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Ⅰ 力を喰らう力
1-1.
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「おいカイル、鑑定はまだかっ。さっさとやれよ!」
F級ダンジョン『小物の巣穴』。カビ臭い洞窟の中で、リーダーの剣士レイオンが〝いつものように〟苛立った声を飛ばす。
俺は言われるがまま、黙って手をかざす。淡い光が土に埋もれた魔石を包み、鑑定結果が「情報窓」に浮かび上がった。
───[低級魔石・小]
「銅貨1枚の価値。捨てるべしである」
結果を一瞥した僧侶グマサナが、吐き捨てるように言う。
「だが、塵も積もれば山となる。少しでも金を貯めて行かないと───」
言いかけた俺を、魔法師ビルチが遮った。
「またみみっちい鑑定士さまのご高説? 銅貨1枚分を鑑定するのに時間をかけて。見るだけでわかりなさいよ」
お前はそれさえわからないんだから、俺が付いてきているんだろうと言いたかったが、言葉を飲んだ。
俺、カイル・リンギオが属する冒険者パーティ『猛き赤獅子』は、初心者向けの訓練場として、このダンジョンの魔物の間引き依頼を定期的に受けていた。
低級魔物を排除することで、依頼者の街の安全にも、そして新人冒険者の育成にもなるという〝ボランティア〟だ。
ここで『アイテム鑑定士』として働いて三年になる。30代半ばも過ぎて、くたびれた無精ひげ顔の事務屋。職選びも困難で食いっぱぐれていた俺を雇い入れてくれたのが、このパーティだ。
アイテム鑑定士は、通常なら拠点で事務職に徹するはずの職業だ。しかしここでは、荷物運び、罠の確認、パーティの書類作成、依頼後の精算と、戦闘以外の全てをこなす何でも屋になっている。
ぶっちゃけると、このD級パーティ自体に金が無いためだ。そのせいで、鑑定士の俺まで現場に駆り出されているわけだが───
今、俺たちはC級昇格を控えている最中だ。レイオンたちの焦りは俺への当たり散らしとなり、最近はこうして言葉や態度に露骨に出るようになった。
しばらく進むと、細い人型の影が、よたよたと俺たちに近づいてきた。
「ゴブリン……いや〝ここ〟には居ないはず。レイオン、気をつけろ」
「うるさいっ、黙ってろっ」
通常、ゴブリンは自分たちの巣穴にしかいない。しかしレイオンは俺の言うことなど気に留めず、容赦なく斬り捨てた。
血しぶきが土を染める中、俺はいつも通りアイテム漁りと鑑定に入ったが、その違和感はすぐに明らかになった。
「……これは……ゴブリンじゃない」
「なら浮浪者だろう。はっ、こんなところでうろつくのは自業自得だ。それよりさっさと回収しろ」
レイオンは鼻で笑い、理不尽な倫理観を当然のごとく押し付ける。
耳と鼻が妙に尖っているが、異常に痩せ枯れていてわからない。万が一、人や亜人だった場合……いや、よそう。疲れもあって、適当に未知の魔物だと思うことにして作業を続けた。
まず目に入った、黄金の腕輪を鑑定。魔力は感じないが、呪われてもいない。装飾品としてはかなりの価値だ。
「鑑定は終わったのっ? ならそれ、見せなさいよっ」
ビルチは奪うようにして取ると、自分の腕にはめ、嬉しそうに眺める。レイオンは呆れ顔ながら注意した。
「おい、それはいい金になるはずだ。ちゃんと後で戻せよ」
「わかってるって。ちょっとだけ」
俺はもうひとつ、傍らに落ちていた小さな指輪を拾った。さび付いた……銀らしき細工。鑑定を行うと、今まで見たことが無い結果が現れた。
[閭ス蝟ー縺 の指輪]
[縺ゅi繧?k豁ヲ蜈キ鬲泌?繧帝」溘i縺??∝キア縺ョ陦?閧峨↓縺吶k]
「くっ……何だ、これはっ」
