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過去編・目覚め、そして…

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ふと目が覚めた、目線である人を探すが何処にもいない。

俺、なにがあったんだっけ…記憶が曖昧だった。
でも、気分がとてもいい…昨日みたいに眠くない。

上半身だけ起こして、腕を伸ばして身体を伸ばす。

外を見ると、真っ暗だ…もう夜なのか?ご飯を食べた記憶がないからお腹が空いた。
ベッドから降りると、ガタガタと部屋の外が騒がしかった。

なんだろうと思い、ドアを開けようと近付くと俺が開ける前にドアが破壊された。
びっくりして逃げ遅れてドアの下敷きになった。

『ん?誰だ?』

「いてて…その声、リーズナ?」

『なんだお前か、悪かったな…今急いでいるんだ』

倒れてきたドアの下でもがいていたら、リーズナの姿がチラッと見えた。
珍しくリーズナは大きな姿をしていて、どうしたのかとドアから這い出てきた。

するとリーズナの背に誰かが乗っていて、それをベッドに寝かせている。

すぐにカイウスだと気付き、ベッドに近付くとリーズナがベッドに寝かせていた。
髪が黒いし、服は所々破けてボロボロだ…俺が寝ている間にいったいなにが起きたんだ?

リーズナは元のサイズに戻り、寝ているカイウスの顔の横に座っていた。

とりあえず、カイウスが怪我をしているなら手当てしないと…

カイウスの服の破れた部分に触れるけど、怪我どころか血が付いているところがなかった。
でも、カイウスは俺が触れても起きない…いったいなにが起きたんだ?

「リーズナ、カイウスになにがあったの?」

『俺が勝手に話す内容じゃねぇ…カイは、望まないからな』

「……リーズナ」

『知りたきゃ本人に起きたら直接聞け』

そう言って、部屋から出ようとベッドから降りたリーズナに一つだけ聞きたい事があった。

リーズナの後ろ姿に「リーズナはなんでいるの?」と聞いた。

普段ならリーズナが居ても不思議じゃないが、今のこの状態は可笑しい。

カイウスの髪色が黒い時は、リーズナはカイウスの力として吸収されているはずだ。
なのに、なんでリーズナは普通にいるのだろう。

リーズナがいる事で、俺の不安はどんどん大きなものになっていく。

『さぁな、俺もこんな事初めてで分からねぇよ』

「………」

『そんな泣きそうな顔すんなよ、アイツが起きた時お前がそんな顔してると俺が怒られる』

リーズナはそう言って部屋を出ていき、俺とカイウスの二人きりになった。

カイウスが起きた時、美味しいご飯を作って待っていたいけど…カイウスの傍にもいたい。
カイウスの手を両手で包み込んで、顔を覗き込む。

リーズナですら知らない事、本当にカイウスは目を覚ますんだよね?

笑っておはようって言わないと、カイウスが笑ってくれるように…

そして、その日…カイウスは目を覚ます事はなかった。

外は相変わらず黒くて、昼なのか夜なのか分からない。
多分もう夜なんだろうな、と何となく分かった。

リーズナが時々様子を見に来たが、カイウスは何も変わらなかった。

『そろそろ飯食って寝ろ』

「いっぱい寝たから眠くないんだ、食欲もない」

『……お前なぁ』

リーズナが心配してくれるのは分かる、でも俺はそれ以上にカイウスが心配なんだ。
カイウスの頬に触れる、暖かい体温が手のひらに伝わる。

少し腰を上げて、カイウスを抱きしめる…泣いている姿なんて…リーズナに見せられない。

リーズナは『もしかしたら…』と言っていて、慌ててリーズナの方を見た。

なにか思い出したのかと、カイウスの足元で座っていたリーズナに駆け寄る。
リーズナは食いついた俺に驚いた顔をしていた。

「カイウスはどうなってるの!?」

『待て待て、慌てるな…もしかしたらの話なんだから』

もしかしたらでも何でもいい、カイウスが目を覚ますなら…俺は何でもする。

いつもカイウスに守られていたんだ、今度は俺がカイウスを守るんだ!

リーズナの話を聞くために、正座をするとリーズナの顔が引きつっていた。

リーズナの話によると、カイウスの魔力は今空っぽかもしれないそうだ。
カイウスは強い力を使って、意識を失ったと言っていた。

カイウスの魔力がなくなるほどって、なにがあったんだ?
外の真っ黒な景色も関係しているのだろうか。

「カイウスは、回復するの?」

『…まぁな、でも…カイウスの力の量を完全に回復させるのには時間が掛かるな』

「どのくらい?」

『良くて数日か』

後数日もカイウスはこのままなのか?そんなの…

そうだ、騎士団はどうなってるんだ?カイウスが無断で休んだら騒ぎになっていないのか?
リーズナに聞いてみたら、リーズナが代わりに行っているらしい。

リーズナが?それ、大丈夫なのか?カイウスは何処だと思われたりしないのか?

不思議そうにしていたら、リーズナの身体が光った。
そして、現れた人物を見て驚いて目を見開いた。

「…カイ…ウス?」

『中身は俺だけどな』

「いろんな姿に変身出来るんだね」

『カイの事なら理解してるから、化けるのは楽だ』

そう言ってカイウスの姿から、猫の姿に戻っていった。

その姿なら、確かに偽物カイウスだって気付かないだろう。
リーズナが部屋を出ていっていたのはカイウスになっていたからだった。

俺の悪魔の力に魔力はあるのだろうか、魔法は使えないけど…

カイウスの魔力を回復させるなら、それなりの魔力を持っていないと無理だよな。
俺にそんな大きな魔力を持っているとは思えない。

だとしたら他に魔力を持っていそうな人は誰だろう。
パッと思いついた人はいたが、正直頼みたくはない。
選んでいる立場でもないし、今何処にいるかも分かっている。

でも、カイウスは匿ってくれていたのに…カイウスの想いを無駄にするわけにはいかない。

ローベルトの屋敷の地下にいた、神に頼もうかと一瞬思ったが…俺の事が嫌いだから協力してくれないよね。

『カイウスの力なら、カイウスしか治せねぇだろうな』

「どういう事?」

『いや、無理な話だな…悪い、忘れてくれ』

そう言ったリーズナは、今日は夜回りなんだとカイウスの姿に変わり部屋を出ていった。
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