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魔王様の執着から逃れたいっ
どこに行ったの? 魔王 side
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ユキを魔王城に置いて今日でちょうど五ヶ月になる。最初の頃は、全然懐いてくれなくて、もしかしたら逃げ出すかもしれない、と少しだけ不安だった。
でも、今は五ヶ月。ユキが逃げる気配もなく、こうして俺の側にいる。それだけで、安心している自分がいる。
たぶん、ユキが俺の元から逃げ出したら、俺はダメになってしまうだろう。心の支えがいなくなる、というのはこういうことなのかもしれない。ユキがいてくれるだけで、俺は強くいられる。その事実に、何度も胸が熱くなる。
実は、今日ユキが言ったんだ。「魔王様と街を見てみたい」って。正直、驚いた。
ユキが自分から、俺と何かをしたいと言うのは初めてだったからだ。嬉しい、心から嬉しかった。
もちろん、ユキの姿が他の人の目に触れるのはすごく嫌だ。でも、それ以上に、ユキが楽しそうにしてくれるなら、それでいいと思った。せっかくだから、この機会を楽しもう。
なんでもしてくれるって約束したから、帰ってからのことも、楽しみで仕方がなかった。抱き枕にして寝てみたい。一日中抱きしめていたい。
ついに、俺たちは城を出た。
はぁ、ユキの姿が他人の目にさらされてしまう――そのことを考えるだけで少しだけ心が痛む。でも、ユキは初めて外に出るはずだ。だから、俺がリードしてあげないといけない。この街で、ユキを守るのは、俺の役目だ。
さっきから、俺たちの後ろに誰かがつけている気配がする。俺を殺しに来たのかもしれない。いろいろ恨みを買ってると思うし。だが、今の姿だと魔法は使えないし、ユキの前で戦うわけにはいかない。まあ、もしもの時は魔法を使えばいい。
その時は、ユキを守ったあとに、その相手を――。
いや、待て。考えすぎるな。ユキは今、俺のそばにいる。この目で見える範囲にいるのだから、逃げるわけがない。
───いや、でも、もしかしたら……。
「ねえ、魔王様、ちょっとお手洗いに行ってもいいかな?」
お手洗いか。どこにあったかな……。城内をあまり歩き回ったことはない。方向感覚だけでユキが迷わないか少し心配になる。
「いいよっ ついてく」
「えぇ~、ちょっと恥ずかしいから、ついてこないで!!」
えっ、ついてこなくていいのか?そう思った瞬間、ユキが突然走り出した。その後ろ姿を目で追う。……いや、待て。何を考えてるんだ、俺は。
「ユキー、どこにいるの? 隠れても、無駄だよ。それとも、俺と遊びたいの? そうなら、魔王城で言ったらよかったのに」
絶対にお手洗いじゃない。あの走り方は――遊びたいという意思表示だ。俺と離れたいなんて思うわけがない。すぐに戻ってくると信じる。ユキは俺のそばから逃げたりしない。
「ユキー、出ておいで。かくれんぼしたいなら言ってくれればいいのに」
声をかければ必ず、ユキは出てくる。そう信じるしかない。まだ目で見える範囲にいるはずだ。
「ユキー、今出てきたら許してあげるよ? おいで、俺もあんまり待つのは好きじゃないんだよね」
どうしよう。もしも本当に、ユキが俺の元に戻ってこなかったら。遊びのつもりじゃなかったら。俺の元を逃げたいと思ったなら――。立ち直れるだろうか。心が壊れそうになる。
「ユキー、本当にどこにいるの? 聞こえてるんでしょ? 早く出てきてっ」
本当に、本当に、ユキは俺の元から逃げたのか? いや、違う。絶対に違う。
この感覚――近くにいる、という確かな気配を、俺は感じていた。
「ユキー、本当に起こるよ。イタズラはこれくらいにして、もう帰るよ。それとも、俺を怒らせたいの? 早く、帰ってきて……」
だんだん、ユキの気配が遠くなっていく。この距離感……いや、違う。本当に逃げちゃったのかもしれない、という恐怖が、心の奥を締め付ける。
でも待て。
さっき後ろにつけていた気配も、今は感じられない。もしかしたら、誰かに連れ去られたのかもしれない。ユキが俺から逃げるなんてことは、――いや、考えたくない。ユキは、俺の希望であり、心の支えなのだ。だからこそ、何としてでも助けなくては。
早く、魔王城に戻らないと。早く、ユキを助けに行かなくては。この街のどこに隠れていようと、ユキは俺が見つける。どんな方法でも、絶対に――。
でも、今は五ヶ月。ユキが逃げる気配もなく、こうして俺の側にいる。それだけで、安心している自分がいる。
たぶん、ユキが俺の元から逃げ出したら、俺はダメになってしまうだろう。心の支えがいなくなる、というのはこういうことなのかもしれない。ユキがいてくれるだけで、俺は強くいられる。その事実に、何度も胸が熱くなる。
実は、今日ユキが言ったんだ。「魔王様と街を見てみたい」って。正直、驚いた。
ユキが自分から、俺と何かをしたいと言うのは初めてだったからだ。嬉しい、心から嬉しかった。
もちろん、ユキの姿が他の人の目に触れるのはすごく嫌だ。でも、それ以上に、ユキが楽しそうにしてくれるなら、それでいいと思った。せっかくだから、この機会を楽しもう。
なんでもしてくれるって約束したから、帰ってからのことも、楽しみで仕方がなかった。抱き枕にして寝てみたい。一日中抱きしめていたい。
ついに、俺たちは城を出た。
はぁ、ユキの姿が他人の目にさらされてしまう――そのことを考えるだけで少しだけ心が痛む。でも、ユキは初めて外に出るはずだ。だから、俺がリードしてあげないといけない。この街で、ユキを守るのは、俺の役目だ。
さっきから、俺たちの後ろに誰かがつけている気配がする。俺を殺しに来たのかもしれない。いろいろ恨みを買ってると思うし。だが、今の姿だと魔法は使えないし、ユキの前で戦うわけにはいかない。まあ、もしもの時は魔法を使えばいい。
その時は、ユキを守ったあとに、その相手を――。
いや、待て。考えすぎるな。ユキは今、俺のそばにいる。この目で見える範囲にいるのだから、逃げるわけがない。
───いや、でも、もしかしたら……。
「ねえ、魔王様、ちょっとお手洗いに行ってもいいかな?」
お手洗いか。どこにあったかな……。城内をあまり歩き回ったことはない。方向感覚だけでユキが迷わないか少し心配になる。
「いいよっ ついてく」
「えぇ~、ちょっと恥ずかしいから、ついてこないで!!」
えっ、ついてこなくていいのか?そう思った瞬間、ユキが突然走り出した。その後ろ姿を目で追う。……いや、待て。何を考えてるんだ、俺は。
「ユキー、どこにいるの? 隠れても、無駄だよ。それとも、俺と遊びたいの? そうなら、魔王城で言ったらよかったのに」
絶対にお手洗いじゃない。あの走り方は――遊びたいという意思表示だ。俺と離れたいなんて思うわけがない。すぐに戻ってくると信じる。ユキは俺のそばから逃げたりしない。
「ユキー、出ておいで。かくれんぼしたいなら言ってくれればいいのに」
声をかければ必ず、ユキは出てくる。そう信じるしかない。まだ目で見える範囲にいるはずだ。
「ユキー、今出てきたら許してあげるよ? おいで、俺もあんまり待つのは好きじゃないんだよね」
どうしよう。もしも本当に、ユキが俺の元に戻ってこなかったら。遊びのつもりじゃなかったら。俺の元を逃げたいと思ったなら――。立ち直れるだろうか。心が壊れそうになる。
「ユキー、本当にどこにいるの? 聞こえてるんでしょ? 早く出てきてっ」
本当に、本当に、ユキは俺の元から逃げたのか? いや、違う。絶対に違う。
この感覚――近くにいる、という確かな気配を、俺は感じていた。
「ユキー、本当に起こるよ。イタズラはこれくらいにして、もう帰るよ。それとも、俺を怒らせたいの? 早く、帰ってきて……」
だんだん、ユキの気配が遠くなっていく。この距離感……いや、違う。本当に逃げちゃったのかもしれない、という恐怖が、心の奥を締め付ける。
でも待て。
さっき後ろにつけていた気配も、今は感じられない。もしかしたら、誰かに連れ去られたのかもしれない。ユキが俺から逃げるなんてことは、――いや、考えたくない。ユキは、俺の希望であり、心の支えなのだ。だからこそ、何としてでも助けなくては。
早く、魔王城に戻らないと。早く、ユキを助けに行かなくては。この街のどこに隠れていようと、ユキは俺が見つける。どんな方法でも、絶対に――。
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