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17 人生で言われてみたいランキングベスト5のひとつを達成しました!
しおりを挟む俺は一人で、ただしイチカの使い魔のココアを連れて早朝に出発した。
行き先は王都ではなくイージー村だ。
ひとつ考えていたアイデアがあったんだよね。実はコイツをちょいと鍛えてやろうと思っていた。
イージー村のダンジョンにはボスを倒すとレベルが1つ上がるという特典があるんだ。
「ココア ! オマエを鍛えてやればイチカに危険が迫っても守ってくれるだろ ?」
「バウッバウッ !!」
「そうかそうか ? 頑張ろうな !」
「バーーウ !」
おーう ! かな ?
コイツは今レベル20だ。ダークウルフだからスピードと体力はかなりあるから、ガンガン周回できるはずだ。俺の体力に関しては全く問題ないぜ !
俺達は早朝からダンジョンの周回を始めた。
ゴブリンは無視して振り切って行く。ところがココアが遅い ! 俺とはレベル差がかなりあってどうしても遅れてしまう。
体力とスピードに優れたダークウルフであってもこれだけのレベル差は覆せないようだ。
それでも遅いとはいえ入り口からボスを倒すまで、一周30分だった。二周目は俺がココアを抱えて隠密フルパワーで駆け抜けたら20分だ。
しかし2~3周は大丈夫だろうけど、これでは俺の体力が持たないな。弱ったぞ。
そこで次は抱えずに二人(一人と一匹)で進み。その次はココアを抱えて進んでみた。一回休み的なかんじだね。これが功を奏した。
二人で走って進みボスを倒した後、入り口付近まで転送されるとココアは抱っこして ! って感じでクンクンと鼻を鳴らしおねだりしてきた。
オレとはまだ短い付き合いなのに結構仲良くなれた。ホントにカワイイ奴だ。
それに、次は抱っこして進むんだとちゃんと分かってる。賢い奴だ。
そうして順調にレベルアップを繰り返し続けると、その効果があったのだろうか ? ココアのスピードが目に見えて上がってきた。二人で走っても20分で行けるようになってきたんだ。
しかし、ぶっ続けで周回し続けると、15回ダンジョンボスを倒してレベルが15上がったところでココアに疲れがみえた。
「良し、休憩だ ! 良く頑張ったなココア !」
「バウーー !」
とりあえずこれでコイツもレベル35だ。
「前と見違えるような体力だ。ご飯を食べて、休憩したらもっと頑張れるよな ?」
「バウッ !!」
コイツってすんごいモフモフだし、素直で可愛いなぁ。たくさんワシャワシャしてやると、すごく嬉しそうだ。ココアに愛着が湧いてきたよ。
俺達は休憩してからまた頑張った。
この日は30周できたんだ。
そのままお宿、夢いろ亭に行って食事をとり、すぐに眠った。
翌日も30周したところで切り上げた。
これでココアはレベルが60上がって80になったんだ。護衛犬としてはもう、十分だろう。俺もレベル88から148になってしまった。
転移で移動して、まだ明るいうちに王宮に着くことができた。
俺とココアは隠密のスキルを使ってお城の中へと忍び込んだ。忍び込むのも2度目なら、少しは上手に侵入することができるというものだ。門番もいたし途中で何人もの衛兵に出会ったけど、全然バレなかった。
オレの隠密のスキルはレベル5まで上げたが、このレベルだとオレ一人なら完全に気配を消すことができるので、こうして潜入したりするのにとても重宝するんだ。
しかしココアのご主人様であるイチカは見付からなかった。最初にこの前イチカが居た同級生の女子部屋に直行すると、元世界の学園のアイドルだったアイリだけが居たのだが……
「クゥーーン ⤵⤵」
ココアはヒドく悲しみに暮れているが、探知で探っても見付からないんだ。ココアはもと来た通路を引き返してイチカを探そうとした。
「ごめんな、ココア ! ちょっと待ってくれよ !」
俺は部屋に入り、まずは見張っていた兵士を峰打ちで気絶させたのだ。
兵士が倒れそうになるのをバサッと両腕で支えてあげた。
「誰 ?!」
俺は …あっそうだヤバイヤバイ、と思ってすぐに隠密の効果をを解いたんだ。すると、何も感じさせない状態から俺とココアの姿を確認できるようにした。
「あっ、ココアと… 確かケンタローさんだったかしら ?」
アイリは冷静に答えながらも、一歩、二歩と後ずさっていたのだ。
下賎な者呼ばわりされて追い出されたレベルの低い男が、闇にまぎれるようにして舞い戻って来たのだ。襲いに来たか、夜這いにでも来たと予想したんだろう。
そう思っても仕方の無いところだけどマズイぜ ! 誤解を解かなければ !
「安心してくれ ! イチカに会いに来ただけなんだ !」
「イチカに夜這い ?」
「バウーー ?」
えーー ? アイリさんて、ものスゴい美少女だから話し掛けるのもドキドキするってのに反応が独特だなぁ ? 天然 ? それとも俺がそんなにスケベな顔してたのか ?
「おいおい待ってくれよーー !! 」
「間男を待つ趣味はありませんわ !」
間男って、やっぱり警戒されてるーー !! それともエロ願望有りなのか ? イヤイヤ ! そこは妄想しすぎたな !?
「夜這いのボケに乗りたいところだけど、その方向の考えから修正してくれないかな ? ほらこの子 ! 借りてたココアを返しに来たんだよ。ミサキを探すのに活躍したんだぜ !」
「ごめんなさい、そうよね。えっ ? ミサキを探す件は聞いてたけど、見つかったの ? あゝ無事で良かった !! あっ………… それより、イ今度はチカか昨日から姿を消してしまったみたいで… 」
アイリは言い終わるか終わらないかのうちに、下を向いてしまった。
ここまで何でも無いように話しているが、それは元々持ち合わせたアイリのリーダーシップの能力で毅然として振る舞っていただけで、実のところ、イチカの失踪は相当堪えていた。
もちろん、それが決定打になっただけで、その前の二人の失踪も他のことでも、心に甚大な被害を被っていたのだ。彼女がひとりで抱えたそのストレスは計り知れないものだった。
普通の者なら涙無しに語れないほどだが泣く暇があれば他に自ずからできることがあるはずだと考えていたのだ。
「みたいって…… お前らじゃなくて女神の意向ってことか ?」
「わたくし達の意見なんて重用されませんわ !
何もできない…
仲間も守れない…
あらがう道の方向さえ見えなくて…
自分の力の無さに呆れてしまう」
俺とミサキに続いてイチカも放り出されたんだ。
身近にいたアイリとしては感傷的になるのも無理はないよな。
だけど、コイツは優秀なようだから大丈夫だろ ?
ココアもイチカのことを心配してる。先を急いだほうが良いだろう。
「そうか ? ありがとう。俺は急いでイチカを探したいから失礼するよ ! あっそうだ、ミサキは保護してスロベールの町で家を借りて生活してる。たぶんイチカも連れて行くから安心してくれ ! じゃあな !!」
「ミサキを ? イチカも連れて ?
……待って ! 待って下さい !!!」
俺とココアはもう部屋を出てほとんど駆け出そうとしていたのだが、アイリは去ろうとする俺を、慌てて大きな声で呼び止めた。
何だ ? まだ何か聞きたいのかな ?
慌てて呼び止めたくせに、何か考え込んでいる様子だった。
「何か、聞きたいことでもあるの ?」
「あっ、あの… 」
「うん。」
「え~と……
できることならば、わたくしも連れ出してくださらないかしら ? ケンタローさん」
「ぐわっっっ !!! 」
俺の中の人生で言われてみたいランキングベスト5を黒艶髪美少女から言われるなんて…… 恋人同士のやり取りじゃないからな。ちよっと意味は違えど、その口撃に耐えられないほどだぜ !! 生きてて良かったーー !
「どうなさったの ??」
「だだだだだだ…… 大丈夫です !
良いよ ! じゃあまずは一緒にイチカを探しに行こうか ? 荷物は ?」
「はい 行きましょう ! 荷物はこのバッグひとつでしてよ !」
その時、突然この部屋に何人もの人がが入って来たんだ !
「とても大きな魔力を感じたのよ。捜しなさい !
ああっ !!
何でお前が !!
ゴブオは追い出したはずよ !! 忌々しい」
現れたのは女神イーリスだった。
おのれ ! 今、俺は人生の1ページに残る最高のシチュエーションを味わっているところなのにー !!
許さんぞ !
「忌々しいって ? 生まれて初めて言われたぞ !! はあー、タメ息が出ちゃうよもう。オレがゴブリンならさっさと倒さないとあっという間に増えて襲われてしまいますよ ! 女神さん !!」
「イヤッ ! 気持ち悪いわコイツ !! 騎士団長クラウディーハート ! 早く倒して♡」
「何だ ? 騎士団長も魅了しているのか ? やりたい放題だな、女神さん !」
「知ってたのね ? ケンタローさん ! 男子達はあの力で骨抜きにされてしまったわ。私も耐性が出なければ危いところでしたから」
騎士団長は女神の声援に応えようと、剣を振りかぶった。
「我が剣で楽にしてやろう !」
「あんたじゃ無理だろうね !」
「はああああー ??? ゴブオのくせに、なっ 生意気な !!」
興奮気味に顔を赤くして斬りかかって来たが、スローモーションのように動きが遅い。避けても面白くないから剣で受けてつばぜり合いの形に持っていったんだ。力比べをしてみようかと思ってね。
「ぐぬっ、ぬぬぬぬぬっ ! コヤツ、何ていう力だ !!」
「うんうん予想どおり、これくらいのパワーだろうね !」
ぐいぐい押し込んでやる。やっぱり相手にならないな ? 騎士団長クラスでこの程度なのか ?
コッチとしてはさんざんバカにされた分のお返しにキッチリと叩きのめさないと気が済まないからなぁ。そこで、今度は一旦離れて騎士団長に攻撃をさせることにした。
「くっ、剣技というものはチカラだけでは計り知れぬ、奥深いものだということを思い知らせてやろうぞ !!」
騎士団長クラウディーハートとしても、ゴブオとして下に見ている相手にこのままやられるつもりはミジンも無かった。ここで自分の持てる力を全力で注ぎ込み、圧倒的な勝利を得て女神の寵愛を受けようと目論んでいたのだ。
やがて時を得ると、中段から上段から、右から左から、更に、相手から見えない位置に剣をかついでからの鋭い必殺の剣撃を振るった。
今までこの技を初見でしのいだ者はいない、自慢の必殺技だった。
ところが、その渾身の剣撃はかすりもしなかった。
次々と繰り出してくる剣技だが、その剣を次々と受け、時には軽く流し剣撃をそらした。余裕があったので必殺技は受けるまでもなく素早く移動して空振りさせたのだ。
すると、まさかその技が避けられるなどとは予想もしていなかった団長は体制を大きく崩してしまった。
それは致命的だった。
そこを袈裟斬りにすれば簡単に決着がついたところだったが、それでは面白く無い。
軽く足もとに一振り見舞ってやった。
「ぐふっ !! なっ、なっ ?!」
「さて、奥深さとやらを教えてもらわないとな !」
「くっ !」
相手の全てを完全に見切っていたのだ。その上で軽く斬りつけ、それなりにダメージを与えた。
パワーもスピードも差がありすぎてまったく相手にならない。だが、簡単に倒しても運良く勝ったと思われてはつまらない。
「何を遊んでいるのですか ! 早く本気を御出しなさい !」
「申し訳ありません。全力に近い技だったのですが…
しかしまずいぞ、これは勝てぬかもしれん。お前たちも斬りかかるのだ !」
女神様のような素人目には分からないようだが、それなりの実力をもつ騎士団長は相対してみて、こちらの剣技に自分の能力ではとてもじゃないが及ばないと肌で感じていた。
「なんだ ? なんだ ? 騎士団長ってのは正々堂々と一対一で戦うもんじゃないのかよ ? まあ、別に全員まとめての方が面倒無くて良いんだがな…… 」
後ろで見ていた5人ほどの兵士が剣を向けてきた……
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