26 / 33
2章
15
しおりを挟む
「それは……必要なことだと思ったからです」
「なに」
「この国は、少しずつ衰退を始めております。魔物の襲撃に国民の出生率の減少。このままではこの国の未来は明るくないかと」
「それで聖杯を使ったと」
「は」
この国の未来のために聖杯を使ったというのは、本当だろうか。
ただ、それがどうして聖女を召喚することになったのか。
「聖女が召喚されれば、この国の未来は明るくなると」
「聖女には国の周辺を浄化し、清浄にする力があります。ですから聖女の存在は必要です。神の加護もあり、この国の運も上がると言われております」
「わかった。お前たちの言い分は理解できる。しかし、ならば何故王族の許可を得なかった。なぜ自分たちの独断で聖杯を持ちだし、使用した。聞かなくても分かる。お前たちは、王族よりも自分たちの方が地位が上と思っているんだろう」
王様の言葉に教会のおっさんどもが、ざわついた。焦っているのが一発で分かる。
「そ、そんなことは……」
「今まで、教会だけに任せていたのが悪かったのだ。これからは王族が聖女の身柄を預かる。それでよいな」
「そ、それはっ!困ります!聖女は教会の象徴!聖女のいない教会など、他にありませぬ!」
「では、我が国が初ということになるな」
「王様!」
王様に抗議して、教会のおっさんたちが詰め寄ろうとするも兵士たちに止められている。なんだか空気がピリピリしてきた。よほど聖女が教会から離れるのがイヤらしい。だったら、もう少し扱いを考えたらどうなんだろう。私への接し方はずいぶんと雑だったけど。
それにしても仮にも聖女の話題に対して、私の意見はフル無視ですか。そうですか……。
「あの。少しよろしいですか?」
まさか私が発言するなんて思ってもみなかったのだろう。教会の人間も兵士の皆さんも驚いて私の方を向いた。王様だけが「なんだ」と静かに聞いてくれた。
「発言してもよろしいですか?」
「許す」
「じゃあ話させていただきます。私の扱いって結局どうなるんですか?聖女扱いではなくて、悪魔?扱いになるんですか?」
「聖杯を使ってまで呼び出されたのであれば、強い存在なのは間違いないだろう」
「なるほど。じゃあ私は王様たちに付きます」
私の発言にまたしても教会のおっさんたちがざわついた。
悪魔だなんだと騒いでいたのに王様たちの付くのは嫌らしい。別にいいじゃない。どうせ帰れないんでしょう?だったら、とりあえずまともなことを言ってる方の陣営に付きたい。
「お前っ!」
「私を悪魔扱いしたのはそちらのほうですし、聖女としての力があるかは、まだ分かりませんがこの国で生活をしなくてはいけないらしいので。だったら、王様側につきたいです」
「ほぉ」
「聖女がどんなことをするかも分からないくせにお前に決定権があると思うな!誰がお前に教えると思う!?教会の人間以外に聖女の仕事が分かる人間などいるものかっ!ずっと聖女の世話をし、そばにいたのは私たちだっ!今さら王族の人間に口出しされては困るっ!」
「じゃあ分からなかったら聞きに行きます」
「なにをふざけたことを!誰がお前などに教えるものかっ!」
「なに」
「この国は、少しずつ衰退を始めております。魔物の襲撃に国民の出生率の減少。このままではこの国の未来は明るくないかと」
「それで聖杯を使ったと」
「は」
この国の未来のために聖杯を使ったというのは、本当だろうか。
ただ、それがどうして聖女を召喚することになったのか。
「聖女が召喚されれば、この国の未来は明るくなると」
「聖女には国の周辺を浄化し、清浄にする力があります。ですから聖女の存在は必要です。神の加護もあり、この国の運も上がると言われております」
「わかった。お前たちの言い分は理解できる。しかし、ならば何故王族の許可を得なかった。なぜ自分たちの独断で聖杯を持ちだし、使用した。聞かなくても分かる。お前たちは、王族よりも自分たちの方が地位が上と思っているんだろう」
王様の言葉に教会のおっさんどもが、ざわついた。焦っているのが一発で分かる。
「そ、そんなことは……」
「今まで、教会だけに任せていたのが悪かったのだ。これからは王族が聖女の身柄を預かる。それでよいな」
「そ、それはっ!困ります!聖女は教会の象徴!聖女のいない教会など、他にありませぬ!」
「では、我が国が初ということになるな」
「王様!」
王様に抗議して、教会のおっさんたちが詰め寄ろうとするも兵士たちに止められている。なんだか空気がピリピリしてきた。よほど聖女が教会から離れるのがイヤらしい。だったら、もう少し扱いを考えたらどうなんだろう。私への接し方はずいぶんと雑だったけど。
それにしても仮にも聖女の話題に対して、私の意見はフル無視ですか。そうですか……。
「あの。少しよろしいですか?」
まさか私が発言するなんて思ってもみなかったのだろう。教会の人間も兵士の皆さんも驚いて私の方を向いた。王様だけが「なんだ」と静かに聞いてくれた。
「発言してもよろしいですか?」
「許す」
「じゃあ話させていただきます。私の扱いって結局どうなるんですか?聖女扱いではなくて、悪魔?扱いになるんですか?」
「聖杯を使ってまで呼び出されたのであれば、強い存在なのは間違いないだろう」
「なるほど。じゃあ私は王様たちに付きます」
私の発言にまたしても教会のおっさんたちがざわついた。
悪魔だなんだと騒いでいたのに王様たちの付くのは嫌らしい。別にいいじゃない。どうせ帰れないんでしょう?だったら、とりあえずまともなことを言ってる方の陣営に付きたい。
「お前っ!」
「私を悪魔扱いしたのはそちらのほうですし、聖女としての力があるかは、まだ分かりませんがこの国で生活をしなくてはいけないらしいので。だったら、王様側につきたいです」
「ほぉ」
「聖女がどんなことをするかも分からないくせにお前に決定権があると思うな!誰がお前に教えると思う!?教会の人間以外に聖女の仕事が分かる人間などいるものかっ!ずっと聖女の世話をし、そばにいたのは私たちだっ!今さら王族の人間に口出しされては困るっ!」
「じゃあ分からなかったら聞きに行きます」
「なにをふざけたことを!誰がお前などに教えるものかっ!」
530
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
【完結】聖女と結婚するのに婚約者の姉が邪魔!?姉は精霊の愛し子ですよ?
つくも茄子
ファンタジー
聖女と恋に落ちた王太子が姉を捨てた。
正式な婚約者である姉が邪魔になった模様。
姉を邪魔者扱いするのは王太子だけではない。
王家を始め、王国中が姉を排除し始めた。
ふざけんな!!!
姉は、ただの公爵令嬢じゃない!
「精霊の愛し子」だ!
国を繁栄させる存在だ!
怒り狂っているのは精霊達も同じ。
特に王太子!
お前は姉と「約束」してるだろ!
何を勝手に反故してる!
「約束」という名の「契約」を破っておいてタダで済むとでも?
他サイトにも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる