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「ふむ。これはなかなか……」
「お気に召すものはありましたか」
「これなんか、なかなかうまい」
「ありがとうございます」
地竜に聖女たちが作った人工魔石を献上する日。
私と王子、それから複数の兵士が地竜のもとへ訪れていた。
地竜は国の魔石を食べることなく、むしろ鉱山の守りをしてくれると言ってくれた。
その言葉に喜んだのは、王子だった。
「では、これからも聖女たちに魔石を作らせます」
「いや、ちょっと待ってください」
「どうしたソニア」
自分たちの意見も聞かずに、このまま流されてしまっては困る。
「お試しで、私たちは人口の魔石を作っていましたが、その結果このまま続けるのは、私たちにとっては厳しいという意見が出ていまして」
「ほぉ」
地竜は、「それで?」と話の続きを促してくる。
王子は、お前正気か?みたいな顔で私を見てくるが、正気も正気だ。聖女は魔石づくりの機械じゃない。
「大変心苦しいのですが、地竜様の腹を満たす魔石作りをこれから続けるのは、少し難しいかと」
「それでは、私の腹はどこで満たせばいい」
「いやぁ。それはご自身で考えてくだされば…」
「鉱山の石を食えば、お前たちは、またうるさいだろうしな。ならば、住処を変えようか」
「え?」
その言葉に反応したのは、私だけではなく、この場にいる全員だった。
「住処を変えること出来るんですか?」
「当たり前だ。ドラゴンは確かに縄張り意識が高いが、この辺であれば、別に気にすることもない。ほかのところに移る。それでいいだろう」
「そうしてもらえるんであれば、こちらも助かります」
「駄目だっ!!!」
地竜と私の会話に飛び込むように王子が飛び出してきた。
「な、なんですか?」
「地竜よ。まだすぐに出ていくなんてことはないのでしょう?」
「まあな」
「ならば、あなたが望む人工魔石を用意させます。どうか、この国から出ていくのは考え直してくれませんか」
「はい?」
その言葉に納得できないのは、私だ。
なに勝手なこと言ってるんだろうか。
誰がその人工魔石を作ると思っているんだ。
あなたが勝手に決めていいことじゃないんだけど。
「ちょ、ちょっと待ってください。聖女たちは今回の魔石作りで、これ以上の作業は無理だって意見で一致してるんです。無理です!できません!それに地竜様が他の土地に行ってくれるなら」
「それが問題なのだっ!」
「っ!」
地竜は、ボリボリと私たちが用意した魔石を食べながら、私たちの会話をぼんやりと眺めている。
「地竜が他の土地にうつったら、この国の土地の加護もまたほかに移ってしまう!そうなればまた土地が飢えることになる。帝国に並ぶ国になるなど、夢のまた夢だ」
「帝国に並ぶって…それはそちらの都合でしょう」
「国の未来を案じるのは、私の役目だ。それで聖女の負担が増えようが、私の考えは変わらない」
「犠牲になれと?」
「この国の聖女ならば、喜ばしいことだろう」
「……」
国の聖女として身を削っても、決して国が答えるとは限らないことを私は知っている。
「納得いきません。それに聖女が魔石作りにかかり切りになれば、この国の守護はどうなりますか」
「地竜の加護もある。それに先代と連絡をとることが出来た」
「先代に国を守ってもらって、私たちは魔石を作り続けろと?いつまでですか?」
「それは……」
王子は、ちらりと地竜を見つめる。
地竜は、王子の視線など気にも留めずにわれ関せずといった様子で、魔石を食べ続けている。
この調子では、せっかく用意した石もすぐになくなりそうだ。
「それは私の知るところではないが」
「ゴールも見えないのに、続けろというのですか?それはもはや拷問ですよ」
「国のためだ。我慢してくれ」
お国のため、お国のため。
この国もまた国のために聖女に犠牲になれというのか。
「信じられない。無理です。地竜様。これはお試しです。私たちは無理です」
「この女の言葉を真に受けないでください。私たちは、きっとあなたの腹を満たして見せます」
「……好きにせよ。私は、この用意された分の働きはしよう」
「お気に召すものはありましたか」
「これなんか、なかなかうまい」
「ありがとうございます」
地竜に聖女たちが作った人工魔石を献上する日。
私と王子、それから複数の兵士が地竜のもとへ訪れていた。
地竜は国の魔石を食べることなく、むしろ鉱山の守りをしてくれると言ってくれた。
その言葉に喜んだのは、王子だった。
「では、これからも聖女たちに魔石を作らせます」
「いや、ちょっと待ってください」
「どうしたソニア」
自分たちの意見も聞かずに、このまま流されてしまっては困る。
「お試しで、私たちは人口の魔石を作っていましたが、その結果このまま続けるのは、私たちにとっては厳しいという意見が出ていまして」
「ほぉ」
地竜は、「それで?」と話の続きを促してくる。
王子は、お前正気か?みたいな顔で私を見てくるが、正気も正気だ。聖女は魔石づくりの機械じゃない。
「大変心苦しいのですが、地竜様の腹を満たす魔石作りをこれから続けるのは、少し難しいかと」
「それでは、私の腹はどこで満たせばいい」
「いやぁ。それはご自身で考えてくだされば…」
「鉱山の石を食えば、お前たちは、またうるさいだろうしな。ならば、住処を変えようか」
「え?」
その言葉に反応したのは、私だけではなく、この場にいる全員だった。
「住処を変えること出来るんですか?」
「当たり前だ。ドラゴンは確かに縄張り意識が高いが、この辺であれば、別に気にすることもない。ほかのところに移る。それでいいだろう」
「そうしてもらえるんであれば、こちらも助かります」
「駄目だっ!!!」
地竜と私の会話に飛び込むように王子が飛び出してきた。
「な、なんですか?」
「地竜よ。まだすぐに出ていくなんてことはないのでしょう?」
「まあな」
「ならば、あなたが望む人工魔石を用意させます。どうか、この国から出ていくのは考え直してくれませんか」
「はい?」
その言葉に納得できないのは、私だ。
なに勝手なこと言ってるんだろうか。
誰がその人工魔石を作ると思っているんだ。
あなたが勝手に決めていいことじゃないんだけど。
「ちょ、ちょっと待ってください。聖女たちは今回の魔石作りで、これ以上の作業は無理だって意見で一致してるんです。無理です!できません!それに地竜様が他の土地に行ってくれるなら」
「それが問題なのだっ!」
「っ!」
地竜は、ボリボリと私たちが用意した魔石を食べながら、私たちの会話をぼんやりと眺めている。
「地竜が他の土地にうつったら、この国の土地の加護もまたほかに移ってしまう!そうなればまた土地が飢えることになる。帝国に並ぶ国になるなど、夢のまた夢だ」
「帝国に並ぶって…それはそちらの都合でしょう」
「国の未来を案じるのは、私の役目だ。それで聖女の負担が増えようが、私の考えは変わらない」
「犠牲になれと?」
「この国の聖女ならば、喜ばしいことだろう」
「……」
国の聖女として身を削っても、決して国が答えるとは限らないことを私は知っている。
「納得いきません。それに聖女が魔石作りにかかり切りになれば、この国の守護はどうなりますか」
「地竜の加護もある。それに先代と連絡をとることが出来た」
「先代に国を守ってもらって、私たちは魔石を作り続けろと?いつまでですか?」
「それは……」
王子は、ちらりと地竜を見つめる。
地竜は、王子の視線など気にも留めずにわれ関せずといった様子で、魔石を食べ続けている。
この調子では、せっかく用意した石もすぐになくなりそうだ。
「それは私の知るところではないが」
「ゴールも見えないのに、続けろというのですか?それはもはや拷問ですよ」
「国のためだ。我慢してくれ」
お国のため、お国のため。
この国もまた国のために聖女に犠牲になれというのか。
「信じられない。無理です。地竜様。これはお試しです。私たちは無理です」
「この女の言葉を真に受けないでください。私たちは、きっとあなたの腹を満たして見せます」
「……好きにせよ。私は、この用意された分の働きはしよう」
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