【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

文字の大きさ
170 / 187
4.最終章

6.断罪

しおりを挟む
「ふっふっふっふ!!うちのコロネに手をだした事を牢屋の中から後悔するがいい!!」

 謁見の間で。
 テオドールに断罪されて、兵士に牢屋送りにされている貴族の背を見ながら猫が悪役めいたセリフを投げかける。

「相変わらずお前は容赦がないな。
 最近一日罪状を読み上げるだけで終わっている気がするのだが」

 今日何人目になるかわからぬ牢屋送りにテオドールがジト目で猫を見る。

「それだけうちのコロネに手出ししてた馬鹿が多いということだろう?
 コロネに嫌がらせしたやつは神の力と持ちうる限りのコネと権力と金を使って、どん底まで突き落としてやる!」

 ふっふっふと気味の悪い笑を浮かべて猫の目がキラリと光る。
 
「お前だけは敵に回したくないな」
 
 と、ドン引きするテオドールと

「いちいち「うちの」と付けるのはやめていただきたいのですが。
 誤解されます」

 と、テオドールの隣で突っ込むコロネ。

 実際、ゼンベルを捕まえてからの猫の快進撃は凄まじく。
 元々ゼンベルを捕まえる時の手法も、猫だからこそできた事だ。
 この領土に裏切られれば防衛面で困るなどといえば、魔道具で大量に暗黒戦士達を召喚し、その地に向かわせた。
 食料面で困るなどといえば、時間の進みがはやくなる罠スキルで、農作物を一気に育て大量生産したり、土魔法で一気に水路や農地を開拓し、王都の農地を広げ整備したり。
 魔物の肉や羽なども、魔窟と言われる人間ではとても立ち入れない場所に押し入り、大量に持ち込んだりもした。
 裏の組織とつながっているなどといえば、裏の組織ごとぶっ潰し、職人がいなくなって困るなどの問題も、これまでで手に入れた金で買収し、たちどころに解決してしまうのだ。
 
 いままでは、悪事を働いているのはわかってはいるがこの人物を捕まえれば●●が困るため捕まえられないという案件を、片っ端からスキルと神力と財力で解決してしまう。

 そのおかげでテオドールは罪人を裁き放題なのだが……。

「今日からお前が魔王と名乗っても俺は驚かないぞ」

 テオドールがため息をつけば

「魔王は腹黒3号だから却下!」
 
 猫が速攻で意味不明なツッコミでかえす。

「意味がよくわからん。
 しかし、おかげで大分やりやすくなったのは確かだな。
 これで自由に人材を揃える事ができる」

 と、テオドールが笑を浮かべた。
 今まで国の要職についていた人物はほぼゼンベルの息のかかった人物だったため、テオドールは本当に神輿にしかすぎず、帝国に関する決定権などほとんどなかった。
 だが、猫が暴れ回ったおかげで、ゼンベル派の貴族はほとんど牢送りになり、様子見を決め込んでいた他の派閥の貴族はテオドールにしっぽを振るようになったのだ。
 皇帝直属の騎士団として集められた大神の力をもった者たちも実質はゼンベルの騎士団のようなものだった。
 猫のおかげで、名実ともにテオドールが指揮を振れるようになり、実権を握ったといってもいい。

「にしても、今日は流石に疲れた。ここまでにしておこう」

 と、テオドールが言えば

「よし、今日の仕事はこれで終わりだよな!
 コロネ帰ろう!夕飯つくらないと!」

 待ってましたと言わんばかりに猫がガッツポーズをとった。

「お前はそんな事までやってるのか……
 平民の夫婦ではあるまいし、もう嫌がらせされることもないのだから専属の料理人でも雇えばよかろう。
 それくらいの金はこちらからだすぞ?」

 以前ならコロネが人を雇ってもゼンベルの嫌がらせですぐ辞めてしまったが、いまはコロネに手を出そうなどという者は誰もいない。
 雇ってすぐ辞めたがるということもないだろう。
 
