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俺には下心がある
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しとしとと長雨が降り続いていた。
六月を前に早くも東京は梅雨入りをしていた。じっとりと肌にまとわりつく湿った空気が疲れた身に辛い。
新しい現場は入ったばかりの契約社員を早くも殺しにかかっている。今日も今日とて終電帰りを余儀なくされた。
傘を差して、家までの道のりを歩く。
ロータリー前のファミレスは早くも店じまいを始めている。駅から一本路地を入ればカラオケもネットカフェもない、閑静な住宅街が続く。
途中のコンビニで菓子パンばかり五個も買ってしまった。仕事上がりは無性に甘いものが食べたくなる。
歩いて五分ほどでアパートに着く。
木造二階建てのボロアパートは家賃の安さくらいしか取り柄がない。隣のテレビの音は余さず聞こえるし、二階の廊下を誰かが歩くとぐらぐらと揺れる。大きな地震が来た日には、積み木のようにパタリと倒れるに違いない。
階段下のポストに突っ込まれたダイレクトメールと郵便物の束を引き出して、中身を確認しながら二階に上がる。
階段上の電灯が点滅していた。
先週、廊下奥の電灯を換えてもらったばかりだというのに。あちらを替えればこちらが切れる。いい加減、大家に連絡するのも面倒だ。さっさとLEDに替えればいいものを。
「あの」
隣り近所十件先まで響きそうな、男の野太い悲鳴が木霊する。廊下の扉から誰も様子を伺いに来なかったのが不思議でならない。頭上にばかり気を取られて、廊下の暗がりに佇む人影に気付かなかった。
廊下には女性が立っていた。
より正しくは、女性らしき誰かだ。
頭のてっぺんからスニーカーのつま先までずぶ濡れで、顔には長い黒髪がべったりとまとわりついている。無地のTシャツにジーパンというありふれた姿だったが、濡れて張り付いた胸の膨らみだけが、彼女が女性であることを主張していた。
強張った顔と引け腰のままで凝視していると、彼女は腰を折って頭を下げた。
「驚かせてしまい、申し訳ありません」
上げた顔にはさらに髪の毛が張り付いて、もはや紫色の口唇くらいしか見えない。二度目の悲鳴を飲み込めたのは奇跡に近かった。
「こちらを、お返ししようと思って」
と、彼女が両手を前に差し出す。
その手に握られていたのは、いつぞや失くした財布だった。
どうして今頃といぶかしむ気持ちが態度に出たのか、彼女はまた腰を折った。
「先月、地元で拾いまして。ちょうど近くまで伺う用事があったものですから、直接と思ったのですが、予想外に時間がかかってしまいました。念のため中をあらためていただけると」
差し出された財布をこわごわと受け取った。
財布は記憶にあるより随分と薄汚れていた。裏と表には巨大なクリップで挟んだような線状の跡が二筋、くっきりと残っていた。
中のカード類は記憶にあるままだった。どのみち失くした時点ですぐに止めたので実害は無いし、返ってきたところで意味はない。現金は小銭がいくらかと、濡れてよれよれになった福沢諭吉と野口英世がうろんな瞳でこちらを見ていた。すでに無くしたものと思えば、ちょっとした臨時収入の気分だ。
「わざわざどうも」と、ぎこちなく頭を下げる。彼女もまた腰を折った。
正直に言って、不気味だった。
北海道で見つけた財布をわざわざ東京くんだりまで届けに来る意味が分からなかった。中身のことで揉める可能性だってあった。さっさと警察まで持っていけば面倒もなく済む話だろう。
にじみ出る警戒心に、彼女は微かに俯いた。
「それじゃあ、私はこれで」
そう言って、横を通り過ぎていこうとする。
「あの」
寂しげな後ろ姿に、思わず声をかけていた。
「良かったら、上がって行きませんか。だいぶ濡れているようですし」
彼女の思惑がどうあれ、財布を届けてくれたことは紛れも無い事実だ。全身濡れ鼠のままで帰すというのも寝覚めが悪い。せめて壱万壱千円分くらいの歓待をせねばバチがあたるというものだ。
彼女はしばし戸惑っていたようだが、「いいんですか」と、小声で尋ねてくる。
答える代わりに、鞄から鍵を出して家の戸を開けて招いた。
その日の晩、彼女はうちに泊まって行った。
それどころか、一週間たっても彼女はまだうちにいた。
熱を出して倒れたのだ。
長雨に当たったせいか、体はひどく冷えていて、顔色は真っ青、口唇は紫で、すぐにタオルを貸して風呂にも入れさせたが、上がってすぐ倒れるように眠り、翌朝には四十度の高熱を出して喘いでいた。
「お暇しないと」と言って無理に起き上がろうとする彼女を押しとどめて、慣れない看病に奔走すること二日、なんとか起き上がれるようになったところを近所の内科まで連れて行ったのが三日目の昼頃だった。
医者は過労と風邪だと言っていた。
彼女に家は近いのかと尋ねたが言いづらそうにしていたので、それ以上は聞かずにそのままうちで休ませることにした。
度々ご迷惑をおかけしますと彼女が力なく呟くので、今は気にせずしっかり休めと答えた。
身体が弱っている時は気も弱る。そんな時は誰かに温かく迎え入れてもらいたいものだ。
それからずっと、彼女はうちのベッドで横になっている。
始めの三日こそ仕事は休んだものの、配属されたばかりの現場だ、いつまでも休んではいられない。
四日目からは彼女に留守を任せることにした。
多少の不安を抱えつつ帰宅をすると、彼女の姿は印鑑通帳一式とともに消えていた、などとということもなく、病の身体をおして毎度玄関まで出迎えに来てくれた。「おかえりなさい」の言葉が意外なほど胸に染み入った。
そして昨夜、ようやく平熱まで下がった。
今日あたり何か話があるに違いない。
微かな緊張を胸に仕事から帰宅すると、鍵を挿して玄関の戸を開け放つ。
そこには三和土の向こうに三つ指ついて頭を下げた彼女の綺麗なつむじがあった。
・ ・ ・
かいつまんで言えば、彼女には帰る家が無いという。
東京に来た用事というのがまさにそれで、つい先だって家族を亡くし、他に身寄りもなく、遠い縁戚を頼って、着の身着のままやってきたという。
これからどうするつもりかと尋ねれば、
「お世話になったお礼をさせて下さい。ただ、今は手持ちがほとんどありませんので、身の回りのお世話くらいしかできることがありません。もしお邪魔であれば、かねての通り親戚の家を訪ねて、後日何がしかのお礼に参ります」
と、この耳が確かなら、このままここに居たいようなことを言う。
その親戚の家には置いてもらえそうなのかと聞けば「どうにかお願いしてみます」と頼りない答えが返ってくる。
いかにも胡乱なことだ。果たしてその話をどこまで信じて良いものか。
目の前の彼女は居ずまい正しく、育ちの良さは疑いようもなかった。
背はすらりと高く、肩揃えの黒い髪は血の気の戻った桜色の頬から白い首筋にさらりと流れる。すっきり通った鼻筋と、艶のある口唇と、瞳は切れ長の一重で、眼尻からまぶたのあたりにかけて、ほんのり紅が差している。現代の基準に照らせば万人受けする顔立ちではないが、一重まぶたに色気ありと常日頃から熱く語ってきた我が身には、まさにあつらえたような美女だ。
そんな美女がわざわざ北の大地から東京くんだりまで財布を届けにやってきて、ぜひここに置いてくれなどという。そんな出来事が事実、起こりうるのだろうか。考えうることは全て起こりうる、ありえないなどということはありえないと、かつての偉人は言う。だがそれを素直に信じられるほど、純真無垢な歳でもない。
しかし、とも思う。
三十路を過ぎたしがない契約社員の身、恋人もなく、養うべき家族もない。少しの友人とたまに酒を飲んで、愚痴を言い合い、くだを巻き、独りで生きて、きっと独りで死ぬ。この人生のどこかに、何か守るべきものがあるだろうか。
視線を伏せて待つ彼女に尋ねる。
「何か重大な問題を抱えてはいないか」
「何も持たない、ということ以外には何も」
「莫大な財産や、あるいは借金がないか」
「今、手持ちの物以外には何も持たず、また人から借りているものもありません」
「誰かに追われているということは」
「故郷の友人が私を訪ねることはあっても、他に私を探す人は誰も」
淀みない瞳で彼女は言い切った。
語った言葉の全てが真実とは限らないが、それを嘘だと思いたくない自分がいる。ならば答えはもう決まっているようなものだ。
「最後にひとつ、言わねばならぬ大事なことがある」
「はい、なんなりと」
「俺には下心があるが、それでも構わないだろうか」
彼女は一瞬、驚いた顔をしてから、かすかに頬を染めて微笑んだ。
六月を前に早くも東京は梅雨入りをしていた。じっとりと肌にまとわりつく湿った空気が疲れた身に辛い。
新しい現場は入ったばかりの契約社員を早くも殺しにかかっている。今日も今日とて終電帰りを余儀なくされた。
傘を差して、家までの道のりを歩く。
ロータリー前のファミレスは早くも店じまいを始めている。駅から一本路地を入ればカラオケもネットカフェもない、閑静な住宅街が続く。
途中のコンビニで菓子パンばかり五個も買ってしまった。仕事上がりは無性に甘いものが食べたくなる。
歩いて五分ほどでアパートに着く。
木造二階建てのボロアパートは家賃の安さくらいしか取り柄がない。隣のテレビの音は余さず聞こえるし、二階の廊下を誰かが歩くとぐらぐらと揺れる。大きな地震が来た日には、積み木のようにパタリと倒れるに違いない。
階段下のポストに突っ込まれたダイレクトメールと郵便物の束を引き出して、中身を確認しながら二階に上がる。
階段上の電灯が点滅していた。
先週、廊下奥の電灯を換えてもらったばかりだというのに。あちらを替えればこちらが切れる。いい加減、大家に連絡するのも面倒だ。さっさとLEDに替えればいいものを。
「あの」
隣り近所十件先まで響きそうな、男の野太い悲鳴が木霊する。廊下の扉から誰も様子を伺いに来なかったのが不思議でならない。頭上にばかり気を取られて、廊下の暗がりに佇む人影に気付かなかった。
廊下には女性が立っていた。
より正しくは、女性らしき誰かだ。
頭のてっぺんからスニーカーのつま先までずぶ濡れで、顔には長い黒髪がべったりとまとわりついている。無地のTシャツにジーパンというありふれた姿だったが、濡れて張り付いた胸の膨らみだけが、彼女が女性であることを主張していた。
強張った顔と引け腰のままで凝視していると、彼女は腰を折って頭を下げた。
「驚かせてしまい、申し訳ありません」
上げた顔にはさらに髪の毛が張り付いて、もはや紫色の口唇くらいしか見えない。二度目の悲鳴を飲み込めたのは奇跡に近かった。
「こちらを、お返ししようと思って」
と、彼女が両手を前に差し出す。
その手に握られていたのは、いつぞや失くした財布だった。
どうして今頃といぶかしむ気持ちが態度に出たのか、彼女はまた腰を折った。
「先月、地元で拾いまして。ちょうど近くまで伺う用事があったものですから、直接と思ったのですが、予想外に時間がかかってしまいました。念のため中をあらためていただけると」
差し出された財布をこわごわと受け取った。
財布は記憶にあるより随分と薄汚れていた。裏と表には巨大なクリップで挟んだような線状の跡が二筋、くっきりと残っていた。
中のカード類は記憶にあるままだった。どのみち失くした時点ですぐに止めたので実害は無いし、返ってきたところで意味はない。現金は小銭がいくらかと、濡れてよれよれになった福沢諭吉と野口英世がうろんな瞳でこちらを見ていた。すでに無くしたものと思えば、ちょっとした臨時収入の気分だ。
「わざわざどうも」と、ぎこちなく頭を下げる。彼女もまた腰を折った。
正直に言って、不気味だった。
北海道で見つけた財布をわざわざ東京くんだりまで届けに来る意味が分からなかった。中身のことで揉める可能性だってあった。さっさと警察まで持っていけば面倒もなく済む話だろう。
にじみ出る警戒心に、彼女は微かに俯いた。
「それじゃあ、私はこれで」
そう言って、横を通り過ぎていこうとする。
「あの」
寂しげな後ろ姿に、思わず声をかけていた。
「良かったら、上がって行きませんか。だいぶ濡れているようですし」
彼女の思惑がどうあれ、財布を届けてくれたことは紛れも無い事実だ。全身濡れ鼠のままで帰すというのも寝覚めが悪い。せめて壱万壱千円分くらいの歓待をせねばバチがあたるというものだ。
彼女はしばし戸惑っていたようだが、「いいんですか」と、小声で尋ねてくる。
答える代わりに、鞄から鍵を出して家の戸を開けて招いた。
その日の晩、彼女はうちに泊まって行った。
それどころか、一週間たっても彼女はまだうちにいた。
