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2章 学園での生活

閑話  ルドゥリアーナ④

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 彼女の嫁ぎ先、ベルナーラ王国について調べてみた。調べてみたと言っても他国の簡単な情報ならすぐにわかる。でも私はお父様が入ってはいけないと言っていた所にあった本をこっそりと読んで調べてみた。
ベルナーラ王国は一夫多妻制で側妃を迎えることを許可されている。しかし近年どの国王も正妃以外を娶っていない。生まれた子供の中で必ずしも王位継承権を持つものが生まれるとは限らない。不思議な鳥を連れている。
けれど、出てきたのはこれだけだった。それに、この情報も確かなものとは言い切れない。王位継承権のことも条件などは何も書いてないし鳥に至ってはその鳥を見たという人がほんの数人いる程度だと書かれている。それも本当に王家の鳥なのかすらわからない。情報が少なすぎる。

 そうこう色々考えてたり思い出したりしていると学院の教室についた。
教室に入ると彼女が駆け寄ってきた。いつものことで誰も気にしていない。
そして、朝からブーブー文句を言ってきた。

「聞いて聞いて!
他の令嬢達がリディに迫ってるらしいの!」

「リディがとられちゃう.......」

「リディが断ってるのに諦めてくれないらしいの....困ったな」

婚約してからずっと、彼女の悩みは彼のことだけだ。
話して満足したのか彼女は先生に用事があったことを思い出したらしく教室を出て行った。
私は教室の中を見て不思議に思った。人が少ないのだ。いつもは既にきている人が何人もいない。嫌な予感がして窓から外を見ると人だかりが出来ていた。中心にいて狼狽えているのは彼だ。
私は自然とそちらへ向かっていった。




 私がその場についた頃には更に人が増えていた。そしてその中でも前の方にいる人が彼に迫っていた。彼女の言ってたのはコレか。
彼女はスロート侯爵令嬢のフルーレ。私と同じ彼女の弟の婚約者候補なのに他の人に迫るなんて.......教養はダメじゃない。
もう1人の子はルスト辺境伯のミーナ。辺境では領地の男の子達からチヤホヤされていたと聞いた。だから男子にチヤホヤされて当然だと思っているところがある。ただし、王都に来て誰も相手にしてくれないから彼に目標を定めたのだろうか。他国との貿易もベルナーラ王国なら簡単にできるだろう。考えが浅はかだ。
彼は何度も断っているようだ。けれども全然聞いてもらえていない。彼では彼女達を鎮めるのは無理だろう。そう思うと体が勝手に動いていた。

「見苦しいです!
それでも貴方たちは貴族の令嬢ですか?」

私の顔を見てフルーレは悔しげに顔を歪めていた。それ以外の人たちは口を噤んで気まずそうに目を逸らしている。
私はそんなことを気にせず、あえて名乗らずに後ろを向いて笑顔で話しかけた。

「大丈夫ですか?
未来の義兄様?」

そういうと、何を言われたのかわからないようなキョトンとした顔をしていてなんだか可愛かった。

「困惑されてますね。
理由と挨拶は後ほど教室で話しましょう。」

笑顔でいい、それから前を向いて令嬢達を見た。

「皆さん、見苦しいですよ?
パーティーなら許されるでしょう。けれどここは学園です。学院の中で王子とわかった途端にアピールを始めて本人にキッパリ断られているにも関わらず更に言い募り挙句困らせる。」

誰も何も答えないので続けて言った。

「本人に嫌われてもいいのなら止めません。どうぞお好きなだけアピールしてくださいな?」

そう言って私は自分が思う挑発的な笑みを浮かべて言い放った。
彼女達は自分のためにも家のためにも嫌われたくないはずなのでパラパラと黙って離れて行った。

そして私も離れた。




 休み時間になって私は彼女と一緒に彼の教室へ行った。
彼女には朝のアレコレを話した。話していると笑っているのに徐々に目が笑わなくなっていって怖かった。断っていたと何度か言ってやっとおさまってくれたから良かったけれど。

きちんと名乗って彼女の弟の婚約者候補だということを伝えた。彼は納得して彼女と話し始めた。話題はやっぱり私のことみたい。話終わったのかこちらに話を降ってきたりして休み時間が終わるまで色々と話した。




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