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1章 異世界に召喚されました

29話 ボーナスステージ

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「うん。どうしてこうなった」

 私が来た道を振り返り呻く。
 そう、今日も元気にレベル上げだー!とテントから出てダンジョンの階段を降りた……まではよかったのだが何故か消えたのだ。
 降りてきた階段が。

 うん。そりゃっもうまっさらに。

 おぉっぅぅNOぉぉぉぉぉ!?

 何故消えるし!?
 ゲームではこんな仕掛けなかったはずなんですけど!?

「階段消えた」

「はい。消えてしまいましたね」

 と、リリとコロネが続く。

「ってなんだか二人とも冷静だけど!?これすごくやばくないか!?」

 私が言えば

「条件を満たさないと階段が現れないフロアなのかもしれません。
 ごく稀にありますから」

 と、コロネ。

「え?あるの?」

「はい。私の知る限りでも3ヶ所ほど。
 ほとんどのダンジョンはそのフロアの敵を全て倒せばまた階段が見えるようになります」

「あー、あるんだ。あるならいいんだけどさ」

 と、私が胸をなでおろしていると。

「ネコ それより大変 すごい強そうな敵 いっぱいこっちに向かってる」

 リリの一言で再びその場が固まるのだった。

 △▲△

 私はリリの言葉に早速スキル【魔力察知】を発動させ――固まる。
 このフロア。全ての敵がレベル900台なのだ。

 きゅ、きゅーひゃく?

 私の頬が引き攣る。

 え、5の次って6だよね!?
 普通500レベルのボス部屋の次は600レベルのボス部屋じゃね!?
 なんで500の次が900かな!?
 常識は覆すためにあるとか、そういう発想ですか!?そうですか!?

 いや、900なのは100歩譲ってまだいい。
 
 それより問題なのは、全ての敵が私達に向かって突進してきてるっぽいこと。

 おぉぉぉぉぉ!?

 私はすぐさまトラップの設置にとりかかる。
 うん。ムリムリムリムリ。
 レベル788で900の相手しろとか無理ゲー!!

 や、レベル200で1200の相手しようとした時より希望はあるけど!
 今回数が半端じゃない!

 魔力察知から察するにこのダンジョンはかなり長い一本道で、すでに私に向かっている大量のモンスターは半分くらいまできている。

 私はすぐさま部屋中に糸を張り巡らし、トラップのスキルを発動する。
  スキルで設置した糸はレベル補正関係なしになるので、私が糸を解くまでは部屋に設置されたままだ。
 モンスターに引きちぎられる心配はない。
 うまくやれば相手が高レベルモンスターでも十分やれる。

「リリとコロネは絶対そこから動くなよっ!!」

 リリとコロネを守るように
 何重にも罠を設置しているその時。

 ズドドドドドドド

 こちらに向かってきた集団の先頭が見え始める。
 見た目は巨大な牛が、ものすごい数でこちらに突っ込んできているのだ。
 
 うおおおお!?こえぇぇぇぇぇ!?

 牛たちは何の躊躇もなく、こちらにツッコミ。

 そして

「ぴぎぃっ!!」

 先頭集団が悲鳴をあげた。うん。そりゃもう部屋中に糸張り巡らしてるからね…。
 トラップで設置した糸はレベル補正関係なしにダメージを与える。
 そのため

「ぷごぉぉ!??」「ぴぎゃぁぁ!?」「ぶぅふぅぅ!?」

 前の牛集団が後ろの牛集団に押される感じで糸に引きちぎられていく。
 そう、いうなればトコロテン方式。

 ザシュ。ブシュ。ベシャ。

 嫌な音をたてて細切れになっていく牛。それなのに後ろの牛たちは気づいていないのか突進をやめない。
 
 結果。

「ぷぎぃぃぃ!!」「ぐぴぃぃぃ!!」

 後ろの牛に押されて前の方の牛から順番にきれいにミンチにされていく。

 うおーなにこの苦行!?私は牛ミンチをみてなきゃいけないの!?
 飛び交う悲鳴と怒号。そして次々できあがるミンチの牛。
  そして馬鹿なのか前の牛をひたすら押して、殺戮していく後ろの牛さんたち。

 ミンチ牛はしばらくすると蒸発して宝箱へと変貌していく。

 な、なんだこのシュールな情景は。

「ど、どういった状況でしょうか……」

「さぁ……」

 私たちはその光景をただ唖然と眺めるのだった。


△▲△

「ふぅ 宝箱 回収終了」

 リリが満足気に額の汗を拭う。

 すでに牛たちは私達が倒したのでその姿はない。
 まぁ、倒したといっても後ろの方にいた牛数匹だけだが。
 勝手に物凄い数の牛が自滅してくれたおかげで、私たちのレベルは物凄い事になっている。

「さーて。せっかくだから宝箱の中身も確認していこうか?」

 私がウキウキで宝箱を開け始めると、一瞬リリの困惑したような思考が伝わり――

『ネコ コロネ リリ達の事見てる人 見つけた』

 と、唐突に会話を念話にきりかえ真剣に言う。ただその一方で興味ありげに宝箱を覗き込んでいる。

『え?』

 思わず私が手を止めるが

『ネコ 手 止めないで 向こうに気づかれる』

 私はリリに言われて、慌てて宝箱開けを再開した。

『それってつまり、私たちを盗見してる人を見つけたってこと?
 どこにいるの?』

【並行思念】のスキルを使用して、宝箱を開けつつ鑑定スキルを使用するフリをしながら私が問う。

『そう でもここにいない ずっと遠く
 リリ なぜか 視てる感じられるようになった』

『え?なんで急に?』

『もともとホワイトドラゴンは神の伝い手ともいわれ、そういった遠視や念話、魔力感知などに優れた種族と聞きます。
 レベルが上がったおかげで、こちらを視ている者の魔力が察知できるようになったのかもしれません』

 ドロップ品を感慨深げに覗き込みながらコロネが言う。

『たぶん 視てる人の魔力に辿って 逆に視る事可能
 ネコとコロネ、二人に精神繋いで映像を見せたまま つなげても大丈夫?』

『可能なのでしょうか?』

『うん できると 思う』

『では一度リリ様が見て理解したものを猫様に転送してください。
 同じ事のように思えますが、精神に与える影響が大幅に違いますから。
 精神世界に耐性のない人間種の猫様には直接の映像転写はきついかと思います』

『うん!わかった!』

『それと確認をしたいのですが 相手に気付かれた場合リリ様や猫様にダメージが行くことはないのでしょうか?』

『それは大丈夫 視るだけで お互いダメージ与える事できない
 ばれたら通信 切れるだけ』

『それなら大丈夫かと思いますが……猫様どうします?』

『もちろん視る!!』

 私はきっぱり即答で答えるのだった。
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