彩光の詩 ~Eternal Echoes~

絹咲メガネ

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1st STAGE ~Eternal Echoes~

第22話【ストリートライブの光】前編

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 冬の霧咲きりさきで、彩花の音楽は大きく羽ばたく。

 大舞台の招待、りんとの絆、れいへの愛。

 そして、桜柄の便箋が呼び起こす、懐かしい笑顔。

 物語はいよいよ終盤に向かいます
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・大舞台への挑戦・

 年明けを迎えた霧咲の街は、清冽な空気と新年の静かな余韻に包まれている。

 新学期が始まるころ、衝撃的なニュースが舞い込んだ。

BlossomEchoブロッサムエコー」が、TubeStreamチューブストリームでの人気を背景に、3月の大規模ストリートライブイベント「霧咲ストリートソニック」に地元の人気ユニットとして招待されたのだ。

 霧咲《きりさき》駅前の地下街「霧咲シティプラザ」で開催される盛大な舞台。物販ブースでのCD販売も予定されている。

 彩花と凛は音楽室で目を丸くした。

「マジ!? 地下街のライブ!? 超やばいじゃん!」

 凛が興奮を隠さず叫ぶ。彩花も笑顔で頷いた。

「うん、凛! 配信のおかげでこんな大舞台、絶対チャンスだよ!」

 凛の情熱に心を燃やされ、彩花の胸が高鳴る。

 凛は拳を握る。

「彩花、この機会、絶対ものにしよう! CD作って、物販で売りまくろう!」

 目を輝かせた。

 彩花も拳を握り返す。

「うん! 私たちの情熱、CDに詰め込んで、みんなに届けたい!」

凛と一緒に……もっと大きな舞台に……!

 二人の心は、音楽への情熱で燃え上がっていた。


・レコーディングの熱気・

 年明け後の慌ただしさの中、彩花と凛はレコーディングスタジオにこもり、CD製作に没頭した。

 イベント会社の協力で、プロのエンジニアが手助けしてくれる。

 スタジオは防音ブースのガラスが冬の光を反射し、ミキサー卓のLEDがカラフルに瞬く。

 柔らかなスポットライトが凛の赤いチェックシャツと黒のジーンズを照らし、マイクが彼女の息遣いを捉える。

 彩花の愛機、Northノース Elementエレメント3の音色がスピーカーから響き、吸音材が音を温かく包む。

 彩花はオフホワイトのコットンブラウスとショート丈のデニムスカート、赤いメガネ、ポニーテールで、初めてのプロ環境に心臓がドキドキと鳴った。

こんな本格的なスタジオ…… 私、ちゃんとやれるかな……?

 エンジニアが合図をし、収録が始まる。

 彩花は頬を赤らめ、震える指で慎重に鍵盤を叩く。

 透明なメロディがスタジオを満たし、冬の星空を思わせるサウンドが響く。

 エンジニアがヘッドフォンを外し、隣のスタッフに囁いた。

「アマチュアでこんな安定感……初めてだな。」

 もう一人が肩を叩き、「最初からここまでやられちゃ、俺たちやることないじゃん!」と笑い合う。

 だが、彩花にはその声が遠く感じられた。

スタッフの笑顔……
私の音、ちゃんと届いてるのかな……?

 凛がブースに入り、ショートカットが軽く揺れる。

 彼女の歌声が「Sparkleスパークル Rushラッシュ」で炸裂し、まるで、空間を支配するかのようにスタジオに響き渡る。

凛の声……こんなに力強いなんて……!

 彩花の心が震え、凛の情熱が炎のように燃え上がるのを感じる。

 エンジニアも驚きを隠せず、「配信の人気、納得だな!」と呟く。

 スタッフの一人が頷き、「こいつは凄い! 鳥肌もんだ!」と手を叩いた。

 スタジオに興奮の空気が広がり、凛は笑顔で彩花にウインク。

「彩花、ノリノリでいくよ!」

凛の炎のような眩しさ…… 
私の音、こんな光に追いつけるのかな……?

 彩花の心に小さな影がちらつく。スタッフの熱狂が凛に集中している気がして。

「凛、このハモリ、私ももっと感情入れてみるね!」

 彩花が提案すると、凛はマイクに顔を近づけ、「おっけー! 彩花のハイトーン、めっちゃ心に響くから、ガンガン乗っていくよ!」と笑った。

 二人の声が重なり、スタジオが温かな光で満たされる。

 凛は彩花との共鳴に胸が熱くなった。


・彩花の決意・

 2月に入り、レコーディングを終えてスタジオを出た二人は、イルミネーションが輝く霧咲の夜を歩く。

 彩花は凛にそっと言った。

「凛、CD作り、ほんと楽しかった。ストリートライブ、絶対成功させようね!」

 凛は笑顔で頷く。

「当たり前だよ! 彩花と一緒なら、どこまでだって……行けるよ!」

 凛の笑顔がまぶしくて、彩花は少し胸が軽くなった。

 だが、BlossomEchoに夢中になりすぎたせいか、最近、怜との時間が減っている気がする。

怜にそっけなくして、愛想を尽かされたら……?

