ロゼの刻印

のあはむら

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交錯する影

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ゼヴァは地形を知り尽くしたかのように、木々の隙間を縫うように軽やかに進んでいく。

ルネはその後を追い、ローゼリアは無理やり引かれるように走らされる。
足場の悪い斜面を下り、倒木を飛び越え、息を乱しながらも進むしかなかった。
後方には、まだ捜索隊の気配が残っている。

森に響く犬の遠吠え。光が揺らめく——追跡は続いている。
ゼヴァは横目でルネを見やり、皮肉げに口を開いた。
「また無茶をしてくれたな、ルネ。そんな無計画な逃亡、見てるこっちが疲れる」
ルネは無表情に言葉を返すことなく、ただ前を見据えたまま走り続ける。

ゼヴァは軽く肩をすくめると、ふと足を緩め、ローゼリアに目を向けた。
灰色の瞳が、静かに彼女を射抜く。
その視線には、何の温度もなかった。ただ、冷たく、無遠慮に彼女を見定める。
「君が噂の“刻印の令嬢”か」
ゆっくりと、観察するように言葉を紡ぐ。
「思っていたより……弱くはなさそうだな」
ローゼリアは反射的にゼヴァを睨みつけた。だが、その視線を受け止めた彼は、まるで何かの反応を待つかのように冷笑を浮かべるだけだった。

何か言い返そうとしたが、喉の奥で言葉が詰まる。
この男は、ルネとはまた違う種類の危険を孕んでいる。

ルネが牙を剥く狼ならば、ゼヴァは静かに獲物を仕留める蛇。こちらが気づいた時には、すでに絡め取られている——そんな種類の恐怖を覚えた。

「さて、急ごうか。追っ手が迫っている」
ゼヴァはそう言うと、何事もなかったかのように前を向いた。
ローゼリアはその背中を見つめながら、奥歯を噛み締めるしかなかった。


逃亡を続けるルネ、ローゼリア、ゼヴァは、王都から離れた古びた地下避難所跡へと身を潜めた。

かつて戦時中に使用されていたこの場所は、今では朽ち果てた遺物に過ぎない。ひび割れた石壁、崩れかけた支柱、そして湿った空気に満ちた暗闇。

だが、彼らにとっては十分だった。
地図にも記されず、誰の記憶にも残らぬこの地下の廃墟は、追跡を逃れるには最適な隠れ家だった。
冷えた空間に足音が響く。

「……なんとも趣のある場所だな」
ゼヴァが皮肉げに呟く。

「使えりゃどこでもいい」
ルネは無造作に足元の瓦礫を蹴り飛ばしながら奥へ進んだ。
ローゼリアは湿った空気に思わず息を詰まらせる。石の壁には苔が這い、床にはかつての避難民が残したと思しき古い道具が散乱していた。

「……こんな場所に、どれだけの人が隠れていたのかしら」
ローゼリアは誰に言うでもなく呟く。
ルネは薄く笑うと、何気なく壁に手をついた。
「少なくとも、ここにいた連中は戦争が終わった時にはもう生きちゃいなかっただろうな」

ルネとローゼリアは、地下避難所のひんやりとした床に崩れるように座り込んだ。
長時間の逃亡と刻印による負担が、確実に二人の身体を蝕んでいた。

ゼヴァは無言のまま彼らを見下ろし、わずかに眉を寄せる。
「まったく……二人とも限界じゃないか」
そう呟くと、ルネの肩を無造作に掴み、強引に壁際へと寝かせた。

「……チッ」
ルネは不快げに舌打ちするが、抵抗する余力もないのか、そのままゼヴァにされるがままになる。

ローゼリアもまた、肩で息をしながら朦朧とする意識のまま壁に寄りかかった。
額に手を当てるが、手先の感覚が鈍く、冷えた石の感触すら曖昧だった。

ゼヴァはルネの服を無造作に裂くと、その下に刻まれた刻印をじっと見つめた。
赤黒い紋様はまるで生きているかのように蠢き、微かに脈打っている。

「……なるほどな」
ゼヴァの瞳が、冷たい光を帯びる。

その目は、医師のそれだった。
いや——それ以上に、研究者の目だった。

ローゼリアはその視線に違和感を覚え、薄く開いた瞼越しにゼヴァの表情を見つめた。
しかし、今の彼女にはその違和感を言葉にする余裕すらなかった。

疲労と痛みが、彼女の思考を濁らせる。
刻印の熱が、まるで心臓そのものになったかのように脈打ち、意識を奪おうとする。

ゼヴァは無言のまま、淡々とした手つきで軟膏を取り出し紋様に塗り込む。
苦い匂いが鼻を刺し、ローゼリアは微かに顔をしかめた。
「……これでしばらくは持つ」
ゼヴァの声は感情の欠片もない。まるで道具を修理しているかのような手際だった。
ルネもまた、息を詰めながらも痛みを表に出さない。
ゼヴァは包帯を巻き終え、立ち上がると二人を見下ろすように言った。

