6 / 59
6
しおりを挟む
小切手を渡そうとしてくるルドルフとその腕に引っ付く浮気女レイラとワイワイ騒ぐ取り巻き女たち、それと空気と化したロミオやらで廊下は、大騒ぎである。
「そんな女、ルドルフ様にふさわしくありません!私のほうがふさわしいわ!」
「レイラ様には、ロミオ様がいらっしゃるわ!それより私のほうが」
「何言ってんのよ、このブス!私のほうが家柄もいいですわ」
「あんたのほうがブスでしょうが!しかも家柄がいいですって?はっ!あんたの家は、家柄は良くても貧乏じゃない!ルドルフ様のお金目当てなのが、まるわかりなのよ!」
「うっさいブス!」
「ふざけるんじゃありませんことよ!」
名門貴族のお嬢様とは思えない言動にドン引きである。
女の性格は、どこも変わらないのね…。
周りに集まってきた女子たちにルドルフの相手をバトンタッチして、私は次の授業の教室に向かった。
教室に入ると、身近にあった椅子に座り、机に突っ伏した。
「あぁ…疲れたわ」
「お疲れ様」
「… … …」
さわやかな声が落ちてきた。
どうやら隣に先客がいたらしい。
思いがけない声の主に胃の腑が重くなる。ゆっくりと顔を上げる。
「疲れていたから、気づかなかったわ」
「そうなんだ」
アーサー・アンデス。
アンデス伯爵家の長子であり、この男もまた名門貴族の筆頭であり、もしも、私が庶民の学校に通っていたならば、一生私と話をすることもなかったであろう男である。
困ったように微笑むその顔は、相変わらず絵本から飛び出た王子様フェイス。
下げられた眉に細められた瞳が隠れるくらい色濃く長いまつげが縁どられ、アイライン要らずの目元は、女子の羨望である。この男の困った顔は、男女関係なく、庇護欲が湧き出し、もっとこの男を困らせたいという熱情にかき乱される…ともっぱらの噂である。
顔は確かにいい。だが、私にサディスティックめいた情欲は、わかない。
「どうしたのかな」
「珍しくあなたの取り巻きがいないのね」
この男の周りには、過保護なくらいの幼馴染やら、友人やらがいるのだが、今は、珍しいことに一人である。あの人たち、私が庶民だからと悪い虫扱いしてくるのだから、気分が悪い。そういうわけで、この男から直接何かをされた覚えはないが、印象は最悪。できれば関わりたくない人間ナンバースリーに入っている。
名門貴族の学校に庶民の敵は多いのである。
「うるさくならないうちに私は、別に場所にうつるわ」
「えっ」
特にあのうるさい幼馴染が来たら、厄介である。
小さいころから、一緒にいるからと束縛女の悪いところを煮詰めたような女なのである。
関わらなければ、特に害もない。ただし、関わったら最後、割とえげつないことをしてくる上に実家の権力を使って不祥事をもみ消してくるスーパー厄介害悪女トップに君臨している。
そういうわけで、私はとっととこの男のそばを離れたいのだが、私が席を離れた瞬間、手を握られた。
「どうして。行かないでよ」
勘弁してよ。
「そんな女、ルドルフ様にふさわしくありません!私のほうがふさわしいわ!」
「レイラ様には、ロミオ様がいらっしゃるわ!それより私のほうが」
「何言ってんのよ、このブス!私のほうが家柄もいいですわ」
「あんたのほうがブスでしょうが!しかも家柄がいいですって?はっ!あんたの家は、家柄は良くても貧乏じゃない!ルドルフ様のお金目当てなのが、まるわかりなのよ!」
「うっさいブス!」
「ふざけるんじゃありませんことよ!」
名門貴族のお嬢様とは思えない言動にドン引きである。
女の性格は、どこも変わらないのね…。
周りに集まってきた女子たちにルドルフの相手をバトンタッチして、私は次の授業の教室に向かった。
教室に入ると、身近にあった椅子に座り、机に突っ伏した。
「あぁ…疲れたわ」
「お疲れ様」
「… … …」
さわやかな声が落ちてきた。
どうやら隣に先客がいたらしい。
思いがけない声の主に胃の腑が重くなる。ゆっくりと顔を上げる。
「疲れていたから、気づかなかったわ」
「そうなんだ」
アーサー・アンデス。
アンデス伯爵家の長子であり、この男もまた名門貴族の筆頭であり、もしも、私が庶民の学校に通っていたならば、一生私と話をすることもなかったであろう男である。
困ったように微笑むその顔は、相変わらず絵本から飛び出た王子様フェイス。
下げられた眉に細められた瞳が隠れるくらい色濃く長いまつげが縁どられ、アイライン要らずの目元は、女子の羨望である。この男の困った顔は、男女関係なく、庇護欲が湧き出し、もっとこの男を困らせたいという熱情にかき乱される…ともっぱらの噂である。
顔は確かにいい。だが、私にサディスティックめいた情欲は、わかない。
「どうしたのかな」
「珍しくあなたの取り巻きがいないのね」
この男の周りには、過保護なくらいの幼馴染やら、友人やらがいるのだが、今は、珍しいことに一人である。あの人たち、私が庶民だからと悪い虫扱いしてくるのだから、気分が悪い。そういうわけで、この男から直接何かをされた覚えはないが、印象は最悪。できれば関わりたくない人間ナンバースリーに入っている。
名門貴族の学校に庶民の敵は多いのである。
