11 / 33
第10話 聖女いないと世界が成り立たないってやばくない?
しおりを挟む
※レティア視点※
「あまり驚いていませんね」
本来いたはずの部屋ではなく、ただどろどろとした黒と赤の模様の浮かぶ空間で、アレスが目を細めた。
魔族が好んで使う、現実世界から引き離されたあの世とこの世の狭間の隔離世界に入った状態に驚かない私に、アレスが怪訝な声をあげた。
彼の背中には魔族の羽、そして頭には角が生えている。
「はじめてじゃないから」
そう、魔族と戦うなんて向こうの世界で何回も経験してきた。別世界への隔離。魔族が好む戦場だ。彼らの力はここで増大するのだから。大神が同じなだけあって、魔族と神族の構造そのものは変わっていない。私の知識はこちらの世界でも通用することを確信する。
――それにしても。
結界の強度具合から、あまり高位の魔族ではないことは見て取れた。
中位魔族くらいとは踏んでいたが、彼の纏う魔力を見ると、下位の魔族だ。できれば強敵だと嬉しかったのだが……。
まぁ、私も本来の身体ではないので、いい勝負にはなるだろうが。
私の落ち着いた様子にアレスは目を細める。
「確かに――初めてではなさそうですね。それで、本当に話す気はないと?」
間合いをとるように構えて、アレスが問う。
「ええ、もちろん。それはそちらも同じでしょう? 魔族が神の子と偽って神官をやってるなんて滑稽だわ」
「では、仕方ありませんね。少し痛い目にあってもらいましょうか」
アレスがため息をついたあと――飛んだ。
私めがけてダッシュして手に隠し持っていた短剣で切り付けてくる。
が、私もそれを聖女の結界で受け止めた。
それを読んでいたようで、足でけり上げてくるが、それも私の聖女の結界でなぎ払う。
(こいつ面白い)
私はアレスの攻撃を結界でかわしつつ、防御にまわった。
私がこの身体で聖女の防御の結界を張れるのはせいぜいノート1冊分の大きさ。
その大きさの結界を同時に5か所が限界だ。
何度も試したので間違いない。
魔族は基本人間を見下している。そのため油断しまくって初手、ワープで背後に飛んで切りかかってくるパターンが多い。まぁ、普通の人間はその方法でほぼ確実に倒せるので間違ってはいないのだが。背後に魔法を放てるようにトラップを仕掛け構えていたのだが、読みをはずした。この身体で魔法トラップが仕掛けられるのは一方向が限界なので、前方に飛び掛かってこられたら、分が悪い。一番嫌だと思う戦い方をアレスはしてきたのだ。
(結界を張れるレベルの魔族なのに、ワープも使えない肉弾戦タイプってこと?……いや)
異空間への誘導は本当の低級魔族では出来ないはず。
なのに異空間への隔離ができたということは、魔力量も隠している可能性がある。
(私の世界の生粋の魔族なら人間ごときにそんな事はしない。人間を虫ほどの感覚で見ているからだ。この魔族は人間を油断してはいけない相手と認識してる。対等とまではいかなくても、人間という種族だからといって油断はしない)
アレスが短剣を投げつけてきて、それを避けると、再びそのナイフをワープさせて私に攻撃をしてきた。
同時に四本になり、四方からナイフが飛んでくる。私が結界で避けるたびナイフの本数が増えている。
私はそれを聖女の結界で防いだ。
(面白い、私が聖女の結界をどれだけ張れるか試してると見える、戦闘経験は不足してそうだけどセンスは悪くない)
ただ、彼の攻撃には一定の法則が見て取れた。リネアがいるであろう気配のする場所には攻撃してこないのだ。
(まさか気を使っている?)
