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「おい。何をしている。早くついてこい」
「す、すみません…」
―いや、あなたの足、速すぎなんだって!!!
という叫びをこらえる。
こちとら、ぼんやりと考え事をしながら、だらだらした散歩が日課の女だぞ。
運動不足ゆえか、それともあの人が、単純に足が早いのか、小走りにならないと、追いつけない。
おまけにこの人の量に、私は大苦戦していた。
この大通りに歩いている人の数は、私が、住んでいた国でも祭りの時並みだ。つまり、めっちゃ人が多い!
何か祭りでもあんのか?って疑ってしまうくらい、通りに人があふれている。
私は大勢の人が歩いているところを歩くのが、苦手…というか慣れていないため、ただでさえ、案内の男の人の足の速さについていけていないのに、人の壁にぶつかって、なかなか前に進めない。
人にぶつかっては、「すみません」「あ、ごめんなさい」「あああ…本当に、すみま、すみません」なんて、もたもた謝りながら、歩いていては、男の人を見失ってしまうのも仕方ないと思う。
「女のエスコートが下手な奴だなぁ。もう少し、こっちを気遣う様子ぐらい見せろってんだ。こっちは、女と子どもと犬だぞ」
「わん」
「うう…人、多すぎ…酔った」
「大丈夫か?少し休もう」
「ごめんね…」
「仕方ないさ。国を出て、ずっと気を張り詰めてんだから、疲れてるのは、当然さ」
「わん」
「ありがと」
アスランから、水の入ったコップを受け取り、一口飲む。
疲れた。
こんなんで、この国で暮らしていけるのだろうか。
…そもそも認めてもらえるだろうか。世界樹を生やせるなんて、豪語しているけど、本当にアスランってそんなことできるのかなぁ。
「なんだ。その目、俺を疑ってるのか」
「ちょびっと」
「まぁ、しかたないか。今の俺はプリチーなおこちゃまの姿だからな」
私の言葉に気を悪くすることもなく、なぜか、むん。と胸を張うのが、アスランらしい。変に度量があるというか…器が大きいというか。
アスランの姿は、本当にどこからどう見ても子どもにしか見えないのに。
そのまま、ぼんやりと人が行き交う姿を見つめた。
たくさんの人が、自分の欲しいものを買っている。
自分たちに必要なものを。
私のお守り、ここだったら、売れるのかな?
「おい!なにを休んでいる!ボスが直々に会ってくれると言っているのに、それを待たせるなんて、お前たちは何様だ」
「神様だよ」
「はあ!?」
「ふっふふふ」
まさか男もこんな子供が、本当の神様だなんて、信じないだろう。
私だって、少し半信半疑だというのに。
「まったくあれだけ、普通の人間にはできないことをしてきたというのに。神様の奇跡とやらを見せてるってのに…なあ、ポン助」
「わふ」
もふもふと、ポン助の頭をなで、私はよっこいしょと重い腰を持ち上げるのだった。
「す、すみません…」
―いや、あなたの足、速すぎなんだって!!!
という叫びをこらえる。
こちとら、ぼんやりと考え事をしながら、だらだらした散歩が日課の女だぞ。
運動不足ゆえか、それともあの人が、単純に足が早いのか、小走りにならないと、追いつけない。
おまけにこの人の量に、私は大苦戦していた。
この大通りに歩いている人の数は、私が、住んでいた国でも祭りの時並みだ。つまり、めっちゃ人が多い!
何か祭りでもあんのか?って疑ってしまうくらい、通りに人があふれている。
私は大勢の人が歩いているところを歩くのが、苦手…というか慣れていないため、ただでさえ、案内の男の人の足の速さについていけていないのに、人の壁にぶつかって、なかなか前に進めない。
人にぶつかっては、「すみません」「あ、ごめんなさい」「あああ…本当に、すみま、すみません」なんて、もたもた謝りながら、歩いていては、男の人を見失ってしまうのも仕方ないと思う。
「女のエスコートが下手な奴だなぁ。もう少し、こっちを気遣う様子ぐらい見せろってんだ。こっちは、女と子どもと犬だぞ」
「わん」
「うう…人、多すぎ…酔った」
「大丈夫か?少し休もう」
「ごめんね…」
「仕方ないさ。国を出て、ずっと気を張り詰めてんだから、疲れてるのは、当然さ」
「わん」
「ありがと」
アスランから、水の入ったコップを受け取り、一口飲む。
疲れた。
こんなんで、この国で暮らしていけるのだろうか。
…そもそも認めてもらえるだろうか。世界樹を生やせるなんて、豪語しているけど、本当にアスランってそんなことできるのかなぁ。
「なんだ。その目、俺を疑ってるのか」
「ちょびっと」
「まぁ、しかたないか。今の俺はプリチーなおこちゃまの姿だからな」
私の言葉に気を悪くすることもなく、なぜか、むん。と胸を張うのが、アスランらしい。変に度量があるというか…器が大きいというか。
アスランの姿は、本当にどこからどう見ても子どもにしか見えないのに。
そのまま、ぼんやりと人が行き交う姿を見つめた。
たくさんの人が、自分の欲しいものを買っている。
自分たちに必要なものを。
私のお守り、ここだったら、売れるのかな?
「おい!なにを休んでいる!ボスが直々に会ってくれると言っているのに、それを待たせるなんて、お前たちは何様だ」
「神様だよ」
「はあ!?」
「ふっふふふ」
まさか男もこんな子供が、本当の神様だなんて、信じないだろう。
私だって、少し半信半疑だというのに。
「まったくあれだけ、普通の人間にはできないことをしてきたというのに。神様の奇跡とやらを見せてるってのに…なあ、ポン助」
「わふ」
もふもふと、ポン助の頭をなで、私はよっこいしょと重い腰を持ち上げるのだった。
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