どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中

文字の大きさ
31 / 39
Ⅱ 黒い石のようなもの

2-13.

しおりを挟む
 ───ケイ邸の夜。

 500万クロン───ジェイロの傭兵団に支払われるはずだった総額。受け取り済みの前金が200。残り300を俺が面倒見てやると。プラス本人と部下3人の釈放でとりあえずの報酬とした。俺が〝身請け〟したことは当然秘密にして。
 唯一共有したレザレッテが、金額が高いとか言ってまた抜刀しかけたのを抑え込みつつ。仮に多めにふっかけていようが、そこはそれだ。

「金貨にすると500枚か。昔おとんと壊滅させた盗賊団はもっと持っていたぞ。それで傭兵団30人ちょいを当分面倒みてやれるって……ジェイロって、意外と筋が通ったやつなのかもしれん」

 金貨を指で弾いてはキャッチするのを繰り返す。俺なんて、普段これ1枚すら持ち歩くこともない。王都に来てから、学園の購買部でせいぜい白銅貨を使うぐらい。さあこの金ぴか300枚。どうやって稼ぐかなんだが……

「坊ちゃま。お金が御入用なのですか」

 バスチァンが、就寝前の蜂蜜紅茶を淹れながら、静かに訊いてきた。

「う~ん。300万クロンを短期で稼ぐ方法ってわかる?」
「ふむ……真っ当な内容に限りますなら、魔獣討伐一択でしょうな」
「えっ! 魔獣ってそんなにお金になるの?」
「そうですな。昔、山で狩っておられたジュエルホーンブル、あれなら一頭で100万。三頭でまかなえます」
「マジで? あれ肉が美味しいだけじゃなかったのか」
「ただ、王都周辺には生息しておりませんし、『魔王侵攻』後に激減している個体ゆえ、探し出して討伐するまでの経費も出ないのが現状です」
「な~んだよ。それなら楽勝って思った途端に落とすなんて。バスチァンも意地悪だな」
 
 ずっこけたところに、ふわっと紅茶のいい香りが差し込まれる。蜂蜜とほんの少しのブランデーが利いた、あの〝よく眠れるやつ〟。
 
「ほっほ。お忘れのようですな。邸へ来る時に、解体した魔獣の素材を、いくつか持ち込みましたでしょう?」
「───あっ! そうだった」
「倉庫にブルの角の他、換金できそうな素材がいくつかございます。一度、ハンターズギルドに持ち込んでみては」
「いやった! ほんと、すっかり忘れてた。ありがとうバスチァン。早速明日にでも行ってみるよ。学園は休みだし」
 
 懸案がひとつ解決したところで、紅茶をひと口。ほっとしますなあ。
 そうだった。当座の現金がない時のためにって、おとんが荷台にいろいろ放り込んでくれていたんだった。これなら時間もかけずに済むし、俺が狩った自前だから気兼ねなくお金を作れる。何でも置いておくものだな。
 

 ───翌日。

 バスチァンが用意してくれた荷車に、魔獣の素材を幾つか積んで。地図を片手にいざ、ハンターズギルドへ。探索者に狩人、それに傭兵など、主に魔獣がいる危険区域で希少素材を集める人種を統括している機関だ。
 
 ギルド証も忘れずにって言われて朝から探し回ってしまった。昔に山麓の村で、おとんと一緒に発行してもらったもの。あの時は子供心に、特別な自分の証明を得たようで嬉しかった。ただ、今でも、しかも王都で通用するのかどうか、ちょっと不安だ。

「え~と、四番街筋の真ん中辺り……っと」

 お役所関係が揃うお堅い筋。通り過ぎる人がやたら俺のほうをジロジロと見てくるんだが、おそらくこの浮揚している魔装置仕様の荷車が珍しいんだろう。かなり高価な品らしいから係留時は気を付けて、なんて言われて。ウチってお金があるのか無いのか、よくわからんな。

 やがて……剣と弓があしらわれた看板がどんっと貼り付けられた石造りの建物が、格子の外壁の向こうに見えてきた。無事ハンターズギルドに到着。門番の指示に従い、駐車スペースに荷車を係留して、いざ中へ。
 
