27 / 85
世界終わろう委員会
手紙
しおりを挟む
「殺された?」
それは、六歳の女の子の口から告げられるには、余りにも凄惨な話だった。
平日の昼下がり。会社員の父親は仕事に行き彼女の家には、母親と風邪を引いて寝ていた彼女のみがいた。
そこに、配達業者を名乗る男が一人訪れたそうだ。
その男は、いきなり母親に襲いかかると、隠し持っていたナイフで母親を刺し殺したのだという。
彼女は、それを扉の影からただ見ていた。
何度も何度もナイフが彼女の母親を刺し貫く。
身動きすらしなくなった母親にそれでも執拗に傷跡を増やしていく。
やがて満足したのか、男は洗面所に入っていくと、シャワーを浴びはじめたという。
彼女は、その間に家から飛び出し助けを求めた。
しかし、隣人は仕事で家を空けており、誰もいない。
結局、1番近い交番に駆け込むのに十分以上かかったそうだ。
そして、警察官が現場に到着した時には、既に男は居なくなっており、母親の冷たくなった亡骸のみが残されていたという。
「紀美丹君」
「なんですか?」
尾張さんが渋い顔をしている。
「いきなり過ぎて受け止め切れないわ」
「奇遇ですね。僕もです」
しかし、ママもいるの意味はなんとなく理解できた。
もし幽霊がいるなら、ママも幽霊になっているかもしれない。そういう意図での発言だったのだろう。
「ねぇ、お姉ちゃん! ママに会わなかった? わたしね、ママにお手紙書いたの!」
尾張さんがさらに渋い顔になった。
「紀美丹君。どうすれば良いのかしら、この場合」
「僕に聞かれても」
未来ちゃんは、そんな僕たちの様子を見てとると、目を潤ませて、下を向いた。
「・・・・・・ママにお手紙渡したいの」
尾張さんは、それを見ていられなかったのか、ため息をつくと、
「わかったわ。その手紙を渡しなさい。もし、会えたら渡してあげるから」
と、しぶしぶと言った様子で右手を差し出す。
未来ちゃんは、パッと顔を輝かせると、肩から下げていたポシェットから、桃色の封筒に入った手紙を出して尾張さんに渡す。
「ありがと! 幽霊のお姉ちゃん!」
「あまり、期待はしないでね。あと、その呼び方はやめなさい」
尾張さんは、手紙をポケットにしまうと、ひらひらと手を振り、
「子供はそろそろ家に帰りなさい。もう日が暮れるわ」
と、照れ隠しのように言うのだった。
「よかったんですか?」
未来ちゃんが見えなくなってから、尾張さんに尋ねた。
「何のこと?」
「手紙。あんな安請け合いしちゃって」
「しかたないじゃない。あんなの」
反則よ。と尾張さんは苦々しげに呟いた。
それは、六歳の女の子の口から告げられるには、余りにも凄惨な話だった。
平日の昼下がり。会社員の父親は仕事に行き彼女の家には、母親と風邪を引いて寝ていた彼女のみがいた。
そこに、配達業者を名乗る男が一人訪れたそうだ。
その男は、いきなり母親に襲いかかると、隠し持っていたナイフで母親を刺し殺したのだという。
彼女は、それを扉の影からただ見ていた。
何度も何度もナイフが彼女の母親を刺し貫く。
身動きすらしなくなった母親にそれでも執拗に傷跡を増やしていく。
やがて満足したのか、男は洗面所に入っていくと、シャワーを浴びはじめたという。
彼女は、その間に家から飛び出し助けを求めた。
しかし、隣人は仕事で家を空けており、誰もいない。
結局、1番近い交番に駆け込むのに十分以上かかったそうだ。
そして、警察官が現場に到着した時には、既に男は居なくなっており、母親の冷たくなった亡骸のみが残されていたという。
「紀美丹君」
「なんですか?」
尾張さんが渋い顔をしている。
「いきなり過ぎて受け止め切れないわ」
「奇遇ですね。僕もです」
しかし、ママもいるの意味はなんとなく理解できた。
もし幽霊がいるなら、ママも幽霊になっているかもしれない。そういう意図での発言だったのだろう。
「ねぇ、お姉ちゃん! ママに会わなかった? わたしね、ママにお手紙書いたの!」
尾張さんがさらに渋い顔になった。
「紀美丹君。どうすれば良いのかしら、この場合」
「僕に聞かれても」
未来ちゃんは、そんな僕たちの様子を見てとると、目を潤ませて、下を向いた。
「・・・・・・ママにお手紙渡したいの」
尾張さんは、それを見ていられなかったのか、ため息をつくと、
「わかったわ。その手紙を渡しなさい。もし、会えたら渡してあげるから」
と、しぶしぶと言った様子で右手を差し出す。
未来ちゃんは、パッと顔を輝かせると、肩から下げていたポシェットから、桃色の封筒に入った手紙を出して尾張さんに渡す。
「ありがと! 幽霊のお姉ちゃん!」
「あまり、期待はしないでね。あと、その呼び方はやめなさい」
尾張さんは、手紙をポケットにしまうと、ひらひらと手を振り、
「子供はそろそろ家に帰りなさい。もう日が暮れるわ」
と、照れ隠しのように言うのだった。
「よかったんですか?」
未来ちゃんが見えなくなってから、尾張さんに尋ねた。
「何のこと?」
「手紙。あんな安請け合いしちゃって」
「しかたないじゃない。あんなの」
反則よ。と尾張さんは苦々しげに呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
君が見た春をもう一度
sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。
十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。
置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。
恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる