世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
22 / 85
世界終わろう委員会

また明日 

しおりを挟む
 流星群? と、疑問符を浮かべている尾張さんを後目に、椎堂さんが発言する。

「そういえば、来るらしいね。流星群」

「えぇ、椎堂さんも知ってたんですね」

 少し意外だった。

「まぁ、ニュースで見たから」

 そこまで、興味はないわ。と、どうでもよさそうに言う。

「ロマンがないですね」

「現実主義なだけだよ」

 素っ気ない態度の椎堂さんに、ついつい反応してしまう。

「流星群は現実ですよ?」

「落ちてくる星を見たって、どうなるわけでもないじゃない」

 リアリストはこれだから。

「世界が終わるかもしれませんよ?」

「ありえないよね」

 一蹴される。まぁ、僕もそれには同意だが。しかし尾張さんは、

「聞き捨てならないわね」

 と、椎堂さんに噛み付く。

「ハレー彗星しかり、流星は世界の終わりと切り離せないわ」

 そんな反論はしかし、椎堂さんには聞こえていない。

「尾張さん、聞こえてないです」

「・・・・・・歯痒いわね」

 そう言ったあと、なにやらスマホを取り出して、メッセージを打ち始める。

 しばらくして、椎堂さんのスマホが鳴る。
 椎堂さんは、それを一瞥すると、

「確かにハレー彗星は、天変地異の前触れって言われてたけど、結局世界は終わらなかったよね」

 と、に向けて言う。

 それを聞いた尾張さんは、それは周期がずれていただけよ。と、さらに反論をメッセージで送る。

 それに対して、椎堂さんがさらに反論する。

「あの、尾張さん?」

「今、忙しいから話しかけないでもらえるかしら、紀美丹君」

 尾張さんは、スマホから顔を上げないまま、僕の問いかけに応える。
 その間もスマホを操作する指を忙しく動かしている。

「えぇ・・・・・・」

 先程の返事がまだ聞けてないんですが。

「あの、椎堂さん?」

 送られてくるメッセージに目を通しながら、反論している椎堂さんに声をかける。しかし、

「ちょっと黙ってて」

「はい」

 どうやら、二人の世界に僕が入り込む余地はないようである。
 こんな時は、スマホゲームにかぎるなぁ。

 寂寥感を抱きながら、やり尽くしたアプリを開く。
 相変わらず、更新はされていなかった。

「・・・・・・はぁ」

 その僕のため息は、二人の気に触ったようで、

「ため息なんか吐いてると幸せが逃げるよ紀美丹君?」

「そんな迷信はありえないんじゃないのかしら? 椎堂さん?」

 と、いうように、二人の口喧嘩ならぬ討論は、僕を挟んでいつまでも続けられるのだった。

 それからしばらくあと、精神的に疲れ切った僕は真っ白な灰になっていた。

 このまま、風に飛ばされて土に帰るのかと現実逃避し始めた時、ようやく二人の討論は終わったようで、椎堂さんは、

「それじゃあ」

 と言って通学鞄を肩に掛け直すと、帰路につこうとしていた。
 尾張さんは、そんな彼女に、

「また明日」

 と言うと、薄く微笑するのだった。

 聞こえるはずのないその言葉を、しかし、椎堂さんは、

「また明日」

 と繰り返して、歩き出していった。

 その後ろ姿は、どこか憑物がとれたような。そんな風に見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

処理中です...