「うるさくならないうちに私は、別に場所にうつるわ」
「えっ」
特にあのうるさい幼馴染が来たら、厄介である。
小さいころから、一緒にいるからと束縛女の悪いところを煮詰めたような女なのである。
関わらなければ、特に害もない。ただし、関わったら最後、割とえげつないことをしてくる上に実家の権力を使って不祥事をもみ消してくるスーパー厄介害悪女トップに君臨している。
そういうわけで、私はとっととこの男のそばを離れたいのだが、私が席を離れた瞬間、手を握られた。
「どうして。行かないでよ」
勘弁してよ。
362
あなたにおすすめの小説
地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!
日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」
学園のアイドル、マルスからの突然の告白。
憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。
「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」
親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。
「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」
9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました
柚木ゆず
恋愛
「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」
かつてわたしは孤児院で暮らしていて、姉妹のように育ったソリーヌという大切な人がいました。そんなソリーヌは突然孤児院を去ってしまい行方が分からなくなっていたのですが、街に買い物に出かけた際に9年ぶりの再会を果たしたのでした。
もう会えないと思っていた人に出会えて、わたしは本当に嬉しかったのですが――。現状を聞かれたため「とても幸せに暮らしています」と伝えると、ソリーヌは激しく怒りだしてしまったのでした。
「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です
希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」
卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。
「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」
私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
隣にある古い空き家に引っ越してきた人達は、10年前に縁を切った家族でした
柚木ゆず
恋愛
10年前――まだわたしが男爵令嬢リーリスだった頃のこと。お父様、お母様、妹は自分達が散財した穴埋めのため、当時住み込みで働いていた旧友の忘れ形見・オルズくんを悪趣味な貴族に高値で売ろうとしていました。
偶然それを知ったわたしはオルズくんを連れてお屋敷を去り、ジュリエットとガスパールと名を変え新たな人生を歩み始めたのでした。
そんなわたし達はその後ガスパールくんの努力のおかげで充実した日々を過ごしており、今日は新生活が10年目を迎えたお祝いをしていたのですが――その最中にお隣に引っ越してこられた人達が挨拶に来てくださり、そこで信じられない再会を果たすこととなるのでした。
「まだ気付かないのか!? 我々はお前の父であり母であり妹だ!!」
初対面だと思っていた方々は、かつてわたしの家族だった人達だったのです。
しかもそんな3人は、わたし達が気付けない程に老けてやつれてしまっていて――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
「君の回復魔法は痛い」と追放されたので、国を浄化するのをやめました
希羽
恋愛
「君の回復魔法は痛いから」と婚約破棄され、国外追放された聖女エレナ。しかし彼女の魔法は、呪いを根こそぎ消滅させる最強の聖なる焼却だった。国を見限って辺境で薬草カフェを開くと、その技術に惚れ込んだ伝説の竜王やフェンリルが常連になり、悠々自適なスローライフが始まる。
一方、エレナを追放した王国はパニックに陥っていた。新しく迎えた聖女の魔法は、ただ痛みを麻痺させるだけの「痛み止め」に過ぎず、国中に蔓延する呪いを防ぐことができなかったのだ。
原因不明の奇病、腐り落ちる騎士の腕、そして復活する魔王の封印。
「頼む、戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう遅い。
私の店は世界最強の竜王様が警備しているので、王家の使いだろうと門前払いです。
※本作は「小説家になろう」でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる