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魔物退治(3)
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背負った布袋からは魔物が出たり入ったりしながらガルディにちょっかいを出した。
何となく思うのだが、ガルディと魔物、気が合うようだ。
それを察したのかガルディが「合わねえよ」と怒鳴った。
それから二時間ほど歩いてようやくシュバイゲンへ到着。
『シュバイゲン村へようこそ』と朽ちかけた木製看板が風に揺れていた。
とても歓迎されてるとは思えない。
馬車が一台通れるほどの一本道の両脇に家が転々と並んでいるだけの長閑な村。
どこからか子供の声が聞こえる。寂れてはいるが平和な村であることがわかる。
向こうからやって来る人影。
農作業からの帰りと思われるその村人に聞いてみる。
「ちょっとお尋ねしますが、この村にニコラス・オリヴァーという人が住んでたと思うのですがご存じですか?」
「ニコラス・オリヴァー?……そんな人はこの村にはおらんね。この村の人口はそれほど多くない。みんな顔見知りだ。名前を聞けば顔と家はわかるが」
「今から九十年ほど前の人らしいんです」
「九十年前とな……だったらオリヴァーさんの先祖かもしれんな。だけど、ここにはオリヴァー家は三軒ある。一軒一軒当たってみることだな」
場所を聞き、一軒、二軒と回り、三軒目でようやくそれらしい人物の話を聞くことができた。
ロッソ・オリヴァーという男だ。
訪ねるとちょうど農作業から戻ったばかりのロッソに会うことができた。
エルンは訪ねて来た理由を説明した。
「ふん……確かにニコラス・オリヴァーという名前は聞いたことがあるがね。
爺さんの親父だったと思う……それがどうしたかね」
さらにエルンは森に出没していた魔物の話を聞かせた。
「魔物の話はこの辺りで知らない者はいない。それが……お前のような坊主にどうしてわかる?」
「どうしてかわからないですが……」
「わからない話を信じろと?……フムフム……だが、そういえば、確かに、爺さんの代までは猟師をしていた。しかもデザトウルフを猟犬としていたと聞いたこともある。まさかそのデザトウルフがひい爺さんが戻ってくるのを九十年間待っていたというのかね」
「そうです」
「ああ……そうだ、思い出した。子供のころ聞いたことがある。仕事の帰りに山道で盗賊に襲われて命を奪われた先祖がいたことを。ひょっとするとそれがひい爺さんだったかもしれん」
エルンの背中の袋から黒い影が飛び出した。
ロッソは悲鳴を上げた。
「魔物……」
「そうです、これですよ。九十年間旅人や周辺の人々を恐怖に陥れた正体です」
「追い出してくれ。こんなものを持ち込むんじゃない。お前たちも出て行ってくれ」
ロッソは怒りにも似た表情を露にした。
「なぜですか?」
「当たり前だろ。魔物だぞ」
「そうですか、わかりました。ですが、ひとつ教えてもらえませんか?」
「何をだね?」
「ニコラスさんのお墓はどこですか」
「墓?……どうするつもりだね」
「この骨をニコラスさんのお墓の近くに埋めてやりたいんですが」
「ちょっと待ってくれ。魔物の骨を先祖の墓の近くに埋めるだと。とんでもねえ」
今まで黙って聞いていたガルディが怒鳴った。
「おっさん。あんたには人としての心があるのか。この魔物が、どんな気持ちであんたのご先祖を待っていたか、わからんのか。魔物になってまでも九十年間待ち続けたんだぞ。墓の近くに埋めてやることぐらいできんのか。お前の先祖が泣くぞ」
「そうですよ。ロッソさん。ニコラスさんも喜ぶと思いますよ」
「しかし、村の連中に知れたらなんと言われるか。村人を苦しめていたのがうちの先祖の猟犬だったとは……」
ロッソはしばし考えていた。
「では、あの道で、盗賊は出ましたか?」
「盗賊? いや、あの道で盗賊が出たという話は聞いたことはない。なんせ、魔物が出る道として有名だったからな。盗賊さえ近づかなかった」
「だったら、このことを村人だけの内緒にしておけば、今後は盗賊も魔物も出ない道として使う事ができるじゃないですか」
「確かにそうだが」
家の前にいつの間にか、村人が集まっていた。
「いいじゃないか。弔ってやろうじゃないか」とヨゼフ村長。
「村長……」
「わしはいいと思うぞ。村の守り神になってくれるかもしれん。悪い話とは思えんが」
「はあ……村長がそういうのなら」
ロッソは渋々折れた。
エルンは墓へと案内された。
墓標にはニコラス・オリヴァーの文字が刻まれている。
エルンは墓の横に穴を掘り、デザトウルフの骨を埋めた。
影は墓標を確認するように飛び回ると墓にスッと吸い込まれた。
エルンにはデザトウルフの遺恨が消えるのがわかった。
何となく思うのだが、ガルディと魔物、気が合うようだ。
それを察したのかガルディが「合わねえよ」と怒鳴った。
それから二時間ほど歩いてようやくシュバイゲンへ到着。
『シュバイゲン村へようこそ』と朽ちかけた木製看板が風に揺れていた。
とても歓迎されてるとは思えない。
馬車が一台通れるほどの一本道の両脇に家が転々と並んでいるだけの長閑な村。
どこからか子供の声が聞こえる。寂れてはいるが平和な村であることがわかる。
向こうからやって来る人影。
農作業からの帰りと思われるその村人に聞いてみる。
「ちょっとお尋ねしますが、この村にニコラス・オリヴァーという人が住んでたと思うのですがご存じですか?」
「ニコラス・オリヴァー?……そんな人はこの村にはおらんね。この村の人口はそれほど多くない。みんな顔見知りだ。名前を聞けば顔と家はわかるが」
「今から九十年ほど前の人らしいんです」
「九十年前とな……だったらオリヴァーさんの先祖かもしれんな。だけど、ここにはオリヴァー家は三軒ある。一軒一軒当たってみることだな」
場所を聞き、一軒、二軒と回り、三軒目でようやくそれらしい人物の話を聞くことができた。
ロッソ・オリヴァーという男だ。
訪ねるとちょうど農作業から戻ったばかりのロッソに会うことができた。
エルンは訪ねて来た理由を説明した。
「ふん……確かにニコラス・オリヴァーという名前は聞いたことがあるがね。
爺さんの親父だったと思う……それがどうしたかね」
さらにエルンは森に出没していた魔物の話を聞かせた。
「魔物の話はこの辺りで知らない者はいない。それが……お前のような坊主にどうしてわかる?」
「どうしてかわからないですが……」
「わからない話を信じろと?……フムフム……だが、そういえば、確かに、爺さんの代までは猟師をしていた。しかもデザトウルフを猟犬としていたと聞いたこともある。まさかそのデザトウルフがひい爺さんが戻ってくるのを九十年間待っていたというのかね」
「そうです」
「ああ……そうだ、思い出した。子供のころ聞いたことがある。仕事の帰りに山道で盗賊に襲われて命を奪われた先祖がいたことを。ひょっとするとそれがひい爺さんだったかもしれん」
エルンの背中の袋から黒い影が飛び出した。
ロッソは悲鳴を上げた。
「魔物……」
「そうです、これですよ。九十年間旅人や周辺の人々を恐怖に陥れた正体です」
「追い出してくれ。こんなものを持ち込むんじゃない。お前たちも出て行ってくれ」
ロッソは怒りにも似た表情を露にした。
「なぜですか?」
「当たり前だろ。魔物だぞ」
「そうですか、わかりました。ですが、ひとつ教えてもらえませんか?」
「何をだね?」
「ニコラスさんのお墓はどこですか」
「墓?……どうするつもりだね」
「この骨をニコラスさんのお墓の近くに埋めてやりたいんですが」
「ちょっと待ってくれ。魔物の骨を先祖の墓の近くに埋めるだと。とんでもねえ」
今まで黙って聞いていたガルディが怒鳴った。
「おっさん。あんたには人としての心があるのか。この魔物が、どんな気持ちであんたのご先祖を待っていたか、わからんのか。魔物になってまでも九十年間待ち続けたんだぞ。墓の近くに埋めてやることぐらいできんのか。お前の先祖が泣くぞ」
「そうですよ。ロッソさん。ニコラスさんも喜ぶと思いますよ」
「しかし、村の連中に知れたらなんと言われるか。村人を苦しめていたのがうちの先祖の猟犬だったとは……」
ロッソはしばし考えていた。
「では、あの道で、盗賊は出ましたか?」
「盗賊? いや、あの道で盗賊が出たという話は聞いたことはない。なんせ、魔物が出る道として有名だったからな。盗賊さえ近づかなかった」
「だったら、このことを村人だけの内緒にしておけば、今後は盗賊も魔物も出ない道として使う事ができるじゃないですか」
「確かにそうだが」
家の前にいつの間にか、村人が集まっていた。
「いいじゃないか。弔ってやろうじゃないか」とヨゼフ村長。
「村長……」
「わしはいいと思うぞ。村の守り神になってくれるかもしれん。悪い話とは思えんが」
「はあ……村長がそういうのなら」
ロッソは渋々折れた。
エルンは墓へと案内された。
墓標にはニコラス・オリヴァーの文字が刻まれている。
エルンは墓の横に穴を掘り、デザトウルフの骨を埋めた。
影は墓標を確認するように飛び回ると墓にスッと吸い込まれた。
エルンにはデザトウルフの遺恨が消えるのがわかった。
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