熱を出して倒れたのだ。
長雨に当たったせいか、体はひどく冷えていて、顔色は真っ青、口唇は紫で、すぐにタオルを貸して風呂にも入れさせたが、上がってすぐ倒れるように眠り、翌朝には四十度の高熱を出して喘いでいた。
「お暇しないと」と言って無理に起き上がろうとする彼女を押しとどめて、慣れない看病に奔走すること二日、なんとか起き上がれるようになったところを近所の内科まで連れて行ったのが三日目の昼頃だった。
医者は過労と風邪だと言っていた。
彼女に家は近いのかと尋ねたが言いづらそうにしていたので、それ以上は聞かずにそのままうちで休ませることにした。
度々ご迷惑をおかけしますと彼女が力なく呟くので、今は気にせずしっかり休めと答えた。
身体が弱っている時は気も弱る。そんな時は誰かに温かく迎え入れてもらいたいものだ。
それからずっと、彼女はうちのベッドで横になっている。
始めの三日こそ仕事は休んだものの、配属されたばかりの現場だ、いつまでも休んではいられない。
四日目からは彼女に留守を任せることにした。
多少の不安を抱えつつ帰宅をすると、彼女の姿は印鑑通帳一式とともに消えていた、などとということもなく、病の身体をおして毎度玄関まで出迎えに来てくれた。「おかえりなさい」の言葉が意外なほど胸に染み入った。
そして昨夜、ようやく平熱まで下がった。
今日あたり何か話があるに違いない。
微かな緊張を胸に仕事から帰宅すると、鍵を挿して玄関の戸を開け放つ。
そこには三和土の向こうに三つ指ついて頭を下げた彼女の綺麗なつむじがあった。
・ ・ ・
かいつまんで言えば、彼女には帰る家が無いという。
東京に来た用事というのがまさにそれで、つい先だって家族を亡くし、他に身寄りもなく、遠い縁戚を頼って、着の身着のままやってきたという。
これからどうするつもりかと尋ねれば、
「お世話になったお礼をさせて下さい。ただ、今は手持ちがほとんどありませんので、身の回りのお世話くらいしかできることがありません。もしお邪魔であれば、かねての通り親戚の家を訪ねて、後日何がしかのお礼に参ります」
と、この耳が確かなら、このままここに居たいようなことを言う。
その親戚の家には置いてもらえそうなのかと聞けば「どうにかお願いしてみます」と頼りない答えが返ってくる。
いかにも胡乱なことだ。果たしてその話をどこまで信じて良いものか。
目の前の彼女は居ずまい正しく、育ちの良さは疑いようもなかった。
背はすらりと高く、肩揃えの黒い髪は血の気の戻った桜色の頬から白い首筋にさらりと流れる。すっきり通った鼻筋と、艶のある口唇と、瞳は切れ長の一重で、眼尻からまぶたのあたりにかけて、ほんのり紅が差している。現代の基準に照らせば万人受けする顔立ちではないが、一重まぶたに色気ありと常日頃から熱く語ってきた我が身には、まさにあつらえたような美女だ。
そんな美女がわざわざ北の大地から東京くんだりまで財布を届けにやってきて、ぜひここに置いてくれなどという。そんな出来事が事実、起こりうるのだろうか。考えうることは全て起こりうる、ありえないなどということはありえないと、かつての偉人は言う。だがそれを素直に信じられるほど、純真無垢な歳でもない。
しかし、とも思う。
三十路を過ぎたしがない契約社員の身、恋人もなく、養うべき家族もない。少しの友人とたまに酒を飲んで、愚痴を言い合い、くだを巻き、独りで生きて、きっと独りで死ぬ。この人生のどこかに、何か守るべきものがあるだろうか。
視線を伏せて待つ彼女に尋ねる。
「何か重大な問題を抱えてはいないか」
「何も持たない、ということ以外には何も」
「莫大な財産や、あるいは借金がないか」
「今、手持ちの物以外には何も持たず、また人から借りているものもありません」
「誰かに追われているということは」
「故郷の友人が私を訪ねることはあっても、他に私を探す人は誰も」
淀みない瞳で彼女は言い切った。
語った言葉の全てが真実とは限らないが、それを嘘だと思いたくない自分がいる。ならば答えはもう決まっているようなものだ。
「最後にひとつ、言わねばならぬ大事なことがある」
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