逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~

てんてんどんどん

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19話 買い取りましょう♡

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「剣闘士を買い取りたい、ですか」

 レティアの提案を受けたデーンがうめいた。皇妃関連の脅しだったため、もっと高い見返りを求められるかと思っていたが、思いもよらぬ方向での願いにデーンは思考を巡らす。
 剣闘士は確かに伝手がないと買えないが、裏組織に喧嘩を売ってまでやらなければいけないことだろうか?

「買い取ること自体は可能でしょう。ですが、貴方が指定した剣闘士はすでに試合が組まれております。賭けがすでに始まっているため、試合を中止することは不可能です。特に対戦相手が剣士オダです。通常の倍の賭け金が動いています。私の伝手を使っても、闘技場の試合を止めることはできません、買い取っても死体となって渡される可能性があります」

「別に試合を中止する必要はないわ。買い取れればいいの」

 向かいのソファに座った少女が足を組みなおして、答えた。

「では生死は問わないと?」

「剣闘士のスポンサーは、その剣闘士の装備を整えることができるわよね?」

 少女の問いに、デーンは内心うなずいた。

(なるほど魔法武器のお披露目か)

 剣闘士オダが強い理由に強力なスポンサーがついていることがある。
 闘技場では見込みのある剣闘士には有力スポンサーがつき、自らの所持する経済力を示すために剣闘士に高価な魔法武器などを装備させるのだ。貴族が趣味でスポンサーについたり、魔剣をつくる工房がスポンサーについたりとスポンサーがつく理由は様々だが、彼女もその部類なのだろう。

 今回の剣闘士オダの試合は5人抜きの試合だ。彼女の指定した剣闘士は、本番の前に殺される前座の剣闘士にすぎない。だが、前座の試合だとしても注目を浴びる試合。宣伝に使うなら効果的だろう。

「なるほど。わかりました。それでは今すぐ手配いたしましょう」

 デーンの返事に少女は満足そうにうなずくと、視線をデーンの後ろに視線を移した。
 デーンもつられて視線を移すと、そこには部屋の装飾として飾り用の剣が置いてある。
 あくまでもオブジェなので、剣の切れ味など期待できない武器だ。

「ついでだから、その剣をもらっていいかしら?」

 飾りの剣を指さして言う。

「え、ああ、かまいませんが」

「ありがとう」

 少女は嬉しそうに剣を受け取った。
 

***


「貴方を買ったレティアです」

 闘技場の一室。これから試合を開始する、ギルディスに割り当てられた部屋に通されたのは目だけを隠す仮面をつけた少女と、青年だった。
 青年の方は一目でわかる。髪色を青から黒に変えてはいるがギルディスが長年仕えていた女性の忘れ形見であり、現在仕えている第二皇子のウィルだ。

「貴方は……」

 ギルディスはウィルを見て言葉を飲んだ。ウィルの隣には奴隷商人がいるため、迂闊な事が言えない。ウィルが正体を隠している以上、ギルディスもそれに習うべきだろう。すぐに視線をレティアと名乗る少女に移す。

「私はレティア。武器商人ね。貴方が今からオダと戦うと聞いたから買い取ったの」

 少女はつかつかと歩み寄ってくる。

「これから死ぬのがわかっている奴隷をよく買いましたね」

 ギルディスが問う。そう、オダは強力なスポンサーがつくほどの強者だ。それにくらべてギルディスはもともと文官であり、弱くはないが、闘技場特化の戦い方に慣れた手練れの剣闘士とやりあえるほどではない。オダがパフォーマンスのために前座の弱い剣闘士として割り当てられただけだ。

「死ぬ?まさか。貴方はこれから英雄になるの」

 そう言って少女はにぃっと笑う。

「貴方の役目は試合でこの武器を宣伝すること」

 そう言って少女が一本の剣を渡した。ゴテゴテした装飾で、とても実用性があるとはいいにくい。見かけは部屋などに飾っておく装飾用の剣にしか見えない。

「この武器は?」

 短い剣を受け取り、ギルディスが問う。

「魔剣よ。念じれば長さも変わるし、魔力を纏っているから相手の魔法攻撃も防げる」

「そ、そんなすごい剣なのですか?」

 ギルディスがまじまじと見つめる。確かに手に取った途端、ねっとりとした感覚があり、魔力が全身を包むような錯覚を覚える。

「ええ、伸びろと念じれば伸びるし、剣に魔力を通すこともできる」

「使いこなせるでしょうか?」

 ギルディスは剣をまじまじと見つめて言う。
 いくら高度な機能をもっていたとしても、試合はもうすぐはじまってしまう。使い方がわからないと使いこなしようがない。

「大丈夫よ。貴方はいつも通り全力で戦えばいい。あとは剣が導いてくれるわ」

 少女はそう言って、ギルディスの手をとり、ウィンクしてみせた。
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