「何を言う!?体調管理は愛を込めた手料理と相場が決まってるんだ!」

 何故かハイテンションで言う猫に

「……だから、どうして貴方はそう、恥ずかしいセリフを真顔で言えるのでしょうか……」

 コロネが目頭を抑えた。

「いや、そういう意味じゃなくて!?こう……なんていうかノリ?」

 慌てまくる猫に

「お前ら、惚気けなら余所でやれ余所で」
 
 追い払うかのようにテオドールが手で払いのける仕草をする。

「うおーーなんか違うーーー!?」

 猫の絶叫が謁見の間に響くのだった。



 △▲△

「……ですが、テオドールの言うとおりです。食事まで貴方が作っているのでは負担が貴方ばかりにいきます。
 食事くらいは私がつくるか、人を雇いましょう」

 城からの帰り道、コロネが猫にそう提案した。
 よく整備された街道にいまはコロネと猫の二人しか歩いていない。

「コロネが作るって……料理つくれたか?」

「いえ、必要なら習います。
 しかし分量通り作業すればいいのですから、調合とかわりません。
 すぐに覚えられるかと」

「甘いなコロネ!料理はそんな簡単なものじゃない!」

「そうでしょうか?」

「そうだ!大事なのはたっぷりの愛情だ!」

「……今日の貴方はテンションがおかしいですね」

 コロネがため息をつく。

「うん?そうか?いつもこんな感じだと思ってたけど」

「……愛情ですか」

 言ってコロネは猫の横顔を見上げた。

 ――わかっている。その愛情は自分にではなく未来の自分に注がれた物だということを。
 猫と出会ってからもう4ヶ月。自分がこの青年に惹かれていることは自分でも自覚していた。
 それが恋慕の情なのか、友情なのか、自分を庇護してくれる者への愛情なのか自分自身でもよくわからない。
 さすがに肉体関係を持てるかと聞かれればそれは無理だが、出来る事ならずっとこの関係でいたいと望んでしまう。

 けれど、彼が注いでいる愛情は自分にではなく未来の自分なのだ。

 嫉妬対象が未来の自分というわけのわからない状況にコロネは苦笑いをした。
 自分ならいいのではないかと思う気持ちと、それは別人なのではないのかという気持ちとで揺れている。

「コロネ、どうした?」

「いえ、少し考え事をしていました。
 一つ聞いてもいいでしょうか?」

「うん?」

「未来の私はどんな人物なのでしょうか?」

「うーん。そうだな。今のコロネとあまり雰囲気は変わらないけど……」

 猫の言葉に少しほっとする。これでまったく雰囲気まで違うと言われれば、それは自分ではない。

 急に猫にコロネは抱き寄せられ、腰に手をあて引き寄せられると

「未来のコロネの方が筋肉質かな?」

 と、真顔で言われる。

「……その……前から気になってはいたのですが。
 未来の私と貴方は……そういった関係なのでしょうか?」

「そういった関係?」

「抱き合う関係というか……その……」

 コロネが顔を赤くして視線をそらすと、猫は慌てて手を離し

「な!?ない!!それはない!!男同士だぞ!?それだとホモだろ!!」

 真剣に否定する。
 そんな猫にコロネはハァーとため息をついて

「男色家という設定を忘れてますよ」

「は!?しまった!?ハメラレタっ!!!
 ってかもう、とっくに嘘だと気づいてたくせハメルとかコロネひでぇ!」

 猫がじたばたすれば、コロネは

「貴方は表情にでやすいですからね」

 と微笑んだ。

「くっそー。みんなに言われるんだけどそれ!
 くそっ決めた!今日から顔に出さない人間になる!!
 ポーカーフェイスだポーカーフェイス!」

 と、ガッツポーズをとった。すでにその顔が悔しそうなので説得力は皆無なのだが本人は真剣だ。

 コロネは、私は表情がコロコロ変わる貴方が好きなのですけれど。と心の中で呟いた。
 未来のコロネならば口に出していえたのだろうが、まだそれが言えないところが彼の若さなのかもしれない。

 次の日、顔が見えないようにと甲冑をガチャガチャ着込み、城にいき、テオドールに何をふざけているのだと突っ込まれるのだが、それはまた別の話である。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...