感染

宇宙人

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第11部 代償

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    浅草警察署所属の刑事、斎藤孝二率いる警察官六名が九重の自宅アパートに到着し、現場を一見した瞬間、その奇妙な光景に絶句した。
 遺体となった女性の目付きは、とても死んでいるとは思えないほど見開かれ、静かに自身の存在をアピールしているようだった。
    そして、その先にいる記者、浜岡の部下である田辺のことを斎藤は知っていた。何度か、会見や取材に立ち会ったことがある。
 まさか、彼が犯人か、と疑うが、田辺の両手が綺麗なことから、自殺の可能性も視野に入れ、九重の遺体を調べるよう部下に指示を出し、斎藤は田辺へ声を掛け任意で連行した。
    パトカーの中で、田辺は斎藤の質問に詰まることなく応えていき、到着後、滞りなく進んでいた取り調べの最中、身柄の引き受け人が現れる。
    浅草警察署に訪れたのは、やはり、斎藤の知った顔だった。

「浜岡、久しぶりだな」

「久しぶり......とも言える間柄ですかねえ?」

「お前が支局長になってから、仕事で会うのは久しぶりだろう?お互い、学生の頃よりも忙しくなったもんだ」

 浜岡は、ああ、と頷くと恥ずかしそうに頭を掻いた。それが、取り調べ中の田辺と重なり斎藤は薄く笑んだ。
 田辺も困ったような表情の時は、頭を掻いていた。それは、浜岡から移った癖だろうか。斎藤が、一階フロア内にある交通課奥の簡易取調室に案内する間に、浜岡は口を開いた。

「田辺君の拘留は?」

 斎藤は首を振った。

「司法解剖の結果が出るまで、もうしばらくは居てもらうことにはなるだろうな。まあ、それほど時間は掛からないとは思う」

「......そうですか。それは良かった」

 浜岡の言い回しに、若干の違和感を覚えた斎藤が振り返ろうとしたが、浜岡のことだ。単純に可愛がっている部下を心配してのことだろう。相変わらず、甘い所は直っていないようだ。
 取調室前で立哨していた若い警官による所持品検査が終了した後に敬礼を交わし、扉を開ければ、狭い室内の中央に座っていた田辺が立ち上がった。

「田辺君、大変だったようだね」

「......面倒をおかけしました」

 深々と頭を垂れた田辺の右肩に手を置いた浜岡は、背後に立つ斎藤へ振り返るが、静かに首を振られた。
    室内には、斎藤を合わせて三人の警官がいる。まだ、容疑者であることに変わりはないのだから、そう易々と二人だけにはしてくれないようだ。

「浜岡さん......仕事の話があるのですが......」

 不意に田辺が言った。今は、田辺に個人的に動く許可を出している期間だ。これは、つまり、浜岡に何かを頼みたいという田辺からのメッセージなのだろう。浜岡は、目線だけで斎藤以外の二人を見てから返す。

「......引き継ぎかい?良いよ、なんだい?」

「......浜岡、待て」

 浜岡がポケットから出したノートを渡す直前に、斎藤が声を掛け、警官の一人に目配せを送り、再度、浜岡の所持品検査が始まる。
    入室前と同様の流れに、浜岡は倦怠感を隠そうともせずに、両手を挙げた。
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