「休め。お前たちの身体は限界に近い」
ローゼリアは反論しようとしたが、疲労と痛みがそれを許さなかった。
刻印の熱がじわじわと身体を蝕み、思考は次第に霧がかかったようにぼやけていく。
(こんな場所で……眠れるわけが……)
そう思いながらも、意識は容赦なく深い闇へと引きずり込まれていった。


不意に、息が詰まるほどの熱を感じた。

焼け焦げた匂い——乾いた血の臭い——皮膚を刺す炎の熱。

視界がぐらりと揺れ、次の瞬間には見知らぬ光景が目の前に広がっていた。

村が燃えている。
家々が崩れ、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。
誰かが泣いている。誰かが叫んでいる。

しかし、その中心にいる"少年"だけは——静かだった。
無表情で、何も言わず、ただそこに立ち尽くしていた。
まだ幼いはずのその姿は、不自然なほど動かず、ただ焦げた死体を見下ろしている。

何の感情もない瞳で——まるで、そこに広がる惨状が現実ではないかのように。
(……誰……?)
ローゼリアの思考がかき乱される。
しかし、次の瞬間、彼女はその少年の顔をはっきりと目にした。

——ルネ。

幼い頃のルネだった。
無感情に、焼け落ちた村を見下ろしていた少年。

自分の家族なのか、それとも知人なのか、血に染まった遺体を前にしても、彼は泣きもしなかった。

ただ、立っていた。

ローゼリアは息を詰まらせたまま、荒々しく目を覚ました。
全身が熱を帯び、額には冷や汗が滲んでいる。

——あれは、何だったのか。

視界がまだ定まらないまま、彼女は震える指先を握りしめた。

だが、そのとき——。

「っ……!」
今度はルネのほうが苦しみ始めた。
彼の身体がひきつれるように強張り、喉の奥で低くうめき声を上げる。
「え……?」
ローゼリアが声をかけるよりも早く、ルネの眉間に深い皺が寄る。
「……何だ、これ……」
微かに開いた唇から、低く掠れた声が漏れた。

彼の瞳の奥に、"別の景色"が映っていた。
それは——ローゼリアの記憶だった。


——豪奢な屋敷。

磨き上げられた大理石の廊下。
壁に飾られた名家の紋章。

広い屋敷には美しい装飾が施され、誰もが羨む世界だった。
だが、そこには"冷たい空気"が流れていた。

「お前は、我が家の誇りでなければならない」
低く響く父の声。
「感情を表に出すな。完璧であれ。汚点を残すな」
幼い少女は、じっとその言葉を受け止めるしかなかった。

決して背筋を曲げず、涙を流さず、求められる"理想の娘"であり続けること。
それが、彼女の"生きる意味"だった。
(私は家のために生きている。ただの飾りなのだ——)
無意識のうちに、自らに刻み込んでしまった呪い。


ルネは荒い息を吐きながら、ぎりぎりと歯を食いしばる。
意識が覚醒するにつれ、苛立ちが燃え上がる。

目の前にいるのはローゼリア。
なのに、頭の奥には"彼女の記憶"がこびりついていた。

息苦しいほどに整えられた屋敷、感情を押し殺すことを強いられた少女、冷え切った父の視線——
すべてが"他人の記憶"であるはずなのに、それはまるで、自分の過去のように焼き付いていた。

「……クソが」
ルネは舌打ちをしながら、ローゼリアを睨みつける。
まるで、敵意の対象を見極めるかのように。
「お前の記憶なんて、見たくなかった」
低く絞り出すような声だった。

ローゼリアもまた、目を見開き、ルネを睨み返す。
彼の言葉が、ひどく屈辱的に聞こえた。
「……私だって同じよ! あんたのことなんか、知りたくもない!」
怒りと嫌悪がぶつかり合う。
だが——それだけではない。
理解してしまった。
知りたくもなかった相手の過去を、痛みを、どうしようもなく"理解"してしまった。
この感覚が何よりも恐ろしかった。
憎むべき相手の絶望を、自分のもののように感じてしまう。
それが、どれほど残酷なことか——。

「……チッ」
ルネは視線を逸らし、ローゼリアは唇を噛みしめる。
ルネはローゼリアを睨みつけ、吐き捨てるように言った。
「お前の哀れみなんか必要ない」
言葉の端々に滲む苛立ち。
その目には拒絶と警戒が渦巻いていた。
まるで、それ以外の感情が入り込む隙を必死に塞ぐかのように。

「哀れみ?」
ローゼリアは鼻で笑った。
「勘違いしないで。私はただ、不快なだけよ。あんたの記憶なんて、知りたくもなかった」

互いに容赦のない言葉をぶつける。
怒りと嫌悪が剥き出しになり、張り詰めた空気が冷たい静寂を生み出す。

だが——。

その奥底にある"何か"を、二人とも決して認めようとしなかった。

相手の痛みを知るということ。
その意味の深さを、恐ろしさを、本能的に理解していたからだ。
「……チッ」
ルネは舌打ちをし、乱暴に視線を逸らす。
「寝ろ。無駄なことを考えるな。夜が明ければまた移動だ」
そう言い残し、彼は背を向けた。
まるで、この場にいること自体が不快であるかのように。
ローゼリアもまた、唇を噛みながら目を閉じる。

憎しみがある。
怒りもある。

それでも——"理解"してしまった。
この夜が明けても、その事実だけは、決して消えることはなかった。


翌朝、冷えた空気の中でローゼリアは目を覚ました。
昨夜の痛みが嘘のように引いている。
体を起こすと、ぼんやりとした頭で自分の手のひらを見つめた。

力が戻っている——ゼヴァの薬が効いたのだろう。
向かいの石壁にもたれていたルネも、昨日より明らかに容態が良くなっていた。
荒い息をしていたのが嘘のように、静かに眠っている。

「起きたか」

落ち着いた声が響いた。
ゼヴァが壁際に腰を下ろしながら、薬草を刻んでいる。
ローゼリアは彼の動きをじっと見つめた。
「……あなた、何者なの?」
ゼヴァは手を止め、ゆっくりと彼女を見やった。
灰色の瞳が、どこか試すように細められる。
「俺はただの便利屋だよ」
「"便利屋"が、こんな薬を調合できるとは思えないけれど?」
ゼヴァはわずかに微笑む。
それは嘲るようでもあり、何かを見透かすようでもあった。

「知りたいのか?」
「……知る必要があるなら」
ローゼリアは毅然とした声で言った。
だが、ゼヴァは彼女の反応を面白がるように笑い、手元の薬草をかき混ぜた。
「そんなに深く考えなくていいさ。ただ、俺は人を生かす方法も、殺す方法も知ってる。それだけのこと」
「……人を生かすことと、殺すことを同じように言わないで」
思わず睨みつけた。ローゼリアにはこの男を信用していいのか判断できずにいた。
彼は助けてくれた。だが、それが本当に"善意"によるものなのか——それは分からない。

「薬が効いたのなら、少しは感謝したらどうだ?」
ゼヴァはそう言いながら、手のひらに乾燥した薬草を乗せ、軽く指で砕く。
「礼は言うわ。でも、あなたが何を考えているのかは別問題よ」
ローゼリアは鋭い視線を向ける。
ゼヴァはその反応を楽しむように笑いながら、淡々と答えた。
「……まあ、俺はただの傍観者さ。ルネの相棒でもなければ、お前の味方でもない。ただ、俺が興味のある"もの"に関わってるから、こうして手を貸してるだけだ」
その言い方に、ローゼリアは小さく眉を寄せた。
「"もの"って……」
ゼヴァはローゼリアの胸元を一瞥する。

ローゼリアはゼヴァの視線を追いながら、じり、と唇を噛んだ。
彼の目には、まるで興味深い"標本"を観察するような冷たさがあった。

「……どうしてルネに協力しているの?」
問うと、ゼヴァは微笑んだ。だが、その笑みには微塵の温かみもない。
ただ、楽しげに——そして、どこか退屈そうに口を開く。
「正義感でもなければ、友情でもない」
指先で薬草を弄びながら、彼は淡々と言った。
「ただ、ルネの“理念”が俺には面白いと思えたからだ」
ローゼリアは眉をひそめる。
「面白い?」
「そう。彼のやり方は乱暴で、理に適っていないことも多いが……それでも、“生き残る”ことに関しては、徹底している」
ゼヴァは薬草の粉を掌で転がしながら、目を細める。
「それが、時に滑稽なほど必死で、時に誰よりも冷酷で、時に——」
彼は言葉を切り、じっとローゼリアを見つめた。
「……見ていて飽きないんだよ」
「そんな理由で、人に協力するもの?」
ローゼリアは納得できずに問い詰めようとした。
だが——。

「詮索するな」

冷たい声が、割り込んだ。
ルネだった。

彼は目を覚まし、鋭い眼差しをゼヴァとローゼリアの間に向けていた。
「お前には関係のないことだ」
その言葉に、ローゼリアは息を詰まらせる。
「関係ない……?」
「そうだ」
ルネはゆっくりと体を起こしながら、無造作に手を額へと押し当てる。
「お前は、ただ俺の“延命装置”でしかない。だから——俺とゼヴァの関係を知る必要はない」
ローゼリアは拳を握りしめたまま、唇を噛んだ。
ルネはそんな彼女の様子を一瞥すると、それ以上興味を持たないように視線を逸らした。
「まあまあ」
ゼヴァが軽く手を叩く音が響いた。
彼は壁にもたれながら、どこか気楽そうに笑う。
「せっかく回復したんだ。これからどうするか、考える時間を作るべきじゃないか?」
だが、ルネはゼヴァの言葉を無視した。
ゆっくりと立ち上がると、ローゼリアの方を見下ろし、低く冷たい声で言い放つ。
「……歩けるなら、無駄な会話をするな。ここに長居するつもりはない」
ルネはそのまま背を向けると、崩れた石壁の奥へと歩き出す。
「……行くぞ」
ローゼリアは立ち上がると、何も言わずに彼の背を追った。
ゼヴァは少し遅れてそれに続く。

崩れた避難所に、彼らの足音だけが響いていた。
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