私はアレスの攻撃を結界ではじいて、魔法でかなり後方に飛びのいた。
「一つ聞きたいんだけど、なんで本気をださないの?」
私が問うと、アレスもやれやれと肩をすくめた。
「貴方だって本気を出していないでしょう? 異世界の大賢者というのはどうやら本当のようですね。魔族の戦いを熟知した動きをしている。初手で貴方の背後に飛んでいたら、致命傷を食らって滅ぼされていたでしょう。もうこの世界では魔族など絶滅危惧種に等しいですから、その習性を熟知しているものはいないはず」
「やっぱり聞いてたんだ?」
異界の大賢者はリネアにしか話していない。
知っているということはリネアと私の会話を盗み聞きしていたのだろう。
「ええ、結界が張られていたので、魔法で聞くのは無理でしたので隣の部屋で物理的に」
……たしかに、私は魔法で魔族などに盗聴されないように防いでいた。
だがそれは魔道具による盗聴を防ぐもの。
あの部屋は防音ばっちりだったので物理的なものは油断していた。
おそらく聴力も人並みはずれているのだろう。人間では聞き取れないレベルの音をひろえると思っていい。
うん、ちょっと油断してた。
「……隣の部屋で聞き耳立てていたとか、想像すると間抜けね」
「何とでも言ってください。それで、もう一度聞かせていただきますが……。貴方は何故この世界にきたのですか?そしてどうやって?」
「聞いていたんでしょ? こっちこそ知りたいわよ。スリープ装置で寝ていたはずなのに異世界の知らない人の身体に入っていたんだから。貴方こそ何か知らない?」
私がやれやれとポーズをとって挑発してみせる。
「知りません、それに、本来ならこの世界に異世界人が来られるはずがないのですが。それがたとえ魂であっても」
「……?どういうこと?
確かに各世界を行き来するルートは複雑で普通の人間や中級程度の神族や魔族は無理でも高位の魔族や神族なら行き来可能よね?」
「ええ、だからこそです」
「だからこそ?」
「あなたもその少女の記憶を引き継いでいるなら知っているでしょう? この世界は200年前の戦いで、神族も魔族もほぼ絶滅状態です。他の世界の神族や魔族が侵略してきたら防ぎようがない」
そう言って、彼の前に球体のような映像が現れる。
おそらくこれがこの世界の姿なのだろう。
「それが故、我々はいま、神も魔族も互いに力を取り戻すまで停戦し、残った神族と魔族で侵入者が来ないように強固な結界を張る方に力を注いでいます」
「あー……、それで魔族が聖職者をやっているわけ?」
だから魔族が神殿に入っても神族は彼を排除しないわけか。
「そうです。我々魔族は確かに世界を滅亡に導くことが目的ですが、それはあくまでも自分たちの手で滅ぼす事に意味があります。他の世界の魔族に世界を滅ぼされるのは、神族との争いに敗れるよりも不名誉なことなのです」
そう、なぜだか知らないが大神は世界を作るとき、神族と魔族を作り出し、この二つの種族を争わせた。神は世界を守るため、魔族は世界を滅ぼすため。
彼らはこの使命を忠実に守る。束縛のない人間などよりも、大神のつくった使命を忠実に守らなければいけない神族と魔族の方が世界に縛られた存在といえるだろう。
「私達は貴方の想像する魔族と神族とは特性が異なります。我々は神族と魔族の中間という、存在になっています」
「中間の存在って……」
確かに魔族と神族の両方の気を感じるというわけのわからない状態を不思議に思ったが、彼らは世界の情勢によって神族にも魔族にもどちらにもなれるということなのだろうか?
……もしかしたら、魔族や神族の一方が極端に減ってしまったら、減ってしまった方を補うために種族が変更されるというのもあることを考慮に入れていいだろう。
「で、なんでそれを私に教えてくれるわけ?」
「その方が利益になると判断したからです。魔族と戦い慣れているというのは今の戦闘でわかりました。貴方は強い。魔族を敵対種族として決めて、排除にかかる可能性がある。それは私達も困ります。世界維持のためにこれ以上、神族も魔族も減らしたくありません。出来ることならこちらも事を荒立てたくない」
「なるほどね。これで合点がいったわ」
「合点……ですか?」
「そう、なんで聖女なんてくそシステムがあるか。もし結界維持が必要のないレベルで魔族が力を取り戻したらいつでも食料で人類をコントロールできる。違う?」
