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世界終わろう委員会
約束
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少年が意識を失った後、男はおもむろに少年の服を破りはじめる。そして、それを傷跡に包帯のように巻きつけて止血を施す。
「あなたが他人を助けるなんてどういう風の吹き回し?」
銀髪の女性は、不思議そうに男の行動を見ながら言う。
「資源は有限なんだぜ? 大事にしないとな」
「ーーそういうこと。なかなか最低な理由ね。死ねばいいのに」
銀髪の女性は、何に納得したのか、作業する男をゴミを見る目で見下ろす。
「おいおい、仮にも人助けしている人間に対して、それはないんじゃないですかね? こんなに頑張って人を助けようと奮闘する聖人君子な俺にむかって」
「今一人殺しておいて、どの口が言うのかしら。その男の子を助けるのもストック感覚のくせに」
二人の会話に、暗闇に佇んで、止血する男を見ていた少女は堪らず口を挟む。
「どういう意味ですか?」
男は、それには答えず、銀髪の女性が代わりに答える。
「あなた、私たちを見るのに必要なことが何か知ってる?」
「・・・・・・いえ、知りません」
銀髪の女性は、少女を値踏みするように見ながら、
「そう。でも、ある程度のあたりはついてるんじゃない?」
少女は、その問いにおずおずと答える。
「・・・・・・身近な人の死に触れる事ですか?」
銀髪の女性は、うなずく。
「そうね。少し違うけど。正確には、生者の死の瞬間を目撃する事。別に誰でもいいのよ。仲のいい友達でも、その辺を歩いてるおじさんでも。そこで死んでる男の子でも」
そう訂正する。
「あなたたちは、一体いままで、何人の人の死を」
見てきたんですか。そう問いかける少女。殺してきたとは言わなかった。その境遇に自分達に重なるところをみてしまったから。
「さぁ? 覚えてないわね」
その発言に周囲の十数人の人々。恐らく黒い男による被害者であろう人々が、怒気を見せはじめる。
「自分勝手! 死ねばいいのに! なんで私があんたたちなんかのために!」
一人の三十代程度の女性が、銀髪の女性に食って掛かる。
「あの娘だって、まだ小さいのに! これからだったのに・・・・・・」
「まぁまぁ落ち着けよ。あんたの娘さんには手出してないって。約束通り」
黒い男は、女性を宥めるようにそんなことを言う。
少女は、女性をジッと観察する。その顔には、どこか見覚えがある気がした。
「あの、すみません」
「あん? なんかよう?」
少女は、黒い男を一瞥するとフイッと視線を逸らし、女性の方へもう一度語りかける。
「俺、あの娘になんかした?」
「あなたの顔が気持ち悪かったんじゃない?」
ひどい。と黒い男が作業を終えて、落ち込む仕草をする。それを銀髪の女性がやれやれと肩に手をおく。
怒りに身を震わせていた女性は、突然の少女の言葉に、
「・・・・・・なに?」
とだけ短く返す。それに対して、少女は、
「間違っていたらすみません。あなたの娘さんの名前って、田織未来さんですか?」
「⁉︎ あなた、未来を知ってるの? あの子ちゃんとご飯食べてる? 寂しくて泣いちゃったりしてない? 元気でちゃんとやってる?」
女性は、矢継ぎ早にそう話し出す。それに対して、少女は、
「いえ、すいません。そこまで詳しいわけではないので、確かなことは言えません。でも、お母さんに会いたがってました」
それと。と、ポケットから手紙を取り出す。
「これ、あなたに渡して欲しいって頼まれたんです」
女性は、手紙を受け取ると、先程までの怒りが霧散していく様子で、穏やかな笑みを浮かべる。そして、
「未来・・・・・・」
と一言呟くと、封筒を大事そうに開封し便箋を広げる。
しばらく、それを読んでいた女性は、不意に涙を流すと、
「ありがとう。本当に」
と一言、少女に礼を告げると深々と頭を下げるのだった。
「あなたが他人を助けるなんてどういう風の吹き回し?」
銀髪の女性は、不思議そうに男の行動を見ながら言う。
「資源は有限なんだぜ? 大事にしないとな」
「ーーそういうこと。なかなか最低な理由ね。死ねばいいのに」
銀髪の女性は、何に納得したのか、作業する男をゴミを見る目で見下ろす。
「おいおい、仮にも人助けしている人間に対して、それはないんじゃないですかね? こんなに頑張って人を助けようと奮闘する聖人君子な俺にむかって」
「今一人殺しておいて、どの口が言うのかしら。その男の子を助けるのもストック感覚のくせに」
二人の会話に、暗闇に佇んで、止血する男を見ていた少女は堪らず口を挟む。
「どういう意味ですか?」
男は、それには答えず、銀髪の女性が代わりに答える。
「あなた、私たちを見るのに必要なことが何か知ってる?」
「・・・・・・いえ、知りません」
銀髪の女性は、少女を値踏みするように見ながら、
「そう。でも、ある程度のあたりはついてるんじゃない?」
少女は、その問いにおずおずと答える。
「・・・・・・身近な人の死に触れる事ですか?」
銀髪の女性は、うなずく。
「そうね。少し違うけど。正確には、生者の死の瞬間を目撃する事。別に誰でもいいのよ。仲のいい友達でも、その辺を歩いてるおじさんでも。そこで死んでる男の子でも」
そう訂正する。
「あなたたちは、一体いままで、何人の人の死を」
見てきたんですか。そう問いかける少女。殺してきたとは言わなかった。その境遇に自分達に重なるところをみてしまったから。
「さぁ? 覚えてないわね」
その発言に周囲の十数人の人々。恐らく黒い男による被害者であろう人々が、怒気を見せはじめる。
「自分勝手! 死ねばいいのに! なんで私があんたたちなんかのために!」
一人の三十代程度の女性が、銀髪の女性に食って掛かる。
「あの娘だって、まだ小さいのに! これからだったのに・・・・・・」
「まぁまぁ落ち着けよ。あんたの娘さんには手出してないって。約束通り」
黒い男は、女性を宥めるようにそんなことを言う。
少女は、女性をジッと観察する。その顔には、どこか見覚えがある気がした。
「あの、すみません」
「あん? なんかよう?」
少女は、黒い男を一瞥するとフイッと視線を逸らし、女性の方へもう一度語りかける。
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ひどい。と黒い男が作業を終えて、落ち込む仕草をする。それを銀髪の女性がやれやれと肩に手をおく。
怒りに身を震わせていた女性は、突然の少女の言葉に、
「・・・・・・なに?」
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女性は、手紙を受け取ると、先程までの怒りが霧散していく様子で、穏やかな笑みを浮かべる。そして、
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