審美眼持ちの青年貴族は、筋肉の檻に閉じ込められる

意図 巻

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序章

勝手にオカズにしていたら本人バレしました

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 ガルテオはその日、ディアスの後ろで護衛の任務に就いて始終幸せなまま夜を迎えた。

 あの細身で美しい男は、オーガの嗅覚を満たす甘くスパイシーな香りを身に纏っている。だが、彼はこの行商団をとり仕切る男爵家の跡取り息子で、いわゆる高嶺の花だった。
 護衛だとしても、遠目から馬車に揺られる姿をみれるだけで、接触なんてもってのほか。ガルテオは、行商団に属する一兵士に過ぎないからだ。任務は個人を守護することではなく荷の管理で、ディアスの身の守りは専門の騎士の仕事だ。

「あー……今日もいい香りだったな。ディアス様……。」

 ガルテオは緩めた下履きから大きなものを取り出し、ゆっくり上下させながら記憶を辿っていく。皮もなく立派なそれは、太さも長さも人間のそれとは比較にならない。出っ張りが大きく、この段差で擦られたものは誰でもその魅力に落とせそうな勢いだ。

 だが、彼は童貞である。
 その立派な逸物をいまだ誰かの柔らかいところに受け入れてもらえたことのない、童貞なのだ。
 そして、20代でこの行商団で兵士として働き始めて以来、ずっとディアスの後ろ姿で抜き続けている筋金入りの変態でもあった。

「今日のおかずはディアス様の姿絵!っていつもこれだよな……、はー、一度でいいから正面からお顔拝見したい、視界の端に映って邪険にされたい~っ♡」

 馬車の後ろからついていくばかりなので、まともに声を聞いたこともなければ、顔も見たことはない。ただ、遠くからフワリと香る匂いが好みなだけだ。
 この姿絵も彼の部下が戯れに描き殴ったもので、酒場に置きっぱなしになったものをこっそり持ち帰ったものだ。つまり、似ている保証すらない。

「でもこのキンとした冷たい目元、きっと部下にも厳しくて……♡はぁっ♡オレのこともなじってくれないかな……♡」

 ちゅこちゅこと右手から間抜けな音が鳴っている。先端からはどぷっと透明な雫が溢れ、部屋の湿度をぐんぐんあげていった。
 視界の端にキラリと光るものがあったが、特に気にせず行為に没頭していく。

「あー……あっ♡あっ♡あっ♡イグ……っ~――、ふぅぅうう……♡」

 頂点に辿り着くと同時に手のひらで亀頭を覆い、飛び散るのを防ぐ。花街を覚える前にディアスを知ってしまったから、こんなことばかり上手くなってしまった。

「はー、くそ、片付けめんどくせぇ……」

「ふ、まだ片付けなくていいぞ♡もっと見せてくれ、貴様の無様な手コキをな」

 突如響いた声にガルテオは盛大に驚いた。思わず右手で息子を握りしめてしまい、痛みにのけ反った。

「うぐぉ……!!」

「なんだ、マゾか貴様?そのデカい図体で難儀な性癖だな……」

「さっきからなんなんだ!?何処にいる!隠れてないで出てこい!」

 と、虚空に叫んでみたものの部屋の中に自分以外の気配はない。

「隠れてなどいないさ。今日の任務で配られたバッチがあるだろう?そこから観ているだけだ」

 そういえば、追加報酬だとかいって金の入った袋とは別に記念品をもらった気がする。何気なくカバンにつけたことを思い出し、ばっとカバンごと手に取る。

「あぁ、それそれ。ふむ、貴様なかなかいい顔ではないか。その顔で女のひとりもいないのか、もったいないなぁ」

「さっきからなんなんだよアンタ!人の憩いの時間邪魔したり勝手に容姿言及したり!!てかプライベートのぞくな!」

 ガルテオは声を荒げるが、バッチ……通信魔法具の一種だろうか?行商団の取扱品の中にそういった商品もあった気がする。その向こうの人物はクスクス笑うばかりで。

「あぁ、この道具な、位置の特定効果もあるんだ。今そちらに向かっている。もうすぐ辿り着くから、灯りくらいつけておけよ」

 ガルテオは慌てて下履きを整えようとしたが、同時に部屋の扉がガチャ、と開く。自分のような異種族の低所得者御用達の安宿なので、鍵なんてものは端からついていない。

「おい、待て、急に開ける奴があるかよ……!」

 その瞬間、ぶわ、と部屋中の籠った空気の代わりに、甘くて辛い不思議な香りが流れ込んでくる。

「……この、匂い、そんな!まさか……!」

 この香りは嫌というほど記憶に刻んでいる。
 任務のたびに、鼻腔いっぱいお土産に持ち帰るほど愛している香り。

 ズカズカとブーツの踵を鳴らして部屋に入り込んでくるこの人は、まさか……!

「さて、今度は生で見物させてもらうぞ、ガルテオとやら」

 どか、と安物のベッドに腰掛けたその人は、ガルテオの憧れであり未だ顔も知らぬ人……、高嶺の花、ディアスだった。

 初めて絡んだ視線に鼓動が跳ね上がる。濃い香りに脳みそが焼けそうだ。姿絵より意地の悪そうな目つきに紫の瞳、ああ、なんてことだ、そこにはガルテオの痴態が写し取られているではないか。

「や、やめ、オレをみるな……!こんな、初めてなのに丸出しだなんて!!」

 羞恥に染まったガルテオは慌ててカバンで下半身を隠し、顔を背けてしまう。
 ディアスは手元のバッチを見下ろすとわぁ、と声を上げた。

「ガルテオ……カバンで隠したのは失敗だったな。貴様の大きいの……♡アップで写ってるぞ♡」

 ほら、と笑顔で見せびらかしてくるディアスの手元には、鏡面の中に写った自分のモノの一部がアップで写しだされていた。

「ばっ!んなもん見るな!いや、み、見ないでください!」
「……ふん、では生でみせろ」

 ディアスが簡単な呪文を唱えると、ガルテオはその場で身動きが取れなくなってしまった。初歩の拘束魔法で、身分のある者は護身術として身につける呪文である。
 悲しいかな、魔法抵抗力の低いオーガには効果的面な魔法でもあった。

「う、うぅ……!」

「私でヌいてる奴がいるらしい、とはちょっとしたウワサになっていてな。夜な夜な宿から甘く私の名を呼ぶ声が聞こえると……。まさか、こんな可愛らしいオーガが犯人だとは思ってもみなかったな……♡」

 ディアスの細指がガルテオの輪郭をなぞる。
 オーガの証である額のツノをちょん、と突かれてガルテオは震えた。

「あぁ~カッコいい……♡こういう整った顔を歪めるのはさぞ楽しかろうなぁ。よし、きめた。貴様、私のものになれ。その身体を使って私を満足させるんだ。こんな顔のいいやつが私の名で自慰に耽るとこ、すごく興奮する。毎日見たい♡」

 ディアスの顔が愉悦と支配欲で歪んでいく。
 ガルテオにはそれが、この世でいちばん美しいものに見えた。

 こうして、ガルテオはしがない護衛からディアス専属奴隷に……成り下がったのか、それとも格上げなのか。
 とにかく、その時ガルテオは震えて見上げるしか出来なかったのだった。
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