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古魔道具屋オープン前日(2)
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まずはチラシ作りから。
この世界の活字は二十六文字で、それを組み合わせて原版を作り、それにインクを乗せ、その上に紙を置く。その上から平らな板で押さえつけるわけだ。
小学生の時、版画を作った。エルンはそれを思い出した。
チラシの文言。まずは下書き。
『フェラガモ通り三丁目六番地に「ガルディの店」オープン。
古魔道具、魔導書、古民具、珍品その他。明朗価格。
魔道具すべて三か月保証。高価買い取りもいたします。
今週いっぱいチラシをお持ちいただいた方には三割引き』
「こんなもんでどうでしょうか?」
「さあ、俺にはわからん」とガルディは興味なさげ。
「三割引きっていうのはどうかな。それで儲けは出るのかしら?」とイルザ。
「最初だけだよ。この商品はおばあさんから譲り受けたものだからほとんどタダだから儲けはあるけど、今後は無理だね」
「だったらいいんじゃない。最初は店を知ってもらうのが大事だから。エルンがいいと言うんならいいんじゃない」
「で、これをどうするんだ」とガルディ。
「皆で配るんですよ。街角に立って」
「俺にそれをやれというのか?」
「当然です」
「断る」
「なぜですか?」
「俺はヴォルフガルドだぞ」
ガルディのプライドにも困ったものだ。
「店長が率先してやらないと」
「断る。戦士がチラシ配りだと? 死ねと言ってるようなもんだ。ここで店長やるだけでぎりぎりだ」
「じゃあいいです、僕とイルザさんで配りますから」
「私も配るの。そんなことまで聞いてないわよ」
イルザも乗り気でないようだ。
「じゃあ、いいよ。僕一人でやるから……」
——手伝ってくれるのか、くれないのか、なんだか中途半端で困るよ。本当にやっていけるのかな——
取りあえずチラシは三百枚作ることにした。
この世界では紙が意外と高額なことに驚いた。
一枚が百デリラ、三百枚で三万デリラだ。
——痛たたたたたたたた……——
お昼までにチラシを作り終えるとエルンは人通りの多いところを探して配り始めた。
「新しくできました古魔道具の店です。よかったら来てください」
声を掛けながらチラシを配る。前世とは違い、高価な紙のチラシなのでその場で捨てる人はほとんどいないが、反応は薄い。
半分ほど配り終えたとき意外な言葉が投げかけられた。
「この店、古物商の許可を取ってるのか? 許可番号が書いてないんだが」
「へっ?」
「古物を売るには市の許可が必要なことぐらい知ってるだろ。もちろん取っているんだろうな?」
「へっ?」
「お前んとこの店は闇魔道具屋か?」
「闇…………」
一切の返答ができなかった。
まさか、市の許可が必要だなんて。知らないし、誰も教えてくれないし……。
——ああ、そうだ——
前世でも古物を売買するときには古物商の資格が必要だったことを思い出した。
——迂闊だった。まさか、この世界でも必要だとは……どうしよう——
エルンはすぐに店に戻ると、そのことをガルディに話した。
「お前、肝心なところが抜けてるよな」
「ガルディさんだって言ってくれなかったじゃない」
「俺がそんなこと知るわけないだろ。すべてお前に任せてある」
「店長なんだから……」と言ってもそこからの言葉は出てこない。建前上の店長だ。
この世界の活字は二十六文字で、それを組み合わせて原版を作り、それにインクを乗せ、その上に紙を置く。その上から平らな板で押さえつけるわけだ。
小学生の時、版画を作った。エルンはそれを思い出した。
チラシの文言。まずは下書き。
『フェラガモ通り三丁目六番地に「ガルディの店」オープン。
古魔道具、魔導書、古民具、珍品その他。明朗価格。
魔道具すべて三か月保証。高価買い取りもいたします。
今週いっぱいチラシをお持ちいただいた方には三割引き』
「こんなもんでどうでしょうか?」
「さあ、俺にはわからん」とガルディは興味なさげ。
「三割引きっていうのはどうかな。それで儲けは出るのかしら?」とイルザ。
「最初だけだよ。この商品はおばあさんから譲り受けたものだからほとんどタダだから儲けはあるけど、今後は無理だね」
「だったらいいんじゃない。最初は店を知ってもらうのが大事だから。エルンがいいと言うんならいいんじゃない」
「で、これをどうするんだ」とガルディ。
「皆で配るんですよ。街角に立って」
「俺にそれをやれというのか?」
「当然です」
「断る」
「なぜですか?」
「俺はヴォルフガルドだぞ」
ガルディのプライドにも困ったものだ。
「店長が率先してやらないと」
「断る。戦士がチラシ配りだと? 死ねと言ってるようなもんだ。ここで店長やるだけでぎりぎりだ」
「じゃあいいです、僕とイルザさんで配りますから」
「私も配るの。そんなことまで聞いてないわよ」
イルザも乗り気でないようだ。
「じゃあ、いいよ。僕一人でやるから……」
——手伝ってくれるのか、くれないのか、なんだか中途半端で困るよ。本当にやっていけるのかな——
取りあえずチラシは三百枚作ることにした。
この世界では紙が意外と高額なことに驚いた。
一枚が百デリラ、三百枚で三万デリラだ。
——痛たたたたたたたた……——
お昼までにチラシを作り終えるとエルンは人通りの多いところを探して配り始めた。
「新しくできました古魔道具の店です。よかったら来てください」
声を掛けながらチラシを配る。前世とは違い、高価な紙のチラシなのでその場で捨てる人はほとんどいないが、反応は薄い。
半分ほど配り終えたとき意外な言葉が投げかけられた。
「この店、古物商の許可を取ってるのか? 許可番号が書いてないんだが」
「へっ?」
「古物を売るには市の許可が必要なことぐらい知ってるだろ。もちろん取っているんだろうな?」
「へっ?」
「お前んとこの店は闇魔道具屋か?」
「闇…………」
一切の返答ができなかった。
まさか、市の許可が必要だなんて。知らないし、誰も教えてくれないし……。
——ああ、そうだ——
前世でも古物を売買するときには古物商の資格が必要だったことを思い出した。
——迂闊だった。まさか、この世界でも必要だとは……どうしよう——
エルンはすぐに店に戻ると、そのことをガルディに話した。
「お前、肝心なところが抜けてるよな」
「ガルディさんだって言ってくれなかったじゃない」
「俺がそんなこと知るわけないだろ。すべてお前に任せてある」
「店長なんだから……」と言ってもそこからの言葉は出てこない。建前上の店長だ。
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