【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

文字の大きさ
169 / 187
4.最終章

5. 人質

しおりを挟む
「改めて礼を言おう。お前のおかげで助かった」

 豪華な彫刻の彩られた部屋で、テオドールが猫に頭を下げる。
 テオドールと猫の座るテーブルには所狭しとワインやつまみが置かれていた。

「なんだよ。急に改まって」

「ゼンベルの処刑が決まったのでな。
 お前が居なければ、私はいまでもあいつの傀儡だっただろう」

 言ってテオドールはワイングラスを傾けた。

「何であいつの言うことなんか聞いてたんだ?テオドールらしくない」

「元々、自分を皇帝に据えたのがあの男だと言うのもあるが……」

 言ってテオドールが先に酔いつぶれて、ベットで寝てしまっているコロネに視線を移す。
 面白がって、猫とテオドールが酒を勧めたせいで、酒に弱かったコロネだけ先にダウンしてしまったらしい。

「……ああ、コロネを人質に取られていたわけか」

 猫もワイングラス片手にコロネに視線を移した。

「私が少しでも奴に気に入らない政策をとると、まるで見せしめのようにコロネに危害を加えてきてな。
 手も足もでなかった。
 エルフの国サウスヘルブでの地位を捨ててまで付いてきてくれた友を見捨てる事もできない」

「……お前らしいな。
 にしても、何でテオドールは皇帝になんかなろうと思ったんだ?
 あまり地位に固執しそうなタイプでもないのに」

「神託だ。巫女を通じて女神アルテナの神託を賜った。
 近い将来、人間の国より使者が来るので受けるようにと。
 それがゼンベルの使者だった」

「ああ。なるほど」

「神託でなければ、人間の国の皇帝など、断っていたさ。
 それで、お前はいつまでここに居れる?」

 唐突に尋ねられて、猫はワインを飲もうとした手を止めた。

「何の事だ?」

「隠す事もないだろう。お前が時々見せるコロネを見るときの表情で大体察しはついている。
 そう長い時間、護衛に付くつもりはないのだろう?」

「……自分はそんなに顔にでやすいか?」

「ああ、かなり」

 テオドールに言われ、猫が少ししょげた顔になり

「コロネを殺そうとしている奴を倒すまでだ。
 そいつがいつ仕掛けてくるかがわからない」

「お前が相手をしなければいけないほどの相手なのか?」

「ああ、自分でもかろうじて倒せるか倒せないかだ」

「……コロネはそんな奴に狙われているのか」

 言ってテオドールはコロネに視線を向けた。
 最近やっと笑顔を取り戻した友が、猫が去る事実を知った時どのような反応を示すだろうか?
 長い付き合いゆえ、テオドールはコロネが猫にそれなりの感情を抱いているということはなんとなく察する事ができる。
 だからこそ、別れがそう遠い未来ではないという事実を彼に告げるのがはばかられた。

「……倒した後も、そのままここに居る事はできないのか?」

 テオドールの言葉に猫が困った顔になり

「ああ、無理だ。
 詳しくは話せないけど」

 言って、猫もうつむいた。

「――そうか」

 テオドールもそのまま押し黙る。
 
 本音を言えば、猫もこのままずっとコロネの側にいてやりたいという感情がないわけではない。
 むしろ、いてやりたい。
 これから彼に待ち受ける未来がどんなに辛いものなのか知っている。
 異界の神々に征服され、弾圧され仲間が殺される絶望的な未来――それにコロネはこれから立ち向かって行かなければならないのだ。
 未来のコロネに比べると、精神的にか弱い過去のコロネにそれは残酷な事のように思える。

 それでも魔王に念を押されている。
 楓の魂をもつものが、再び生まれてきて、その転生体と会ってしまったら、魂が二人とも滅び、世界に多大な影響を及ぼすと。
 本来この時代にいるはずの楓の魂が転生してくるのは、そう遠い未来じゃない。
 それまでにコロネを殺そうとして、この時代にきたエルギフォスの魂を倒さないと。

 恐らくオリジナルコロネの記憶を受け継いでいる魔王は自分とコロネがどんな形で出会い、別れたのか知っているのだろうが――。
 魔王も言いたいことだけを言うだけなので詳細は聞いていない。

 猫はそのまま大きなため息をついた。

 未来のコロネはエルギフォスのせいで、いまだ眠ったままで。
 この時代でエルギフォスを倒さなければ、未来のコロネを救えない。
 かといってエルギフォスを倒せば、今度は過去のコロネとの別れがまっている。

 立ち上がりベットでスヤスヤと眠るコロネの頭を撫でてやれば、感触がくすぐったいのか少し嬉しそうに微笑む。
 未来のコロネに比べると、ずっと細く、華奢なその身体は今にも折れてしまいそうで心配になる。

 せめて自分がいる間だけでも――コロネを守らないと。
 それに異界の女神達がこの世界を征服するのはもう少し先なのだ。
 少なくともテオドールが皇帝をしている60年間は――それなりに幸せにやっていたらしい。
 せめてその間だけでもコロネが住みやすい環境にしてやらないとな。

 なんとなく未来の方のコロネに会いたくなる。いま彼がこの場にいればなんと声をかけてくれるだろう?

 そんな事を考えながら、まだあどけなさの残る過去のコロネに視線をうつせば会ったころよりも安らかな寝顔に少しホッとする。

 「おやすみ。コロネ」

 そういって、猫はもう一度コロネの頭を撫でてやるのだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...