なにも見えない。
俺たちは10分ほど走った。すると、緑色の垣根が動いているのが見える。
ん、あれはもしや、緑の葉はお茶の葉か?
近くに行くとやはり3mのお茶の木がわさわさと動いていた。
1枚1枚の葉がやはりクッションくらいの大きさがある。
お茶の葉は、緑茶・紅茶と幅広く活用されている飲料になる葉だ。
お、あれが敵か。
茶葉と戦っている、黄色の50cmくらいのカマキリのような、両手に鋭い鎌をもつ虫がいた。
【鑑定】
種族:チャノメキイロカマキリ 成虫
レベル8
茶の葉が好物。両手の鎌を使い葉を摘み取る。
あれ、同じ虫だが色が違うのもいる。
【鑑定】
種族:チャノメミドリカマキリ 成虫
レベル8
茶の葉が好物。両手の鎌を使い葉を摘み取る。
おお、色違いの虫がいた。探したら、赤色、青色、桃色の全部で5色いた。
ヒーロー戦隊かよ。でも、ちょっと、カッコイイ。
いかん、探索に集中しよう。
しばらく行くと、あれはサトウキビか。
昔映画で見たことがある。“ざわわ”で有名なさとうきび畑の唄なんてのもあるな。
近づくと1本が長いのに驚いた。5m以上はある。
映画では主人公より高かったが、ここのように見上げると上が見えなくなるくらい高かったかな?
ダンジョンだから仕方ないか。
そして、サトウキビの上層部のほうに黒い虫が何匹もいた。あれが、サトウキビの天敵だろう。
【鑑定】
種族:クロアマオオアリ
レベル8
色が黒く、甘いものが好物。集団行動する。
見た目は蟻だが1匹の大きさが50cmくらいある。恐い。
これから、蟻をみたら踏まないよう気をつけよう。
サトウキビは抵抗しないんだな。揺れて蟻を振り落そうとしているが。
あれ、サトウキビを食べていた蟻が、ぽとぽと落ちてきた。
サトウキビがどや顔しているのは気のせいだろうか。
【鑑定】
種族:オオシオキビ
レベル5
姿はオオサトウキビに似ているが、ミネラルを含む。
ん、オオシオキビ?
じゃ、蟻が食べているのは。
【鑑定】
種族:オオサトウキビ
レベル5
姿はオオシオキビに似ているが、ショ糖を含む。
サトウキビ魔物2種類いた。鑑定しないと見分けられない。
どうやら落ちてきた蟻は『サトウ』と『シオ』間違え食べて死んだらしい。
死んだ蟻は全部で48匹か。
アイドルグループのAK〇48ならず、ARI48か。
だめだ、探索に集中できない。
今日は3階の『メタすら』倒してレベル上げして帰ろう。
あっこら、レオが蟻を食べ始めた。
すると、ライヤも蟻のお尻の部分あたりをかじり始めた。
お前たちは、アリクイか。
ライオンだろう。
『『パパ、あま~い』』
お笑い芸人のような口調で言ったが、甘いだと。
しかし、蟻のままだけに、ありのまま食べる気にはなれない。
そうだ、解体ナイフを使ってみよう。
他の蟻を解体ナイフで突き刺すと、光の粒子になり、その後には黒い膜のようなものに覆われているボール状のものがドロップアイテムした。
死んでいる蟻すべてをドロップアイテムにして収納し持ち帰った。
「!!!甘い!!!」
甘いしか言えない、特上の甘味。
サトウキビから砂糖と考えていたが、はちみつのような黒糖のような、蟻の蜜、美味だ。
いつのまにか、母さんが横にいて「これは使える」といいながら、なめていた。
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