 不安が胸をよぎり、彩花は慌ててメッセージを送った。

「怜、レコーディング終わったよ! Crystalクリスタル Veilヴェールも、絶対新曲作ろうね!」

 怜からの返信がすぐに届く。

「彩花! レコーディングお疲れ! ライブ、応援するよ! でもまた一緒に音楽やろうな!」

怜……いつも応援してくれて……大好き……。

 彩花の心が温まる。


・街角の邂逅かいこう

 週末の午後、彩花はパン屋でのアルバイトを終え、霧咲の小さな雑貨店に立ち寄った。

 オフホワイトのシャツが店の暖かな照明にきらめき、シルバーフレームのメガネ姿に、髪を下ろした姿で棚を眺める。

怜に会いたいな……。

 あのスタジオの温もり……クリスマスイブの貸しスタジオでの親密な時間が頭をよぎり、頬が微かに熱くなった。

 新曲のアイデアを書き留めるため、メモ用紙を探していると、桜柄の便箋が目に留まる。

 淡いピンクの花びらが夕陽のように輝き、彩花の心を強く揺さぶった。

この柄……中学の図書室で、優奈ゆうなとメモを交換したあの桜……!

 懐かしさに胸が熱くなる。

優奈の笑顔は、今の私に勇気をくれる……。

 便箋を手に、彩花は決意を新たにした。

凛に負けないように頑張らなきゃ……!
優奈と同じように、私も誰かを照らしたい……!

 便箋を手にレジへ向かう。レジのカウンターで、店員の少女が桜柄の便箋を手に取り、一瞬、動きを止めた。

 少女が顔を上げ、驚いた様子で語り掛ける。

「ねえ……彩花? 彩花だよね?」

 視線を合わせると、そこには信じられない光景が広がる。

 中学時代、同じ図書委員として淡い想いを寄せていた優奈が立っていた。

 ショートカットだった黒髪はゆるくウェーブし、黒いエプロンにクリーム色のブラウスが照明に揺れる。

 優奈の笑顔は、まるで図書室の夕陽がそのまま降りてきたように鮮やかで、彩花の心臓が一瞬止まった。

「優奈! うそ……ほんと、優奈なの!? こんなところで……信じられない……!」

 彩花の声が震え、瞳が輝く。

 中学二年の春、気さくに話しかけてくれた優奈。

 図書室で本を整理しながら笑い合い、夕陽に染まる窓辺で優奈の声に心を奪われた記憶が、鮮烈に蘇った。

優奈……。

 過去の憧れが再燃し、胸が激しくざわめく。

 目の前にいる優奈が本物だと信じられず、思わず手を伸ばして彼女の袖に触れる。

「彩花! めっちゃ久しぶり! このメモ用紙……図書室で一緒に使ったよね?」

 優奈がカウンターから身を乗り出し、笑顔で彩花の手を握った。

 柔らかな温もりに、彩花の瞳が潤む。

「優奈……ほんと、優奈なの……? こんなところで……!」

 中学の図書室、優奈の笑顔が鮮烈に蘇り、胸がそっと揺れる。

「優奈、びっくりしたよ……! 何してるの? 霧咲にいるなんて……」

 彩花の声が詰まり、優奈の温もりに心が震えた。

 優奈は笑顔で続ける。

「親の仕事で転勤が続いてたんだけど、最近ようやく霧咲に戻ってこれたの。
彩花にまた会えるかもって、ずっとどこかで願ってた……。この桜柄を見た途端、図書室の夕陽が鮮やかによみがえってきたよ。」

 優奈の瞳が輝き、彩花をまっすぐ見つめる。

優奈……私のこと、覚えててくれて……!

 彩花の頬が熱くなり、心臓がドキドキと高鳴った。

「優奈……私も、図書室のあの時間、ずっと忘れてなかった…… こんなところで会えるなんて、運命みたい……!」

 二人は連絡先を交換し、優奈はエプロンを整えながら微笑む。

「バイト中だから、今日はここまでだけど…… また絶対話そうね、彩花!」

 彩花は便箋を胸に抱き、頷いた。

「うん、優奈! また会おう!」

 雑貨店の暖かな光が、彩花のシャツを輝かせ、二人の再会を祝福する。
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・次回予告:第23話 ストリートライブの光 後編

 運命の再会を果たした彩花と優奈。かつての明るく社交的な少女の瞳に宿る寂し気な光に、彩花はそっと気づく。  
 冬のカフェで交わされる二人の会話が、互いの心を静かに温める中――雪のイルミネーションの下で、彩花は衝撃的な光景を目撃する。

・読者のみなさまへ

 彩花が大きな舞台に立つ喜び、凛との絆、そして――
桜柄の便箋が呼び起こした、懐かしい笑顔。
 皆さまの心に残った場面があれば、ぜひ聞かせてください。どんな小さな言葉でも、すごく嬉しいです、
 彩花の心が揺れ、過去と今が重なる瞬間を、次回も皆さまと一緒に感じていただけていたら幸いです。
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