 むさくるしい戦装束から商人風まで。さまざまな職種の人間がひしめき合う、広々としたホール。受付カウンターに並ぶ列のひとつに並んで、おとなしく順番待ち。
 
「次のご用件のかた……きゃっ、かわいい」

 受付のお姉さん、俺の顔を見るなりかわいいときた。どうも俺、年上の女性に好かれやすい傾向があるのかもしれない。あったところで活用法はわからんが。それは追々書庫で勉強するとして。

「素材の買取をお願いします」
「それじゃあまず、ギルド証を出してくれる? それとこの書類に、買取希望の素材名を書いて。わからなかったら石とか骨でもいいわよ。魔装置で討伐魔獣のリストと照合できるから」

 そこまでわかるのか。たいしたもんだ。
 必要以上に愛想のいいお姉さんの指示に従いながら、「でかい角」とか「玉虫色の石」などと、適当に書いていく。

「お名前は『ケイ』君で……討伐魔獣は……───ぇえっ! 何これ」
 
 魔装置を触っていたお姉さん、さあっと顔色を変えて立ち上がり、バタバタと奥へ走っていった。まずいな。やっぱり使えないやつだったのか。
 一緒に戻って来た眼鏡のおじさんが、露骨にいぶかしげな顔をしながら、魔装置の画面と俺をしきりに見比べた。

「発行場所……ヒドン村。それならこの魔獣リストでもおかしくない。おかしくはないが」
「ギルド長、あそこって厳戒封鎖区域の入り口の村ですよね。十年前って……彼、5歳ですよっ」
「この王家印が右上に入ったタイプは、七年前に廃止されたもの。現状数枚しか発行されていない。とにかく、それをお持ちのかた、ということだ」

 少々込み入ってきた感あるな。ここで換金できないとなると、さっさと別の金策を考えなきゃならんし。困った展開にならなければいいが……
 眼鏡のおじさん───ギルド長が、さっと眼鏡を整えつつ俺のほうに向きなおった。

「素材は持ってきているんですよね。なら一度検分させてもらいましょう。もうそのほうが早い」
「よろしくお願いします」

 査定員も加わり、ぞろぞろと職員さんたちを引き連れて外へ。荷車を覆っている布をめくるなり、全員がわあっと食いついた。

「じゅじゅ、ジュエルホーンブルの角だっ。しかもこんなサイズ……本物か」
「ファイアイーターの羽根にメタルレイザードの革。特級『甲』の魔獣素材ばかりだぞっ」
「こっちはオリハルコン鉱石、神芝……こ、これはまさか、聖樹ユリシルの樹皮……なんて、まさかな」

 職員全員が怪しい半笑いに。皆まるで何かクスリがキマっているみたいに、うひうひと不穏な声を漏らしている。
 
「ケイ様、でしたね。この大きな鱗は何でしょうか。触れる前から波動がとんでもないのですが」
「あ、それはアルカナ様の鱗ですね。あの方にすればゴミなんですが、人間たちに持ち込むと問題が起こるからって。昔に一枚だけもらったんですよ」
「あ、アル、アル……う~ん……」
 
 俺の話を聞くなり、職員が卒倒した。だが他の職員は目もくれず、一心不乱に荷車にかじりついている。
 これはまた、予想以上にやってしまった感があるな……


 二時間経過。出入りする人たちを観察しながら適当に過ごしていたところ、ギルド長直々に別室へと案内された。
 調度品や家具が貴族邸のそれと同じような絢爛けんらんな部屋に通され、査定結果を書面で渡された。
 
「───お待たせいたしましたケイ様。全11点の査定額はこちらに」
「1千7百万クロン。うわ~思った以上にすごい額……あれ、アルカナ様の鱗は『買取不可』になってますね」
「申し訳ございません。そちらは市場での取り扱い履歴がありませんので、お持ち帰りを。現状は魔術院に持ち込まれるのが最善かと存じます」
「買い取ってもらえないんだ。それはそれでアルカナ様、ショックかもしれないな」
「……は、はは。にわかに信じがたいことをおっしゃっておられますが。ひとまず、現金の確認と、お受け取りのサインを」

 別の職員が震えながら持ってきたトレーの、ベルベットな上布を取ると……そこには見たことのない、白く輝く硬貨が積んであった。

「白金貨で17枚、ご用意いたしました。ご確認後、このまま当方で責任をもって銀行入金いたしますが」
「それでお願い───あ、3百万だけ金貨にして持って帰ります」

 確認のサインをし終えるなり、ギルド長はまた別の書面を机に出した。

「ハンターズギルドの昇格証書です。昨年までの、ヒドン村での実績にのみ基づいておりますので、そこはご容赦のほどを。こちらのギルド証は引き続き、大切にお持ちください」

 特級『甲』に昇格……とある。さっき素材で使っていたのと同じ呼称なんだ。おとんとおかんも確かギルドで格付けを受けていたはずなんだが、また機会があったら聞いてみるか。

「あの、俺みたいな子供に、初見でここまでご対応いただいて、ありがとうございます。信じてもらえたんで助かりました」

 ギルド長は意に介さずとばかりに、にっこりと微笑んだ。
 
「特級素材の取り扱いは、常に王城や魔術院と情報共有されておりますから、問題ございません。それに、お持ちのギルド証は偽造ができない、しても意味がない仕様のもの。あれを提示された時点で、ケイ様個人を何よりも証明されたことになるのです」

 俺個人の証明。ギルド長のひとことが胸に響く。
 
 王都へ来て、ことあるごとに「剣帝と聖姫の子」という見方をされてきた。おとんとおかんは大好きだ。だが、俺は俺。もっと一個人として認識されたい気持ちは、ずっと胸の内にくすぶっていた。だから今の言葉は、とても嬉しい。

 俺の背景を知る人はそれでいい。これからは、俺が誰で、何をする人間なのか。それは焦らずひとつずつ、証明していく。俺の人生を楽しむために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

追放された鍛冶師、異世界で最強の神器を作ってしまう ~国を捨てたら聖女と龍姫と精霊王に囲まれた件~

えりぽん
ファンタジー
王国唯一の鍛冶師である青年カイルは、嫉妬深い貴族により「無能」と断じられ、王都を追放される。しかし、辺境で出会った美しい聖女と契約したことで、彼の鍛冶の才が神話級であることが判明!作る武器すべてが神器となり、魔物どころか国すら震える存在に。本人はただ「役立つものを作りたい」だけなのに――いつの間にか聖女、龍姫、精霊王に慕われる無自覚最強伝説が始まる。ざまぁとスカッと展開、上昇ハーレムファンタジー!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

神に無能と捨てられた俺、異世界で無自覚チート無双~気づけば勇者も聖女も俺の下僕になってた件~

えりぽん
ファンタジー
神に「才能なし」と見捨てられた少年カイ。転生先の異世界でも雑に扱われ、最底辺からの生活を余儀なくされる。しかし、彼の「無能」は実は世界の理すら書き換える唯一の能力だった。知らぬ間に魔王を倒し、勇者を救い、聖女に崇拝される──無自覚にして最強、天然チートの異世界伝説が今、始まる。 裏切った者にはざまぁを。救われた者は恋をする。 無自覚系最強主人公・カイの異世界大逆転録。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界では役立たずと言われたが、気づけば神々に寵愛された件〜追放された俺は無自覚のまま英雄になっていた〜

えりぽん
ファンタジー
パーティーを追放された青年レオン。 「お前のスキルは無意味だ」と笑われ、全てを失った彼は、ひとり辺境へと放り出された。 しかし、彼のスキル【因果交錯】は、世界の理そのものを操る神級の能力だった。 知らぬ間に神々の寵愛を受け、魔王を圧倒し、気づけば周囲には女神と美少女たちが……!? ざまぁ、ハーレム、最強すべてを詰め込んだ無自覚成り上がりファンタジー開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...