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2章 学園での生活

閑話  アリーシェ①

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 私はアリーシェ。アリーシェ•メルヘイヤ。メルヘイヤ子爵家の三女に産まれた。
私には前世の記憶がある。前世、私は引きこもっていた。その間家でずっと続けていたゲームが『王国男子と恋の魔法』だ。このゲームは王国に住んでいる子爵家の令嬢と王子や騎士との恋物語。まぁ、よくある乙女ゲームだ。私はこのゲームが大好きだった。
その中でも1番推していたのはメインヒーローである王太子のシルバルド、シル様だ。舞台であるリヴラード王国の王太子でとってもカッコいい。少しフラフラしているけれどやるべきことはしっかりとこなすのだ。その手腕でリヴラード王国は更に栄える。そしてシル様のルートでは彼の傍に常に子爵令嬢がついているのだ。
その子爵令嬢の名前がアリーシェ。つまり今の私だ。私はこのゲームのヒロインで主人公なんだ。この世界は私を中心に回っている。私が幸せになるのは決まっているの。なのに上手くいかなかった。



 私がこの体で記憶を取り戻したのが6歳の頃。当時は元の性格が変わってしまったと少し騒ぎになった。けれど数ヶ月もすると誰も気にしなくなった。
私はまず自分の使える魔法を確認した。
ゲーム通りなら、魅了魔法と光魔法が使えたはずだ。私は試しに二つとも使ってみた。
光魔法は灯りをつける程度でそれ以上の力は使えないみたいだった。けれど魅了魔法はしっかりとかかった。
魅了魔法をかけられた相手は私に夢中になる。その感覚がどうしてもやめられなくて更に使い続けた。


 大きくなって学院に入るとき、父親であるメルヘイヤ子爵家当主と話をした。

「お父様、シルバルド王太子殿下は婚約者の方にうんざりしていないかしら?」

私はお父様に聞いた。ゲームならシル様は婚約者であるフォール侯爵家の令嬢に嫌気がさしていた。そんな時私と出会って恋をする。もし今嫌気がさしていなかったらゲームと変わってしまう。けれどそんなことはありえない。今まではゲームと同じだった。なら変わらないはず。私はお父様を見つめていたがお父様は何を言っているのだ?というふうな顔になった。

「アリー、何を言っているんだい?」

「え?」

「シルバルド殿下は王太子ではないよ。それに婚約者もいない。
どこでそんなデマを聞いたんだい......」

「え?
う、嘘でしょ.........」

嘘だ。信じたくない。だって、なんで?ゲームではそれが全てだった。嘘なんかじゃない、デマなんかじゃない。
シル様が王太子じゃないってどういこと?

「嘘じゃないさ。
次の王はまだ未定だ。ルルミア王女殿下の婚約者が次の王になるだろう。」

「ルルミア?」

そんなキャラはゲームでは出てこなかった。名前すらも聞いたことがない。

「知らないのか?
ルルミア王女。シルバルド殿下の姉君で次の女王陛下となる方だ。
だから、ルルミア王女殿下の選んだ方が次の王となる。」

そんな.........。
ゲームと違う。そんな子いなかった。間違いなくいなかった。ここはゲームじゃないの?なんで?

「さ、この話は終わりにして早く学院へ行く準備をしなさい。」

そう言うとお父様はスタスタと歩いて行ってしまった。

私は何かの間違いだと思いながら準備を進めた。





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