49 / 85
世界終わろう委員会
願い事
しおりを挟む
流星群が降り続いている。
尾張さんの手を握る。その手は暖かかった。
「尾張さんの手って暖かいんですね」
「幽霊なのにとか言わないわよね」
言葉狩りはよくないと思います。
先に言われてしまったので、お茶を濁す。
「もう一回、願い事しませんか?」
「願い事?」
尾張さんは不思議そうに首を傾げる。
その顔に笑みを返して、僕は空を見上げる。
「今度は、ずっと一緒にいられますようにって」
その言葉を聞いた尾張さんは、頬を赤く染めながら、
「よくそんな恥ずかしい台詞を真顔で言えるわね。紀美丹君」
と、茶化してくる。
僕にも僅かばかりの羞恥心はあるので、ついつい、
「尾張さんのさっきの告白の台詞もなかなかだと思いますけど」
と、売り言葉に買い言葉で言ってしまう。
「これは、戦争の始まりかしらね?」
「えぇ。その宣戦布告受けましょう」
僕は空を見上げながら、尾張さんに言う。
「そもそも、尾張さんは酷いです。あんなことまでしておいて僕のことを記憶から消去するなんて」
「あんなことって何よ。別に好きで記憶なくしたわけじゃないわよ!」
尾張さんが握る手に力を込める。
「あんなことって言ったら例えばあれとかあれとか、口に出すのも憚られるようなあれとか」
「口に出すのも憚られるようなことをした記憶なんかないんだけど! 勝手に記憶を捏造するのは辞めなさい!」
尾張さんの手に更に力が込められる。ちょっと痛い。
「大体、紀美丹君。人に好きだとか、結婚してとか言っておきながら、結局一度も手を出したりしなかったじゃない!」
「え? 手を出して欲しかったんですか?」
尾張さんの顔に目線を移す。尾張さんは、顔全体が真っ赤になっていた。
「違うわよ! 揚げ足を取るのはやめなさい!」
「尾張さんってムッツリだったんですね」
尾張さんの手の力が過去最高に強くなっている。というかこの人いつのまにか両手使って、僕の手を潰そうとしている。
「ちょっ痛たた。尾張さん! 照れ隠しに僕の手を握り潰そうとするのはやめて下さい!」
「照れ隠しじゃないわよ! 遺憾の意の表明よ! 私がムッツリとかいう紀美丹君に全ての責はあるわ!」
尾張さんは頬を膨らませながら、握力にものを言わせて僕の手のひらをゴリゴリいわせるのを辞めない。
「痛たたた。砕ける! 砕けます! 僕の左手が! 別に気にすることないですよ! 人間誰しも性欲という名の呪いに縛られて生きていかなければならないってエロい人が言ってました!」
「誰よエロい人って! そんなのの言うことを鵜呑みにするのは辞めなさい! その人がただの性欲魔人なだけじゃない!」
ごもっとも。どうやら、痛みでまともな思考から離れていたようだ。
尾張さんは、一度ため息をつくと両手の力を抜く。
「一度休戦しましょうか。戦争は何も生まないわ」
「えぇ、そうですね。どうやら犠牲は僕の左手と尾張さんのムッツリ疑惑だけで済んだようですし」
尾張さんの手にまた力が込められる。
「私の尊厳をやすやすと踏み潰すのはやめなさい」
「ごめんなさい。僕の左手を握り潰すのもやめてください」
左手の感覚がなくなってきている気がする。気のせいだと良いなぁ。
「まったく。それで、願い事するんだったかしら?」
口元を尖らせて拗ねたように言う尾張さん。それに笑いながら返す。
「はい。しませんか?」
その言葉に相貌を崩す尾張さん。
流星が降る闇夜の中、僕達は同じ願いを星に祈る。
尾張さんの手を握る。その手は暖かかった。
「尾張さんの手って暖かいんですね」
「幽霊なのにとか言わないわよね」
言葉狩りはよくないと思います。
先に言われてしまったので、お茶を濁す。
「もう一回、願い事しませんか?」
「願い事?」
尾張さんは不思議そうに首を傾げる。
その顔に笑みを返して、僕は空を見上げる。
「今度は、ずっと一緒にいられますようにって」
その言葉を聞いた尾張さんは、頬を赤く染めながら、
「よくそんな恥ずかしい台詞を真顔で言えるわね。紀美丹君」
と、茶化してくる。
僕にも僅かばかりの羞恥心はあるので、ついつい、
「尾張さんのさっきの告白の台詞もなかなかだと思いますけど」
と、売り言葉に買い言葉で言ってしまう。
「これは、戦争の始まりかしらね?」
「えぇ。その宣戦布告受けましょう」
僕は空を見上げながら、尾張さんに言う。
「そもそも、尾張さんは酷いです。あんなことまでしておいて僕のことを記憶から消去するなんて」
「あんなことって何よ。別に好きで記憶なくしたわけじゃないわよ!」
尾張さんが握る手に力を込める。
「あんなことって言ったら例えばあれとかあれとか、口に出すのも憚られるようなあれとか」
「口に出すのも憚られるようなことをした記憶なんかないんだけど! 勝手に記憶を捏造するのは辞めなさい!」
尾張さんの手に更に力が込められる。ちょっと痛い。
「大体、紀美丹君。人に好きだとか、結婚してとか言っておきながら、結局一度も手を出したりしなかったじゃない!」
「え? 手を出して欲しかったんですか?」
尾張さんの顔に目線を移す。尾張さんは、顔全体が真っ赤になっていた。
「違うわよ! 揚げ足を取るのはやめなさい!」
「尾張さんってムッツリだったんですね」
尾張さんの手の力が過去最高に強くなっている。というかこの人いつのまにか両手使って、僕の手を潰そうとしている。
「ちょっ痛たた。尾張さん! 照れ隠しに僕の手を握り潰そうとするのはやめて下さい!」
「照れ隠しじゃないわよ! 遺憾の意の表明よ! 私がムッツリとかいう紀美丹君に全ての責はあるわ!」
尾張さんは頬を膨らませながら、握力にものを言わせて僕の手のひらをゴリゴリいわせるのを辞めない。
「痛たたた。砕ける! 砕けます! 僕の左手が! 別に気にすることないですよ! 人間誰しも性欲という名の呪いに縛られて生きていかなければならないってエロい人が言ってました!」
「誰よエロい人って! そんなのの言うことを鵜呑みにするのは辞めなさい! その人がただの性欲魔人なだけじゃない!」
ごもっとも。どうやら、痛みでまともな思考から離れていたようだ。
尾張さんは、一度ため息をつくと両手の力を抜く。
「一度休戦しましょうか。戦争は何も生まないわ」
「えぇ、そうですね。どうやら犠牲は僕の左手と尾張さんのムッツリ疑惑だけで済んだようですし」
尾張さんの手にまた力が込められる。
「私の尊厳をやすやすと踏み潰すのはやめなさい」
「ごめんなさい。僕の左手を握り潰すのもやめてください」
左手の感覚がなくなってきている気がする。気のせいだと良いなぁ。
「まったく。それで、願い事するんだったかしら?」
口元を尖らせて拗ねたように言う尾張さん。それに笑いながら返す。
「はい。しませんか?」
その言葉に相貌を崩す尾張さん。
流星が降る闇夜の中、僕達は同じ願いを星に祈る。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
君が見た春をもう一度
sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。
十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。
置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。
恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる