婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン

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エミリアが部屋を去った後、私は空になったカップをそそくさと片付けた。
明日も早いのでそろそろ寝よう。

「大丈夫、全部上手くいく」

いつものおまじないを言って、棚の上の写真に目を移す。
幼少期の私とアリアが写っている写真だ。

戦争孤児である私は、五歳の時、この屋敷に来た。
そこで出会ったのが、当時四歳のアリアだった。

私はまだ戦争で受けた心の傷が癒えていなくて、引きこもりがちだった。
しかしアリアは私の部屋を毎日のように訪れては、扉の外から話しかけてきた。

最初は鬱陶しく思っていた私も、次第にアリアに言葉を返すようになっていった。

「あれから、色んなことがあったね」

写真を撫でながら、私は微笑む。
部屋の灯りを消してベッドに入ると、アリアとの思い出を胸に瞼を閉じた。

アリアは私にはないものをたくさん持っていた。
立ち向かう勇気や、優れた頭脳や身体能力。
私なんて使用人の仕事を覚えるのに精いっぱいで、毎日のようにミスをして落ち込んでいた。

だけど、それと同じくらいアリアは私を励ましてくれた。
一回だけ聞いたことがある。
どうしてそんなに私に構うの?

するとアリアは満面の笑みで答えた。

『クロエ、あなたのことが好きだからよ』

ああ、そっか。
そんな単純な理由でいいんだ。
衝撃が胸を貫いた。

アリアは私におまじないを教えてくれた。
『大丈夫、全部上手くいく』。
彼女自身毎日のようにそう呟いているのだとか。

アリアとの楽しい日々はあっという間に過ぎていった。
それに呼応するように、使用人としてのスキルも上がっていって、仕事に自信が持てるようになっていった。

こんな日々が永遠に続いて欲しいと願った。
大丈夫、全部上手くいく。

しかしアリアが貴族学園に入学して、私たちの関係にヒビが入った。
彼女にエミリアという親友が出来たのだ。

アリアは学園から帰宅するなり、私にエミリアの話ばかりする。
エミリアの髪型や挙動が可愛いとか、話が面白いとか、今度遊ぶ約束までしているとも言われた。

私には見せたことのないような笑顔で、彼女はエミリアを語る。
アリアにはきっと分からないのだろう、私の心がズキズキと痛んでいることは。

……私は瞼を開けると、真っ暗な天井を睨む。
そしてあのおまじないを口にした。

「大丈夫、全部上手くいく」

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