7 / 15
第六話「小鳥の安らぎは」
しおりを挟む
日が高いため、ブランド物のサングラスを掛けて運転する優兎。
助手席には美虎、後部座席に火の付いていない煙草を咥えた煉、風景をぼーっと見る西尾、簪を刺し直す胡蝶が乗っていた。
美虎は先程の胡蝶の姿が忘れられない。
(いつも温和な胡蝶姐さんがあんなに啖呵を切るなんて。私が頭なんて…それより強くなれるのかな)
「美虎嬢、大丈夫ですか?顔が赤いですけど」
信号待ちをしていて、助手席の美虎を見て心配そうな顔をした優兎が、熱を測ろうと、美虎が幼い頃にしたように無意識に美虎と額をくっつけた。
美虎は、突然視界に優兎の色素の薄い瞳がどアップになったことに驚き、優兎は自分の無意識の行動に驚いた。
「すみません、すみません、美虎嬢、申し訳ありません!」
「だだだ、大丈夫!熱、測ろうとしたんだよね!熱出たら、危ないもんね!」
互いに真っ赤になった2人の顔を見て、胡蝶は頭を抱え、
「恋煩いもここまで来ると、わっちらは何も出来んせん…」
煉は、照れくさそうに頭を掻き、
「美虎嬢も女なんすねぇ…」
西尾は全てを諦めたような顔で、
「優兎は気が弱すぎます」
その声も聞こえない程、2人の鼓動は耳元で高鳴っていたのだ。
(大丈夫、優兎は私の心配をしてくれたんだから…嫌じゃないけど……びっくりしたぁ!)
「優兎、気が変わった。焼肉屋だ」
実は、この車の中で1番地位が高い煉が、優兎に言い放った。
「…了解しました」
細く息を吐き、冷静になった優兎はハンドルを切ると、尚虎が気に入っていた焼肉屋へ向きを変えた。
馴染みの店は、商店街の外れにある。外れと言っても、店も新しいし、商店街で買い物をした客が一杯引っ掛けていく上、尚虎が豪快に組の者に肉を振る舞うため、尚虎が来ると、その店の肉が全て無くなるということもあった。
そのおかげか、店も順調に廻り、閉店することなく、十周年を迎えることが出来たそうだ。
「こんにちはー」
美虎が入り口で声をかけると、でっぷりと太った店長が調理場からヒョイ、と顔を出した。
「おお、美虎ちゃんじゃないか!」
「こんにちは、尚虎さんがお世話になりました」
「優兎くんじゃない、いらっしゃい!」
お盆を持った奥さんが後から入ってきた3人を見て、
「おお、見事に『小鳥遊組』が揃ったわね。奥の座敷がいいでしょ?胡蝶ちゃん、着物だけど、座れる?」
「心配いりんせん、わっちが足を開けても、こいつらの雄は反応しんせんわ」
それを聞いて、優兎、煉、西尾は苦笑した。事実だからだ。
「確かに、姐さんは色気より殺気ですからね」
「煉、炭火で焼いてやろうか?お前は筋ばかりで美味しくなさそうでありんすが」
ヘラヘラ笑う煉の頭を胡蝶が扇子でペシっと叩いた。
奥にある座敷に通され、胡蝶は着物を見事に開けて、胡座を掻いた。男たちは見慣れているのか平常心だが、綺麗な太ももまでが露わになって、1番関係ないはずの美虎はドキドキした。
食べる物を注文して、運転手の優兎は烏龍茶、美虎はコーラ、胡蝶と西尾、煉はビールを頼んだ。
注文すると、すぐに飲み物が来て、各自がゆっくりと飲み、息を吐いた。
「ねぇ、胡蝶姐さん」
「ん?」
アルコールで少し赤くなった顔で胡蝶が美虎の方を向く。顔が赤くても騙されてはいけない。胡蝶は酔った風にはなるが、悪酔いはしないという珍しい酒豪なのだ。
「なんでそんなに強いの?」
「わっちが?」
「さっき、男の人言い負かしてたじゃん。どうして、そんなに強くなったの?」
「そうじゃのう…」
もう一口呑んで、少し考えた後、胡蝶が言った。開いた胸元には蝶の刺青。彼女は一体何故、それを彫ろうと思ったのだろう。
「守りたい物と矜恃を、尚虎さんがくれたからじゃわいなぁ」
助手席には美虎、後部座席に火の付いていない煙草を咥えた煉、風景をぼーっと見る西尾、簪を刺し直す胡蝶が乗っていた。
美虎は先程の胡蝶の姿が忘れられない。
(いつも温和な胡蝶姐さんがあんなに啖呵を切るなんて。私が頭なんて…それより強くなれるのかな)
「美虎嬢、大丈夫ですか?顔が赤いですけど」
信号待ちをしていて、助手席の美虎を見て心配そうな顔をした優兎が、熱を測ろうと、美虎が幼い頃にしたように無意識に美虎と額をくっつけた。
美虎は、突然視界に優兎の色素の薄い瞳がどアップになったことに驚き、優兎は自分の無意識の行動に驚いた。
「すみません、すみません、美虎嬢、申し訳ありません!」
「だだだ、大丈夫!熱、測ろうとしたんだよね!熱出たら、危ないもんね!」
互いに真っ赤になった2人の顔を見て、胡蝶は頭を抱え、
「恋煩いもここまで来ると、わっちらは何も出来んせん…」
煉は、照れくさそうに頭を掻き、
「美虎嬢も女なんすねぇ…」
西尾は全てを諦めたような顔で、
「優兎は気が弱すぎます」
その声も聞こえない程、2人の鼓動は耳元で高鳴っていたのだ。
(大丈夫、優兎は私の心配をしてくれたんだから…嫌じゃないけど……びっくりしたぁ!)
「優兎、気が変わった。焼肉屋だ」
実は、この車の中で1番地位が高い煉が、優兎に言い放った。
「…了解しました」
細く息を吐き、冷静になった優兎はハンドルを切ると、尚虎が気に入っていた焼肉屋へ向きを変えた。
馴染みの店は、商店街の外れにある。外れと言っても、店も新しいし、商店街で買い物をした客が一杯引っ掛けていく上、尚虎が豪快に組の者に肉を振る舞うため、尚虎が来ると、その店の肉が全て無くなるということもあった。
そのおかげか、店も順調に廻り、閉店することなく、十周年を迎えることが出来たそうだ。
「こんにちはー」
美虎が入り口で声をかけると、でっぷりと太った店長が調理場からヒョイ、と顔を出した。
「おお、美虎ちゃんじゃないか!」
「こんにちは、尚虎さんがお世話になりました」
「優兎くんじゃない、いらっしゃい!」
お盆を持った奥さんが後から入ってきた3人を見て、
「おお、見事に『小鳥遊組』が揃ったわね。奥の座敷がいいでしょ?胡蝶ちゃん、着物だけど、座れる?」
「心配いりんせん、わっちが足を開けても、こいつらの雄は反応しんせんわ」
それを聞いて、優兎、煉、西尾は苦笑した。事実だからだ。
「確かに、姐さんは色気より殺気ですからね」
「煉、炭火で焼いてやろうか?お前は筋ばかりで美味しくなさそうでありんすが」
ヘラヘラ笑う煉の頭を胡蝶が扇子でペシっと叩いた。
奥にある座敷に通され、胡蝶は着物を見事に開けて、胡座を掻いた。男たちは見慣れているのか平常心だが、綺麗な太ももまでが露わになって、1番関係ないはずの美虎はドキドキした。
食べる物を注文して、運転手の優兎は烏龍茶、美虎はコーラ、胡蝶と西尾、煉はビールを頼んだ。
注文すると、すぐに飲み物が来て、各自がゆっくりと飲み、息を吐いた。
「ねぇ、胡蝶姐さん」
「ん?」
アルコールで少し赤くなった顔で胡蝶が美虎の方を向く。顔が赤くても騙されてはいけない。胡蝶は酔った風にはなるが、悪酔いはしないという珍しい酒豪なのだ。
「なんでそんなに強いの?」
「わっちが?」
「さっき、男の人言い負かしてたじゃん。どうして、そんなに強くなったの?」
「そうじゃのう…」
もう一口呑んで、少し考えた後、胡蝶が言った。開いた胸元には蝶の刺青。彼女は一体何故、それを彫ろうと思ったのだろう。
「守りたい物と矜恃を、尚虎さんがくれたからじゃわいなぁ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる