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15 そんなんじゃ無いけどゴメンね…
しおりを挟む昨日女神に追放されてしまったという、同級生のミサキを探す為に俺たちはダークウルフのココアを頼りにして街へ出た。そして、街から更に森の方へと進んだ。
少しずつ森を進む。もう日が暮れそうだというのに……
「魔道師でレベル20そこそこのアイツじゃあ一日でこの森を抜けるのは難しいだろうな ?
引き返しているなら良いが、これはマズイぞ !!」
「うん !」
「バウ !」
ココアも俺の言うこと理解してるっポイ。
森の中ではたびたびゴブリンが探知にかかるもののオレたちに気付くと、じわじわと離れていく。
どうやらダークウルフからは逃げるような態度だ。奴らにとっては天敵で恐ろしい存在なのだろう。
人間には相手が強くても弱くても、ガンガン向かってくるというのに不思議なものだ。
とすると、ゴブリンには相手の能力を推しはかるような知力が無いのかも知れない。
オレ達人間なんかは、ちょっとコワモテの人を見てもすぐビビっちゃうのにな。
それはそうと、ここは森の中の小みちということもあって少し薄暗い、陽もずいぶんと傾いてきた。ここは少しでも急ぎたい。
俺とナターシャは隠密のスキルを全力で発動し気配を消した。パーティー扱いになるのかココアにもいくらか隠密の効果が行き渡り、それなりに強い魔物は避けて進むことができたんだ。わずかでも時間が惜しい…
また少し進むとココアがスピードを上げた。
何か反応があったのか ?
「アウ~… 」
近付いたのだろうか ?
「ミサキー !」
「ミサキー !」
「バウッ 」
やがて小さく吠えると、ココアは小さな洞窟へ入って行った。
「バウッ バウッ バウッ!!」
「ミサキーーー !!」
「ウルフッ !!!! ええっ コッ、ココアなの ?」
「バウーー !!」
「うわっ ! ココア舐めすぎー !」
「バウ バウ !!」
ミサキはココアにぺろぺろと顔を舐めまくられていた。
「おい ! 大丈夫か ?」
「ケ ケンタロー君、どうして ?
……
ううっ うわーーん !!」
近くに行くと、ミサキは俺に軽く抱き付いて泣き出してしまった。
「ムムムッ… !!」
「おいおい、大丈夫かよ ?
ぐふっ ! イヤ、待て待て !
一回落ち着こう !
オレのほうが大丈夫じゃねーよ。
みんな、こっちに来たら積極的だなぁ !」
「そっそっそっ そんなんじゃ無いけど……
魔力切れで、もうさ、本当に死ぬかと思ってたから……
うううっ…
ゴメンね… ゴメンね… 」
「そっかぁ、だけど危ないトコだったな ! お前、どこに行くつもりだったんだよ ?」
「もう王都は嫌だから隣の町に…… 」
「ええー ?! 王都からどんだけかかると思ってんだよ ? この森抜けても小さな村があって、その先はまだまだあるぜ」
「えっ、そうなの ? 知らなかったわ⤵」
「そうか、分かった ! じゃあそこまで連れてってやる ! オレたちもたまたまそっち方面を攻略中なんだよ」
「ホント ?」
「ナターシャ ! コイツに回復魔法掛けてくれるか ?」
「ムッ、うん… 」
俺達はミサキの体力を回復してとりあえずイージー村へ転移で飛んだんだ。三人と一匹では初めてだったけど、大丈夫だった。
「うわああー スゴーーい !!」
「うん… 」
わんわん泣いていたのに、もうすっかりご機嫌のようだ。女ごころは難しい。しかし、良い方に難しいならそれは問題ない !!
この日もイージー村の夢いろ亭に泊まった。
もちろん、ミサキの部屋は別に取った。
「おー ! 新しい女子ね。お兄ちゃんはモテるのね、ナターシャ !」
「ムムムッ !」
「姉さん勘弁してくれよ ! もしヤバイ関係だったらトラブルになるぜ !」
「ハハハそれくらいは見抜いてるわよ ! これくらいは女将の嗜みよ !」
「女将さんにゃかなわないな、まったく !!」
あっ、そういえば忘れてた。
あの人大丈夫かな ?
お城で捕まって牢屋に入れられてたりしないよな ?
まさかね…
ちょっと心配…
実は……
ケンタローとナターシャがお城に侵入しようとして隠密のスキルを強く発動した瞬間のことだった。
二人は言葉少なに、わずかなコミュニケーションで良く連携が取れていたが、ゲルマは何の説明も受けてなかった為、突然自分の前から二人の姿が消えてしまったのだ。
当の本人には何が起こったのか理解できず、一瞬で見失い、はぐれてしまったのだった。
ゲルマは悲しみにくれるのかと思いきや、ちゃっかり王城広間で仲良しの衛兵を何人か見つけ、食堂に入り込み一緒に宴を開いていた。
「カンパーイっす !!」
どこに行っても生き抜く強い生命力を持った青年だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋に戻り、落ち着いてからステータスを確認すると、SPがかなり貯まっていた。俺もナターシャも1日で900くらい貯まっていた。ありがたい。
新たなスキル、MP微自動回復というのを500SPで取得した。たくさんのSPが必要だったけど、少し背伸びしても得ることにしたんだ。MPは生命線だからね。
30分で総MPの3%回復(小数点以下切り捨て)
おお !!! というほどの数値ではない。かといってすごく少ないのかな ? とも、思えない。といったビミョーーな数値だ。
MP200の人なら30分で6、1時間で12回復するということだな。こうして計算してみると本当に微妙だけど、一度のSP消費でずっと効果があると思えばお得な気がしたんだよね。
俺はMP微自動回復、ナターシャは剣術、MP微自動回復を取って、毒耐性などの、ひょっとしたら必要かもというスキルのレベルを少し上げておいた。
「ナターシャ ? そうMP微自動回復だよ。良し、良いね !」
「うん… 」
「MP回復なんてスゴいのね、聞いたことないわ」
ミサキがいろいろ話がしたいからと言って俺達の部屋に来ていた。
オレとしても仲間たちのこれまでの様子や現状も知りたかったのもあって話しは積もり、かなりの情報交換もしていた。
「まあ、微だからそんなにはね…… そういえばナターシャの付与術ってスキルが前から気になってたんだけどさ… 」
「それなら私も持ってるよ」
オレ達は付与術や魔法なんかは使えないか使えたとしても完全に独学で、この世界の魔術師達から手ほどきを受けたミサキのほうが詳しいようだ。
「どんな感じかな ? ナターシャは使ったことあるの ?」
「ううん… 」
「えっとね、武器や防具やアイテムやアクセサリーとかに自分の持っている能力の範囲で魔法などを付与する事を付与術と言うのよ。
宝石や金属や魔石に込めたい属性の魔力を注ぎ込むの。
例えば剣術の能力が上がる剣とか魔法防御の鎧とか、毒耐性のネックレスとかね。
二つとか三つ重ねる人もいるけど私は無理だったわ」
「うん」
「へぇー 、なるほどね ! 俺の知識とそれほど大差無いな。剣や魔石なら死ぬほどたくさんあるぜ !」
俺はアイテムボックスから、たくさんのゴブリンの剣と様々な魔石を取り出した。
なんたってゴブオの名はダテじゃないぜ。ゴブリンの剣なんて100本くらいあるからね。
「わわっ… 」
「バウ ?」
「うわあスゴーい ! じゃあ私がやってみようか ? 金属の剣が手っ取り早いわよ」
「ああ、頼むよ。実際に見るのは初めてなんだ」
ミサキはゴブリンの剣をテーブルの上に置いてその上に両手をかざしてお祈り ? してるのかな ?
「サンダーの魔力を流し込んだよ」
「鑑定するよ ! おおっ ちゃんと電撃が付与されてる ! やるなぁ !」
「じゃあナターシャ、やってみる ?」
「うん !」
「エッ、エクスプロージョン !!!!!!」
「ぐおっ、わーーー ! ストップ、ストーープ !!」
「へっ… ?」
「危ないわぁ ! 家の中で火魔法は危ないわよ~
!! 火事になるわ。それに、このゴブリンの剣だとエクスプロージョンは多分無理よ。剣自体が燃えちゃうかもね。 フフフッ 」
「じゃ、サンダー !!」
ナターシャはもう一度お祈りをやり直した。
「どう ? ケンタロー君、できてるかな ?」
「うん。ちゃんと付与されてるよ。やったなナターシャ !」
「えへっ 」
「初めてで成功なんてスゴいね~ !」
それからしばらくあれこれ試して剣術+5の剣と魔法防御+5の皮の服が、とても良い出来だという評価をミサキ先生からいただいたのだ。
久々に同級生と交流を持ったけど、付与術を通じて俺もナターシャも少しだけミサキに馴れたような気がするかな ?
俺もミサキも外ではおとなしい性格で前の世界ではそんなに話したこともなかったけど、1対1とか1対2で話をしたりする、こういう機会を持つと意外と相性は悪くなかったんだと思えた。
かといってお互い恋愛対象ではないだろうけどね。まあ、恋愛は予測できないけどな。
ケンタロー スキルマスター 16才 男
レベル:88 人族 異世界人
攻撃力:271
守備力:196
ラック:67
体力 :243
速さ :192
魔力 :115
HP:293/302 MP:61/124 SP:675
スキル:身体強化LV5・駿足LV3・威圧LV5・剣技LV5・拳闘技LV5・縮地LV3・探索LV5・探知LV5・隠密LV5・毒耐性LV3・麻痺耐性LV3・魅了耐性LV5・風魔法LV5・物理防御LV5・魔法防御LV5・MP微自動回復・転移・鑑定・アイテムボックス
ナターシャ 魔術師 14才 女
レベル:86 人族
攻撃力:84
守備力:129
ラック:49
体力 :155
速さ :120
魔力 :257
HP:123/158 MP:130/244 SP:648
スキル:身体強化LV5・剣術LV5・探索LV1・探知LV3・隠密LV5・毒耐性LV3・麻痺耐性LV3・魅了耐性LV5・生活魔法LV5・火魔法LV5・雷魔法LV3・物理防御LV5・魔法防御LV5・回復魔法LV8・付与術LV5・MP微自動回復
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