逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~

てんてんどんどん

文字の大きさ
25 / 33

25話 どうなってるの!?

しおりを挟む
(ふふふ。今回は大会議に出席できないわ。いい気味)

 カミラは枢機卿が部屋を出ていくのを見送りながら、口元を歪めた。
 回帰前の大会議では、リネアが東部・西部の聖女たちにまで称えられ、まさに主役だった。
 彼女の献身的な行動が讃えられ、神殿中が賞賛の声で満ちていたのだ。

(どうして下級貴族の娘が、みんなに慕われるのよ!)

 思い出すだけで腹が立つ。
 本来その光景は、正妻の子である自分こそふさわしいはずだった。
 それなのに、褒め称えられていたのは常にリネア――。

(今回は神殿に閉じ込めていじめ抜いたのだから、褒められることなんてないはず。
 各神殿からの評価なんて、絶対に与えさせない。正式な聖女としての出席はとめなきゃ)

 東部と西部の聖女は犬猿の仲。もしリネアを正式な聖女として出席させれば、再び「宣誓巫女」に選ばれてしまうかもしれない。

 豊穣祭最終日の祈りの儀式でカミラが力を示す――
 それが今世の彼女の目標だ。
 前世でリネアに奪われた全てを、今度は自分の手で取り戻すために。

***

「聖女リネア。ウィル皇子と面談した日、お二人で出かけたとか。どちらへ行かれたのですか?」

 皇都神殿。グレ枢機卿の管理する部屋での問いに、リネアは困ったようにもじもじと視線をそらした。

「仕来り通り、街を散策して帰りました。景色を見ていただけなので……正確な場所まではわかりません」

 以前はもっとはきはきとした印象だったが、今では虐げられたせいか、すっかり気弱な少女になっていた。
 その姿が、グレ枢機卿の歪んだ興味を刺激する。

(今日は打ち合わせだけのつもりだったが……)

 枢機卿はソファに座るリネアを、舐めるように見つめた。
 もともと女好きの男だ。特に、気弱な少女は好みのど真ん中。
 いまのリネアは、まさに理想の形だった。

(公爵家の娘だから手は出さなかったが、今は違う。
 皇妃やカミラにも疎まれている。手を出しても誰も庇わないだろう。
 ショックで部屋に籠もれば、会議にも出さずに済む……)

 そんな思惑が胸の奥に渦巻いた、その時――

 ガシャーン!!

 背後で、花瓶が砕け散る音が響いた。

「な、なんだ!? 暗殺者か!?」

 慌てて振り返るが、誰もいない。

「どういうことだ……? 聖女リネア――」

 振り向いた瞬間、そこにいたのは――

『よくも私を裏切ったわね……』

 リネアではなかった。
 かつて「付き巫女にしてやる」と甘い言葉で誘い、弄んで捨てた平民の聖女。
 その女、メリルとうり二つの姿がそこにあった。

***

『グレ枢機卿!! お話が違います!』

 悲痛な叫びが、遠い記憶の中から蘇る。
 平民の聖女メリル――貧しい家に生まれ、弱い力ながらも聖女に選ばれたことで、家族はようやく人並みの生活を送れていた。

 だが母が病に倒れ、治療には高価なポーションが必要だった。
 金のない彼女は、付き巫女の報酬に縋り、グレ枢機卿に懇願したのである。
 その代償として、彼の望むままに身体を差し出したのだ。

 なのに――。
 彼は金を積んだ貴族令嬢を選び、メリルを切り捨てた。

 母は死に、兄弟も病に倒れ、メリルは一人取り残される。
 神殿からポーションさえ支給されていれば、救えた命だった。

 絶望した彼女は、神殿の前で焼身自殺を図る。
 「グレ枢機卿も道連れに」と叫びながら。
 しかし護衛に阻まれ、彼だけが生き残った。

『絶対に地獄へ堕としてやる……』

 呪いの言葉を残し、炎の中で彼女は消えた。

***

 事件はもみ消され、真相を知るのは枢機卿と数人の側近だけ。
 それなのに、今、目の前に――

「ひ、ひぃ!! メリル!? なぜお前が!?」

『許さない……許さない……母と兄弟たちの恨み……』

 メリルはぶつぶつと呟きながら、椅子に座っていた。

「だ、誰か! 誰かいないのか!!」

 叫んだ瞬間、肩を揺さぶられ――目を覚ました。

「枢機卿っ! 大丈夫ですか!」

 目を開けると、アレスと神官たち、そして心配そうなリネアの顔があった。

「め、メリル!? メリルはどこへ!」

「メリル……? 何のことですか?」
 アレスが不思議そうに首を傾げる。

「突然泡を吹いて倒れたので心配しました。すぐに精密検査を」

 リネアが静かに言う。
 その瞳には、どこか――冷たい光が宿っていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

聖女を追放した国が滅びかけ、今さら戻ってこいは遅い

タマ マコト
ファンタジー
聖女リディアは国と民のために全てを捧げてきたのに、王太子ユリウスと伯爵令嬢エリシアの陰謀によって“無能”と断じられ、婚約も地位も奪われる。 さらに追放の夜、護衛に偽装した兵たちに命まで狙われ、雨の森で倒れ込む。 絶望の淵で彼女を救ったのは、隣国ノルディアの騎士団。 暖かな場所に運ばれたリディアは、初めて“聖女ではなく、一人の人間として扱われる優しさ”に触れ、自分がどれほど疲れ、傷ついていたかを思い知る。 そして彼女と祖国の運命は、この瞬間から静かにすれ違い始める。

婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」  婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。  婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。  私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。  もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。

王太子妃(仮)でしたが、聞いたこともない予言のせいで追放されました。ですから、今さら呼び戻されても困ります。

實藤圭
ファンタジー
王太子妃候補として、真摯に王子リオネルを愛し、支えてきたクラリス。 だが、王太子妃となるための儀式、婚礼の儀の当日、リオネルと聖女ミラによって、突如断罪され、婚約を破棄されてしまう。 原因は、教会に古くから伝わる「神託」に書かれた“災いの象徴”とは、まさにクラリスのことを指している予言であるとして告発されたためであった。 地位も名誉も奪われ、クラリスは、一人辺境へと身を寄せ、心静かに暮らしていくのだが…… これは、すべてを失った王太子妃(仮)が、己の誇りと歩みを取り戻し、歪められた“真実”と向き合うため、立ち上がる物語。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

大陸を散策する聖女と滅ぶ王国~婚約破棄は引き金~

鷲原ほの
ファンタジー
傲慢な王子と侯爵令嬢が、厳しく制約された聖女を解き放ってしまう婚約破棄騒動。 犠牲を強いてきた王国は傾き、されど転生者は異世界の不思議に目を輝かせるだけ。

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

処理中です...