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第11話
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「喉も乾くだろうな。昨日からなにも口にしてなかったんだろ?」
「......何が目的だよ?言っとくが、仲間ならいねぇし、武器もないぞ」
小金井は苦笑混じりに鼻の頭を掻いた。うーーん、と唸りつつ、コーヒーを飲み干してから、空き缶をベッドに置く。
「......なあ、今の外の状況が、一体、どこまで広がっていると思う?」
突飛な質問の意図が読めず、達也は眉を寄せた。構わずに小金井は続ける。
「奴等が人を襲い出し、中間市に住む人間は、ほとんどが、このモールに集結した。協力してバリケードを作って......例え、世界に俺達以外の人間がいなくなろうとも、協力して生きていこうと誓った」
なんだ、話しが良く分からない。こいつは何が言いたいんだ。ただ、唯一、達也が感じとれたのは、小金井の口調は、確かな怒気を纏っているということだ。達也は、黙然と小金井の言葉を待った。
「そう一丸になった直後、あいつらが現れ、一号館にいた仲間は殺された。今、モールの外を徘徊している多くは、かつての仲間だ。あいつらさえ現れなければ......」
「......あいつら?」
「お前を拐ってきた二人組だ!」
「ち......ちょっと待て!お前は奴等の仲間じゃねえのか?」
感情の昂りから、大声を発した小金井に向け、達也は右手の掌を見せた。理解が追い付かなかった。
達也が気を失う前に、東は小金井に身柄を預けた。それは、東からある一定の信頼を寄せられている証ではないだろうか。つまり、達也の認識では、安部、東、小金井の三人は、仲間同士であり、力関係もはっきりしていた。そんな達也の戸惑いも無視し、小金井は、抑揚のない声で言う。
「ああ、みんなを助けるには、仕方がなかった......異常者のように振る舞うしか、近付くことが出来なかったんだよ......そうしなければ、あの二人は何をしてくるか分からない......」
「異常者の真似って……そういうことかよ……」
小金井は、小さく頷いた。それだけで達也は、理解する。それがどれだけ辛いことか。それがどれだけ悔しいことか。自己犠牲に心酔するタイプでもないのは、仲間から不信感を向けられようとも、仲間を守るために、二人に近づいたことからも分かる。勇敢な男だ。それだけに、不憫に思える。
しかし、これは演技かもしれない。狐疑が拭えないのは、環境のせいだろうか。それとも、自分は昔から疑い深かったか。
信じてやりたいが信じられない小胆さに嫌気がさし、達也は天井を見上げた。
小金井は、いずれ死ぬであろう達也を信用して提案しようとしている。その内容は皆目見当もつかないが、ただ言えるのは、達也にはもう後がないということだ。
どのみち、殺されるのは時間の問題だ。ならば、最後の時までは誰かを信じて死にたい。信じたあげく、あの女医のような殺意の塊を向けられようとも、小金井のように、仲間を守る人間らしく、最後の瞬間まで、人間として有終の美を飾ってやろう、そんな気持ちを気力で持った。
顎を下ろし、達也は小金井と目線を合わせて言った。
「前置きはもうやめよう……小金井だっけ?お前は俺に何をさせたいんだ?」
小金井は、鋭く光る達也の眼光から逃げずに返した。
「じゃあ、率直に言うことにする。一度しか言わないからよく聞いてくれ」
小金井は、辺りを見回し、誰もいないことを探りつつ、達也の耳元で蚊の鳴くような頼りない声で言った。
「安部と東を出し抜く為に、君の力をかしてくれ」
「......何が目的だよ?言っとくが、仲間ならいねぇし、武器もないぞ」
小金井は苦笑混じりに鼻の頭を掻いた。うーーん、と唸りつつ、コーヒーを飲み干してから、空き缶をベッドに置く。
「......なあ、今の外の状況が、一体、どこまで広がっていると思う?」
突飛な質問の意図が読めず、達也は眉を寄せた。構わずに小金井は続ける。
「奴等が人を襲い出し、中間市に住む人間は、ほとんどが、このモールに集結した。協力してバリケードを作って......例え、世界に俺達以外の人間がいなくなろうとも、協力して生きていこうと誓った」
なんだ、話しが良く分からない。こいつは何が言いたいんだ。ただ、唯一、達也が感じとれたのは、小金井の口調は、確かな怒気を纏っているということだ。達也は、黙然と小金井の言葉を待った。
「そう一丸になった直後、あいつらが現れ、一号館にいた仲間は殺された。今、モールの外を徘徊している多くは、かつての仲間だ。あいつらさえ現れなければ......」
「......あいつら?」
「お前を拐ってきた二人組だ!」
「ち......ちょっと待て!お前は奴等の仲間じゃねえのか?」
感情の昂りから、大声を発した小金井に向け、達也は右手の掌を見せた。理解が追い付かなかった。
達也が気を失う前に、東は小金井に身柄を預けた。それは、東からある一定の信頼を寄せられている証ではないだろうか。つまり、達也の認識では、安部、東、小金井の三人は、仲間同士であり、力関係もはっきりしていた。そんな達也の戸惑いも無視し、小金井は、抑揚のない声で言う。
「ああ、みんなを助けるには、仕方がなかった......異常者のように振る舞うしか、近付くことが出来なかったんだよ......そうしなければ、あの二人は何をしてくるか分からない......」
「異常者の真似って……そういうことかよ……」
小金井は、小さく頷いた。それだけで達也は、理解する。それがどれだけ辛いことか。それがどれだけ悔しいことか。自己犠牲に心酔するタイプでもないのは、仲間から不信感を向けられようとも、仲間を守るために、二人に近づいたことからも分かる。勇敢な男だ。それだけに、不憫に思える。
しかし、これは演技かもしれない。狐疑が拭えないのは、環境のせいだろうか。それとも、自分は昔から疑い深かったか。
信じてやりたいが信じられない小胆さに嫌気がさし、達也は天井を見上げた。
小金井は、いずれ死ぬであろう達也を信用して提案しようとしている。その内容は皆目見当もつかないが、ただ言えるのは、達也にはもう後がないということだ。
どのみち、殺されるのは時間の問題だ。ならば、最後の時までは誰かを信じて死にたい。信じたあげく、あの女医のような殺意の塊を向けられようとも、小金井のように、仲間を守る人間らしく、最後の瞬間まで、人間として有終の美を飾ってやろう、そんな気持ちを気力で持った。
顎を下ろし、達也は小金井と目線を合わせて言った。
「前置きはもうやめよう……小金井だっけ?お前は俺に何をさせたいんだ?」
小金井は、鋭く光る達也の眼光から逃げずに返した。
「じゃあ、率直に言うことにする。一度しか言わないからよく聞いてくれ」
小金井は、辺りを見回し、誰もいないことを探りつつ、達也の耳元で蚊の鳴くような頼りない声で言った。
「安部と東を出し抜く為に、君の力をかしてくれ」
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