「……」
私のセリフにアレスが黙り込む。
まあ図星だったのだろう。食料を握っておけば、人類を混乱に陥れることが容易だ。神と魔族が力を取り戻した時、魔族側は有利になる。人々を好きなタイミングで混乱させるためにつくりあげた「聖女システム」という歪んだシステム。聖女の豊穣の実りの祈りをしなきゃ作物が実らないなんてくそシステムが世界の基準なわけがない。
「図星だったみたいね」
私が挑発するようににまあっと笑って見せるが
「……つまり、聖女が祈らなくても主食となる農作物が実る世界も存在するということですか?」
アレスに真面目に聞かれる。
「またまたとぼけちゃって★」
私が言うと、真剣な目で見つめてくるアレスに、
「え、まじで? このアホシステム真剣にやっているわけ?」
私は思わず聞き返すのだった。
「あまり驚いていませんね」
本来いたはずの部屋ではなく、ただどろどろとした黒と赤の模様の浮かぶ空間で、アレスが目を細めた。
魔族が好んで使う、現実世界から引き離されたあの世とこの世の狭間の隔離世界に入った状態に驚かない私に、アレスが怪訝な声をあげた。
彼の背中には魔族の羽、そして頭には角が生えている。
「はじめてじゃないから」
そう、魔族と戦うなんて向こうの世界で何回も経験してきた。別世界への隔離。魔族が好む戦場だ。彼らの力はここで増大するのだから。大神が同じなだけあって、魔族と神族の構造そのものは変わっていない。私の知識はこちらの世界でも通用することを確信する。
――それにしても。
結界の強度具合から、あまり高位の魔族ではないことは見て取れた。
中位魔族くらいとは踏んでいたが、彼の纏う魔力を見ると、下位の魔族だ。できれば強敵だと嬉しかったのだが……。
まぁ、私も本来の身体ではないので、いい勝負にはなるだろうが。
私の落ち着いた様子にアレスは目を細める。
「確かに――初めてではなさそうですね。それで、本当に話す気はないと?」
間合いをとるように構えて、アレスが問う。
「ええ、もちろん。それはそちらも同じでしょう? 魔族が神の子と偽って神官をやってるなんて滑稽だわ」
「では、仕方ありませんね。少し痛い目にあってもらいましょうか」
アレスがため息をついたあと――飛んだ。
私めがけてダッシュして手に隠し持っていた短剣で切り付けてくる。
が、私もそれを聖女の結界で受け止めた。
それを読んでいたようで、足でけり上げてくるが、それも私の聖女の結界でなぎ払う。
(こいつ面白い)
私はアレスの攻撃を結界でかわしつつ、防御にまわった。
私がこの身体で聖女の防御の結界を張れるのはせいぜいノート1冊分の大きさ。
その大きさの結界を同時に5か所が限界だ。
何度も試したので間違いない。
魔族は基本人間を見下している。そのため油断しまくって初手、ワープで背後に飛んで切りかかってくるパターンが多い。まぁ、普通の人間はその方法でほぼ確実に倒せるので間違ってはいないのだが。背後に魔法を放てるようにトラップを仕掛け構えていたのだが、読みをはずした。この身体で魔法トラップが仕掛けられるのは一方向が限界なので、前方に飛び掛かってこられたら、分が悪い。一番嫌だと思う戦い方をアレスはしてきたのだ。
(結界を張れるレベルの魔族なのに、ワープも使えない肉弾戦タイプってこと?……いや)
異空間への誘導は本当の低級魔族では出来ないはず。
なのに異空間への隔離ができたということは、魔力量も隠している可能性がある。
(私の世界の生粋の魔族なら人間ごときにそんな事はしない。人間を虫ほどの感覚で見ているからだ。この魔族は人間を油断してはいけない相手と認識してる。対等とまではいかなくても、人間という種族だからといって油断はしない)
アレスが短剣を投げつけてきて、それを避けると、再びそのナイフをワープさせて私に攻撃をしてきた。
同時に四本になり、四方からナイフが飛んでくる。私が結界で避けるたびナイフの本数が増えている。
私はそれを聖女の結界で防いだ。
(面白い、私が聖女の結界をどれだけ張れるか試してると見える、戦闘経験は不足してそうだけどセンスは悪くない)
ただ、彼の攻撃には一定の法則が見て取れた。リネアがいるであろう気配のする場所には攻撃してこないのだ。
(まさか気を使っている?)
私はアレスの攻撃を結界ではじいて、魔法でかなり後方に飛びのいた。
「一つ聞きたいんだけど、なんで本気をださないの?」
私が問うと、アレスもやれやれと肩をすくめた。
「貴方だって本気を出していないでしょう? 異世界の大賢者というのはどうやら本当のようですね。魔族の戦いを熟知した動きをしている。初手で貴方の背後に飛んでいたら、致命傷を食らって滅ぼされていたでしょう。もうこの世界では魔族など絶滅危惧種に等しいですから、その習性を熟知しているものはいないはず」
「やっぱり聞いてたんだ?」
異界の大賢者はリネアにしか話していない。
知っているということはリネアと私の会話を盗み聞きしていたのだろう。
「ええ、結界が張られていたので、魔法で聞くのは無理でしたので隣の部屋で物理的に」
……たしかに、私は魔法で魔族などに盗聴されないように防いでいた。
だがそれは魔道具による盗聴を防ぐもの。
あの部屋は防音ばっちりだったので物理的なものは油断していた。
おそらく聴力も人並みはずれているのだろう。人間では聞き取れないレベルの音をひろえると思っていい。
うん、ちょっと油断してた。
「……隣の部屋で聞き耳立てていたとか、想像すると間抜けね」
「何とでも言ってください。それで、もう一度聞かせていただきますが……。貴方は何故この世界にきたのですか?そしてどうやって?」
「聞いていたんでしょ? こっちこそ知りたいわよ。スリープ装置で寝ていたはずなのに異世界の知らない人の身体に入っていたんだから。貴方こそ何か知らない?」
私がやれやれとポーズをとって挑発してみせる。
「知りません、それに、本来ならこの世界に異世界人が来られるはずがないのですが。それがたとえ魂であっても」
「……?どういうこと?
確かに各世界を行き来するルートは複雑で普通の人間や中級程度の神族や魔族は無理でも高位の魔族や神族なら行き来可能よね?」
「ええ、だからこそです」
「だからこそ?」
「あなたもその少女の記憶を引き継いでいるなら知っているでしょう? この世界は200年前の戦いで、神族も魔族もほぼ絶滅状態です。他の世界の神族や魔族が侵略してきたら防ぎようがない」
そう言って、彼の前に球体のような映像が現れる。
おそらくこれがこの世界の姿なのだろう。
「それが故、我々はいま、神も魔族も互いに力を取り戻すまで停戦し、残った神族と魔族で侵入者が来ないように強固な結界を張る方に力を注いでいます」
「あー……、それで魔族が聖職者をやっているわけ?」
だから魔族が神殿に入っても神族は彼を排除しないわけか。
「そうです。我々魔族は確かに世界を滅亡に導くことが目的ですが、それはあくまでも自分たちの手で滅ぼす事に意味があります。他の世界の魔族に世界を滅ぼされるのは、神族との争いに敗れるよりも不名誉なことなのです」
そう、なぜだか知らないが大神は世界を作るとき、神族と魔族を作り出し、この二つの種族を争わせた。神は世界を守るため、魔族は世界を滅ぼすため。
彼らはこの使命を忠実に守る。束縛のない人間などよりも、大神のつくった使命を忠実に守らなければいけない神族と魔族の方が世界に縛られた存在といえるだろう。
「私達は貴方の想像する魔族と神族とは特性が異なります。我々は神族と魔族の中間という、存在になっています」
「中間の存在って……」
確かに魔族と神族の両方の気を感じるというわけのわからない状態を不思議に思ったが、彼らは世界の情勢によって神族にも魔族にもどちらにもなれるということなのだろうか?
……もしかしたら、魔族や神族の一方が極端に減ってしまったら、減ってしまった方を補うために種族が変更されるというのもあることを考慮に入れていいだろう。
「で、なんでそれを私に教えてくれるわけ?」
「その方が利益になると判断したからです。魔族と戦い慣れているというのは今の戦闘でわかりました。貴方は強い。魔族を敵対種族として決めて、排除にかかる可能性がある。それは私達も困ります。世界維持のためにこれ以上、神族も魔族も減らしたくありません。出来ることならこちらも事を荒立てたくない」
「なるほどね。これで合点がいったわ」
「合点……ですか?」
「そう、なんで聖女なんてくそシステムがあるか。もし結界維持が必要のないレベルで魔族が力を取り戻したらいつでも食料で人類をコントロールできる。違う?」
「……」
私のセリフにアレスが黙り込む。
まあ図星だったのだろう。食料を握っておけば、人類を混乱に陥れることが容易だ。神と魔族が力を取り戻した時、魔族側は有利になる。人々を好きなタイミングで混乱させるためにつくりあげた「聖女システム」という歪んだシステム。聖女の豊穣の実りの祈りをしなきゃ作物が実らないなんてくそシステムが世界の基準なわけがない。
「図星だったみたいね」
私が挑発するようににまあっと笑って見せるが
「……つまり、聖女が祈らなくても主食となる農作物が実る世界も存在するということですか?」
アレスに真面目に聞かれる。
「またまたとぼけちゃって★」
私が言うと、真剣な目で見つめてくるアレスに、
「え、まじで? このアホシステム真剣にやっているわけ?」
私は思わず聞き返すのだった。
76
あなたにおすすめの小説
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる