出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁

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「お前は、国外追放だ!」
「はぁ」

別に構いませんが。
なんて、私が思っていると王子は分からないんでしょう。
どや顔?というのでしょうか。顔が、うっとおしい。
私が、この国を追い出され、困り果てると本気で思っているようです。

「頭を床に押し付け、―申し訳ございません。王子。あなたに逆らうような言葉と態度を悔い改め、あなたに身も心も捧げます。というのであれば、この私も考えないではない」
「いえ、結構です」
「結構?」
「ご心配なく。そんな無様をさらすような真似なんて死んでもやりません。大人しく追い出されてあげますよ」
「外には、魔物がいっぱいいるんだぞ!」
「はぁ。まぁ、そうですね」
「お前なんて、この国以外に居場所なんてあるわけないじゃないか!」
「どうでしょう」
「お前みたいな役立たずで!なんの仕事もしない聖女という肩書女がこの国以外で、住める国なんて存在しない!」
「どうでしょう」
「…ははーん。お前、さては知らないんだな。ほかの国ではな、普通の人間は『仕事』をしなくてはいけないんだ」
「……」

いや、馬鹿にしすぎじゃね?
私は、幼児か?

「仕事をしないと普通の人間は、お金をもらえないんだ。まぁ、私は別だが」
「いや、王子様も仕事はしてくださいよ」
「お金がもらえなくては、生活も出来ない。自給自足というものもあるそうだが、…それでも、最初はお金が入用だろう」
「……」

何の時間だ?これ。
一般常識の話を王子様直々にしてくれる教育テレビか?
いや、どうでもいい。内容もどうでもいい。

「はいはい。それで?追い出すんですか?追い出さないんですか?」
「お、おまえ~!私が、心配してやってるというのに…!」
「フィリップ。もうこんな女、早く追い出してやりましょうよ~」
「いや、しかし、もし、この国を追い出されて、死んでしまったら、かわいそうではないか…」

こいつにもかわいそうとか感情あったんだ…。
私には、それまでなんの関心もなかったくせに。
いざ、自分の手元から、なくなると思うと、急にもったいなく思っちゃうタイプ?
あぁ…そういえば、こいつの部屋、汚部屋だったわ。
家臣によく「物を拾ってこないでください!」って、怒られていたわ。
王子のくせして、「もったいない」「まだ使えるかも」「どこかで使うかも」とか言って、わけわかんないもの拾ってきては、置いているタイプの人間だったわ。
断捨離できない人間だったわ…。

って、私はゴミでもないし、本来は、使える人間なんだけどな。
ってか、私を追い出して困るのは、この国なんだけど。
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