これまでの鑑定にない、謎の文字列。見たと同時に、頭に刺すような痛みを覚える。あらためて見直すと、ただ『錆びた銀の指輪』とだけ出てきた。
レイオンたちが面倒くさそうに俺へ声を荒げる。
「その汚い指輪はゴミか。お前にお似合いだな。さっさと行くぞ!」
俺は指輪を捨てきれず、ポケットにしまう。そして、追い立てられるまま今日の任務を続けた───
◆
依頼を終え、冒険者ギルドへ。報告とアイテム精算に入る際、レイオンは黄金の腕輪の査定に少し緊張していた。盗難届が出されていた場合を恐れてのことだ。闇ギルドを通せば有無を言わさず即金だが、それをすればもうC級昇格は望めない。
受付嬢が査定結果を提示した。
「性能、性質はカイルさんの鑑定通りです。出どころも問題なし。いつもながら良い目を持ってらっしゃいますね」
せっかく褒めてもらっても、俺はそれを無視している。下手に喜ぶと、パーティ面々がいい顔をしないからだ。
ただ、今日はそれどころでない。問題の、黄金の腕輪の買取額だ。
「さ、3百万イェン……すごい」
「これだけあれば、かなり装備と拠点を整えられるっ」
目の前に金貨が積まれる。みんな狂喜乱舞寸前だが、騒ぐと目立つ。レイオンはこそ泥のように周囲を気にしながら金を受け取ると、俺たちを引き連れ、そそくさとギルドを後にした。
◆
───翌日。
拠点へ書類整理に行くと、珍しく三人がそろって集まっている。レイオンは俺を見るなり、この三年間一度も見せたことのないような笑顔を向けた。
「カイル、いいところへ来た。実はな、さっき魔道具店で、素晴らしいものを買ってきたんだ」
「───っ! それはっ」
手のひらより少し大きい銀の板。特に俺の職業は、それが何かを見間違えることはない。レイオンはご機嫌で続けた。
「そうそう。察しの通り。この『鑑定器』、ちょいと奮発して買ってきたのさ。オレたち『猛き赤獅子』も、そろそろ最先端を導入しようと思ってな」
俺は目の前がくらくらした。鑑定器は安く見積もっても百万イェン。昨日の上がりの三分の一。拠点の滞っている家賃に装備の修繕。必要経費が山積みな中で、そんな浪費に近いことを。何より、その魔道具は俺の仕事を……
「俺に……なんの相談もなしに、こんな」
「相談んん?」
レイオンの影がゆらりと俺の前に来たかと思った途端、
「ぐぁっ」
目の中に大きな火花が散った。いきなり顔面を殴られ、壁の端まで転がった。口端からぬるりとしたものが流れる。
床に倒れた俺を、レイオンはあざける目で見下ろした。
「調子に乗るなっ! 鑑定が便利だから居させてやったが……お前の年長者を気取った、上から目線な口出しがずっと我慢ならなくてなあ。〝この日〟をずっと待っていたんだ」
ビルチがおどけた調子で俺の顔を覗き込んだ。
「ねぇカイル、ほんっきで『役に立ってた』と思ってるの? 戦いもできず、ちまちまと小銭ばかり数えて……あたしたちが背負ってるリスクが違うのに、偉そうにされるとたまんないのよ」
グマサナは俺を見ようともせず、冷たく言い放つ。
「ふん、鑑定士風情が小賢しいのである。我ら魔法を駆使する者にすれば、その歳で智の研鑽も無いのは話にならぬ。ただの事務屋が、よく今日までふんぞり返ってきたことである」
「聞いたかぁ? ま、そういうことだ」
レイオンは、俺に小銭袋を叩きつけた。
「退職金だ。オレはやさしいだろう。それを持ってさっさと出ていけ。いいか、この拠点のリーダーは、オレ。そしてお前は、クビだ」
笑う声が重なって聞こえる。目の前が真っ暗になった。もう三人の顔を見る気さえ持てない。
俺はただ、投げつけられた小銭の革袋を握りしめ、返す言葉もなくふらふらと出て行った。
◆
ボロ宿に戻り、ベッドに倒れこむ。
「俺がやってきたことを、何ひとつ認めてくれなかった……」
俺の鑑定と助言で、何度も危険を回避したことがあったはず。感謝の言葉がある時だってあった。それが……金と魔道具の引き換えに、すべてが無効化され、なかったことにされた。いや、きっと俺の存在自体が、最初からその程度だったのだろう。
「くそっ、くそぉっ……」
悔しさとみじめさで涙がこぼれてくる。誰もいない部屋で遠慮なく。この歳になって、こんなに泣けるのかというほど泣いた。
ひとしきり落ち着いた頃……ふと、背中に何か硬い異物感を覚える。まさぐって取り出すと、昨日拾った錆びた指輪だった。それを見るにつけ、俺はまた沸々と、みじめな自分への怒りが湧いてきた。
「バカにしやがってっ!」
指輪を握りしめ、叩きつけようとした瞬間───頭の中に声が響いた。
<<指輪の能力を取り込みますか>>
「なんっ……だ、今の声は」
きょろきょろしたところで、誰もいない。何より耳じゃなく、直接頭の中に繰り返され続ける文言。
<<指輪の能力を取り込みますか>><<指輪の能力を取り込みますか>><<指輪の能力を取り込みますか>>……
「ぅうるさいっ、勝手にしろっ」
俺は耐えきれず叫んだ。すると……指輪は熱を帯び、俺の手の中で波打ち始めた。
「ひっ……どうなって……うわああっ?」
指輪が手のひらに貼りついて取れない。それどころか、どんどんと手の中へ沈み込んでいく。慌てて引き抜こうとしたが間に合わなかった。そして次の瞬間。心臓に冷たく突き刺さる感触を覚え……俺は胸を押え、床へと転がり落ちた。
「ぐっ……さ、寒い───」
肌に凍り付くような寒気を覚えると同時に、目の前がどんどん暗闇に侵されていく。
やがて俺の意識は、ゆっくりと閉ざされた。
夢の中か……時折、何かが俺の全身と溶けあうような、不気味な気だるさに支配され続ける。
さっきも聞いた声が、また頭の奥まで響いてくる……
<<……鑑定士より『能喰い』への昇格移行、完了いたしました……>>
F級ダンジョン『小物の巣穴』。カビ臭い洞窟の中で、リーダーの剣士レイオンが〝いつものように〟苛立った声を飛ばす。
俺は言われるがまま、黙って手をかざす。淡い光が土に埋もれた魔石を包み、鑑定結果が「情報窓」に浮かび上がった。
───[低級魔石・小]
「銅貨1枚の価値。捨てるべしである」
結果を一瞥した僧侶グマサナが、吐き捨てるように言う。
「だが、塵も積もれば山となる。少しでも金を貯めて行かないと───」
言いかけた俺を、魔法師ビルチが遮った。
「またみみっちい鑑定士さまのご高説? 銅貨1枚分を鑑定するのに時間をかけて。見るだけでわかりなさいよ」
お前はそれさえわからないんだから、俺が付いてきているんだろうと言いたかったが、言葉を飲んだ。
俺、カイル・リンギオが属する冒険者パーティ『猛き赤獅子』は、初心者向けの訓練場として、このダンジョンの魔物の間引き依頼を定期的に受けていた。
低級魔物を排除することで、依頼者の街の安全にも、そして新人冒険者の育成にもなるという〝ボランティア〟だ。
ここで『アイテム鑑定士』として働いて三年になる。30代半ばも過ぎて、くたびれた無精ひげ顔の事務屋。職選びも困難で食いっぱぐれていた俺を雇い入れてくれたのが、このパーティだ。
アイテム鑑定士は、通常なら拠点で事務職に徹するはずの職業だ。しかしここでは、荷物運び、罠の確認、パーティの書類作成、依頼後の精算と、戦闘以外の全てをこなす何でも屋になっている。
ぶっちゃけると、このD級パーティ自体に金が無いためだ。そのせいで、鑑定士の俺まで現場に駆り出されているわけだが───
今、俺たちはC級昇格を控えている最中だ。レイオンたちの焦りは俺への当たり散らしとなり、最近はこうして言葉や態度に露骨に出るようになった。
しばらく進むと、細い人型の影が、よたよたと俺たちに近づいてきた。
「ゴブリン……いや〝ここ〟には居ないはず。レイオン、気をつけろ」
「うるさいっ、黙ってろっ」
通常、ゴブリンは自分たちの巣穴にしかいない。しかしレイオンは俺の言うことなど気に留めず、容赦なく斬り捨てた。
血しぶきが土を染める中、俺はいつも通りアイテム漁りと鑑定に入ったが、その違和感はすぐに明らかになった。
「……これは……ゴブリンじゃない」
「なら浮浪者だろう。はっ、こんなところでうろつくのは自業自得だ。それよりさっさと回収しろ」
レイオンは鼻で笑い、理不尽な倫理観を当然のごとく押し付ける。
耳と鼻が妙に尖っているが、異常に痩せ枯れていてわからない。万が一、人や亜人だった場合……いや、よそう。疲れもあって、適当に未知の魔物だと思うことにして作業を続けた。
まず目に入った、黄金の腕輪を鑑定。魔力は感じないが、呪われてもいない。装飾品としてはかなりの価値だ。
「鑑定は終わったのっ? ならそれ、見せなさいよっ」
ビルチは奪うようにして取ると、自分の腕にはめ、嬉しそうに眺める。レイオンは呆れ顔ながら注意した。
「おい、それはいい金になるはずだ。ちゃんと後で戻せよ」
「わかってるって。ちょっとだけ」
俺はもうひとつ、傍らに落ちていた小さな指輪を拾った。さび付いた……銀らしき細工。鑑定を行うと、今まで見たことが無い結果が現れた。
[閭ス蝟ー縺 の指輪]
[縺ゅi繧?k豁ヲ蜈キ鬲泌?繧帝」溘i縺??∝キア縺ョ陦?閧峨↓縺吶k]
「くっ……何だ、これはっ」
これまでの鑑定にない、謎の文字列。見たと同時に、頭に刺すような痛みを覚える。あらためて見直すと、ただ『錆びた銀の指輪』とだけ出てきた。
レイオンたちが面倒くさそうに俺へ声を荒げる。
「その汚い指輪はゴミか。お前にお似合いだな。さっさと行くぞ!」
俺は指輪を捨てきれず、ポケットにしまう。そして、追い立てられるまま今日の任務を続けた───
◆
依頼を終え、冒険者ギルドへ。報告とアイテム精算に入る際、レイオンは黄金の腕輪の査定に少し緊張していた。盗難届が出されていた場合を恐れてのことだ。闇ギルドを通せば有無を言わさず即金だが、それをすればもうC級昇格は望めない。
受付嬢が査定結果を提示した。
「性能、性質はカイルさんの鑑定通りです。出どころも問題なし。いつもながら良い目を持ってらっしゃいますね」
せっかく褒めてもらっても、俺はそれを無視している。下手に喜ぶと、パーティ面々がいい顔をしないからだ。
ただ、今日はそれどころでない。問題の、黄金の腕輪の買取額だ。
「さ、3百万イェン……すごい」
「これだけあれば、かなり装備と拠点を整えられるっ」
目の前に金貨が積まれる。みんな狂喜乱舞寸前だが、騒ぐと目立つ。レイオンはこそ泥のように周囲を気にしながら金を受け取ると、俺たちを引き連れ、そそくさとギルドを後にした。
◆
───翌日。
拠点へ書類整理に行くと、珍しく三人がそろって集まっている。レイオンは俺を見るなり、この三年間一度も見せたことのないような笑顔を向けた。
「カイル、いいところへ来た。実はな、さっき魔道具店で、素晴らしいものを買ってきたんだ」
「───っ! それはっ」
手のひらより少し大きい銀の板。特に俺の職業は、それが何かを見間違えることはない。レイオンはご機嫌で続けた。
「そうそう。察しの通り。この『鑑定器』、ちょいと奮発して買ってきたのさ。オレたち『猛き赤獅子』も、そろそろ最先端を導入しようと思ってな」
俺は目の前がくらくらした。鑑定器は安く見積もっても百万イェン。昨日の上がりの三分の一。拠点の滞っている家賃に装備の修繕。必要経費が山積みな中で、そんな浪費に近いことを。何より、その魔道具は俺の仕事を……
「俺に……なんの相談もなしに、こんな」
「相談んん?」
レイオンの影がゆらりと俺の前に来たかと思った途端、
「ぐぁっ」
目の中に大きな火花が散った。いきなり顔面を殴られ、壁の端まで転がった。口端からぬるりとしたものが流れる。
床に倒れた俺を、レイオンはあざける目で見下ろした。
「調子に乗るなっ! 鑑定が便利だから居させてやったが……お前の年長者を気取った、上から目線な口出しがずっと我慢ならなくてなあ。〝この日〟をずっと待っていたんだ」
ビルチがおどけた調子で俺の顔を覗き込んだ。
「ねぇカイル、ほんっきで『役に立ってた』と思ってるの? 戦いもできず、ちまちまと小銭ばかり数えて……あたしたちが背負ってるリスクが違うのに、偉そうにされるとたまんないのよ」
グマサナは俺を見ようともせず、冷たく言い放つ。
「ふん、鑑定士風情が小賢しいのである。我ら魔法を駆使する者にすれば、その歳で智の研鑽も無いのは話にならぬ。ただの事務屋が、よく今日までふんぞり返ってきたことである」
「聞いたかぁ? ま、そういうことだ」
レイオンは、俺に小銭袋を叩きつけた。
「退職金だ。オレはやさしいだろう。それを持ってさっさと出ていけ。いいか、この拠点のリーダーは、オレ。そしてお前は、クビだ」
笑う声が重なって聞こえる。目の前が真っ暗になった。もう三人の顔を見る気さえ持てない。
俺はただ、投げつけられた小銭の革袋を握りしめ、返す言葉もなくふらふらと出て行った。
◆
ボロ宿に戻り、ベッドに倒れこむ。
「俺がやってきたことを、何ひとつ認めてくれなかった……」
俺の鑑定と助言で、何度も危険を回避したことがあったはず。感謝の言葉がある時だってあった。それが……金と魔道具の引き換えに、すべてが無効化され、なかったことにされた。いや、きっと俺の存在自体が、最初からその程度だったのだろう。
「くそっ、くそぉっ……」
悔しさとみじめさで涙がこぼれてくる。誰もいない部屋で遠慮なく。この歳になって、こんなに泣けるのかというほど泣いた。
ひとしきり落ち着いた頃……ふと、背中に何か硬い異物感を覚える。まさぐって取り出すと、昨日拾った錆びた指輪だった。それを見るにつけ、俺はまた沸々と、みじめな自分への怒りが湧いてきた。
「バカにしやがってっ!」
指輪を握りしめ、叩きつけようとした瞬間───頭の中に声が響いた。
<<指輪の能力を取り込みますか>>
「なんっ……だ、今の声は」
きょろきょろしたところで、誰もいない。何より耳じゃなく、直接頭の中に繰り返され続ける文言。
<<指輪の能力を取り込みますか>><<指輪の能力を取り込みますか>><<指輪の能力を取り込みますか>>……
「ぅうるさいっ、勝手にしろっ」
俺は耐えきれず叫んだ。すると……指輪は熱を帯び、俺の手の中で波打ち始めた。
「ひっ……どうなって……うわああっ?」
指輪が手のひらに貼りついて取れない。それどころか、どんどんと手の中へ沈み込んでいく。慌てて引き抜こうとしたが間に合わなかった。そして次の瞬間。心臓に冷たく突き刺さる感触を覚え……俺は胸を押え、床へと転がり落ちた。
「ぐっ……さ、寒い───」
肌に凍り付くような寒気を覚えると同時に、目の前がどんどん暗闇に侵されていく。
やがて俺の意識は、ゆっくりと閉ざされた。
夢の中か……時折、何かが俺の全身と溶けあうような、不気味な気だるさに支配され続ける。
さっきも聞いた声が、また頭の奥まで響いてくる……
<<……鑑定士より『能喰い』への昇格移行、完了いたしました……>>
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