逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~

てんてんどんどん

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第24話 絶対お願いしますね!(敵がいうと大体失敗フラグ)

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「まるで獲物を探すかのような目ですね」

 レティアの隣に立っているアレスがうめく。
 神殿には世界各地の聖女が大会議の日のため、続々と帝国の神殿に集まっている。
 これは3年に一度行われる神殿の行事で、帝都で豊穣祭が開かれる二ヶ月、各地に散らばる聖女が帝都の神殿に集まる。大会議が終わると、今度は各地の城下街で庶民たちの間で一ヶ月の間祭りが開かれるのだ。各地の聖女や神官の馬車が到着する様子を、レティアとアレスとリネアはレティアの部屋のバルコニーから眺めていた。
 聖女は帝国以外にも世界各地に存在しており、一番組織が大きいのがカミラが牛耳っている中央神殿だが、別大陸の東大陸と西大陸の実りを仕切っているそれぞれ別の聖女だ。カミラの牛耳っている中央神殿とは別の勢力で、中央の権力もあまりおよばない。神殿内にも複雑な派閥がある。

 レティアが何を企んでいるかは不明だがその歪な関係を断罪劇に利用するつもりなのだろう。

 アレスがジト目で睨むとレティアはふふっと笑う。

「復讐の舞台を彩るためには仕込みが必要よ。例えそれが無駄になったとしても手持ちのカードは多い方がいい。そのためにいろいろ種は蒔いておかないと。今日は大事な仕込みの日」

 そう言って舌なめずりするレティアにアレスは引き気味に頬を引きつらせた。
 レティアがどのようにカミラを断罪するのかは知らないが、やり方がえげつなさそうで、魔族のアレスでも若干引く。

(――それに)

 もしアレスがレティアに聞いた推測が正しいなら、カミラがリネアの力を奪った時、魔族が力を貸している。レティアの話では金色の瞳は悪魔との契約の証なのだという。それが本当なら、アレスが与り知らぬ魔族の勢力が存在することになる。
 それがアレス達同様、世界を維持するための第三世代の魔族なら問題ない。
 やり方の違いこそあれど、結界維持という使命は同じはずだ。
 問題なのは、本当の魔族。
 彼らは世界を滅ぼすことだけが目的であり、ごく稀にだが個体によっては手段を選ばない時がある。魔族によって考え方に違いはでるが、もしカミラに力を与えた魔族が「どの世界の魔族の力でも世界が滅びればいい」というタイプだった場合、アレス達第三世代の魔族と、相反する考えになる。

 最悪、その魔族が自らの主だった場合、優先順位は世界維持よりも、世界を滅ぼすになるのだ。

 結局はカミラと契約をしている魔族の正体を知るためにも、レティアの豊富な知識を得るためにも今はレティアと共に行動していたほうがいいだろう。

 豊穣をもたらすカミラを断罪する事に協力するのは若干気が引けるが、そこに魔族のよからぬ思惑が隠れている可能性が少しでもあるなら、レティアとともにカミラを潰した方がいい。
 それがアレス達、第三世代の魔族と協力する神族の出した結論だった。

「ところで、リネア、準備の方は大丈夫?」

 バルコニーから聖女たちの到着を見ながらレティアがリネアに視線を移す。

「はい!ギルディスさんと一緒に練習しました!」

 そう言ってリネアが、嬉しそうにガッツポーズをとる。

「それならよし。さて、今日は素敵な日になりそうね」


***


「それではグレ枢機卿。お願いしますね。リネアは絶対付き巫女のままだしてください。正式に聖女として出席させないように、絶対ですよ?」

 大神殿の衣装室でカミラは控えていたグレ枢機卿に声をかけた。
 部屋には今二人しかいなかった。

「はい。かしこまりました。にしても、リネアをそこまで排除する必要がありますかな?」

 銀髪の中年男性のグレが聞くと――ぴしりと空気が凍る。

「わ、わかりました、理由をつけて排除いたしましょう」

 と、グレ枢機卿はその場を取り繕うかのようにカミラに告げた。

「お願いしますね。グレ枢機卿」

 そう言ってカミラは目を細めた。

(にしても、聖女カミラはリネアに拘りすぎなのでは?)

 グレ枢機卿は心の中で悪態をつく。
 グレ枢機卿がカミラに尽くすのは次の教皇の座が欲しいからだ。
 神殿では枢機卿は中央に3人。西部・東部それぞれにも3人ずつ存在し、そのなかから教皇が選ばれる。豊穣の女神の再来といわれるカミラの推薦があれば教皇の地位はより近くなる。カミラ推しの皇妃からも援助を受けているため、グレ枢機卿はカミラには逆らえない。

 それでもあのような小娘に頭をさげなければいけないのはしゃくに障る。

 (リネアを会議にださないという手もあったが、なぜかリネアは西部と東部の神殿で評判がいいためはじめから出席させないわけにもいかない。付き巫女が落としどころだろう。それなのにカミラはなぜあんなに不満そうなんだ?)

 グレ枢機卿はそう思い歩きだした。

 とたん。

 ――ひたっ。ひたっ。

 背後から足音が聞こえる。

(誰かいるのか?人払いしてるはずだが)

 そう思い振り返ると―――そこには誰もいなかった。

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