造花より綺麗な睡蓮を。

細雪あおい

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第五話「飛び立つ小鳥たち」

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 5人は、昼食を摂りに、一旦本部を出ることにした。
「車、とってきます」
 優兎が、車を動かそうと美虎の隣を離れた時。
「『小鳥遊組』の奴らだろ!親父が死んだのに、まだ集まっとるんか?」
 目つきが悪く、派手な柄シャツを着て、白いエナメルの靴を履いた「いかにも」というほど、どこかの組のもの男が因縁をつけてきた。
「黙っとれ、おっさん!イチャモンつけおって、喧嘩か?おぅ?」
 頭に血が昇りやすい煉が早速キレた。その後ろにはあきれ返っている西尾と、冷たい目を眇め、煙草の煙を吐く胡蝶が。
「俺らにはちゃんと、かしらがおるんじゃ。黙って道開けろや、カス!」
「なんじゃ、餓鬼がでしゃばんな!あの親父が死んで代わりの頭っつっても、大した玉じゃねぇだろう!」
「口出しすんなや、ボケェ!」
 まさに売り言葉に買い言葉である。
 美虎は、どうしたらいいか判らず、おろおろしていた。 
「…西尾、止められるかえ?」
 ふぅ、と細い息を吐いて胡蝶は隣の西尾に問うた。
「無理でしょうね。煉はキレたら地獄まで怒鳴りつけに行くようなやつですし」
 その間にも、どんどんヒートアップする喧嘩を見て、ため息をついた胡蝶が、タバコを携帯灰皿に捨て、
「おっさん、なんでしょう?わっちらと争うんでありんすか?」
 ニィと口角を上げて笑った。煉と言い争っていた男は下げずんだ目で見てくると、
「女がでしゃばってくんな!男の股で遊んでろ!」
 その一言が胡蝶がいつも他の組のやつらに言われている言葉だった。
 しかし、そいつらは知らないのだ。彼女はそれでダメージを負うどころか、燻っている火を地獄の業火のような怒りに変えてしまうことに。
「若い女を虐めるのは…」
 ここで血のように赤い唇でニヤリと笑い、
「てめぇのアレが世間を知らないガキだからじゃねぇですかい?」
 図星だったのか、顔を真っ赤にする男。だとしたらかわいそうなことをしたもんだ、と胡蝶が思っていると、
「だだだ、黙れ!お前みたいな売女!俺の親父に言えばすぐに…」
「ほぅ、男と遊んでればいい女に親父さんを連れてくるのかえ?親父さんも可哀想でありんすなぁ、部下が売女のような女の相手も出来んとは…その親父さんは大層床上手なんでありんしょう?部下にいい手本を見せてやれば教育の一環にもなりんすなぁ」
 形勢は完全に胡蝶が逆転して、相手の男が劣勢だ。
 額に脂汗をかいている男を、ゆっくりと自分の胸元から取り出した孔雀の扇子で口を隠しながら笑う胡蝶。煉も正常の状態に戻り、西尾と一緒にゆらゆらと煙草の煙を吹かしている。
「どうやら、わっちの勝ちでありんすねぇ、次に来る時はわっちにお前さんご自慢の床上手の親父さんを紹介してくんなんし。…あんたらの粗末なアレなんて喰いちぎってやるわ!」
 最後は、ドスの効いた低い声で怒鳴った。
 タイミングよく、優兎がベンツを事務所に横付けをして、運転席から顔を出すと、
「さっきから聞いてれば、ウチのモンになんか用でもあるか!?文句でもあるなら言えや、コラァ!」
 と、腹に響くような胡蝶とは違うドスの効いた低い声で怒鳴った。いつもの温厚な優兎ではなく、美虎は、ギャップに戸惑った。
「うううっさいわ、お前ら!次見たら、ただじゃすまねぇからな!」
 男はそうどもりながら逃げ口上をいうと、道にぺっと唾を吐いて去って行った。
 ベンツの運転席のドアを開けると、優兎が
「美虎嬢、大丈夫でしたか?」
 と、駆け寄った。
「大丈夫」
 何故か血が滾るような動悸がする。これが自分のいる世界なんだ、と思うと胸がドキドキと高鳴る。
「緊張したけど…」
 そこで、不敵にニヤリと笑い、
「胡蝶姐さんみたくなりたいな、って思った」
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