Lythrum

赤井 てる

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〜Machinery city〜

第一話「歪み」

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「第1、第2システムチェック完了」

『了解、システムチェック確認。システム オールグリーン』

 耳元のスピーカーからオペレーターの声が届き、次の瞬間には真っ黒に染まっていたモニターに光が宿り、外の金属の壁を映し出す。
 ユウキは外の様子を見た。
 外では整備班達が必死で作業をしており、ドア付近ではライフルを手に携えた部隊が背中を壁に預けて待機している。
 みんな生きるのに必死なのだ。
 もちろん自分だってそうだ。だからこそここにいる。
 すると通信を知らせる電子音声がなり、モニターにサブウインドウが開くと若い女性が映し出された。

『艦長からF.O.R.Tへ…って今はあなたしかいないわよね』

「明日になったらちゃんと皆んなに向かって言えますよ。…京香さん、無理を聞いてくれてありがとうございます」

『全くよ。本当は絶対安静じゃなきゃ駄目なんだから…』

 京香は呆れたように薄い笑みを向ける。

「…今の状況は?」

 京香は難しい顔で答えた。

『最悪よ。第1、第2ハッチが破壊されて敵機械部隊が攻め込んできているわ。ここも落とされるのは時間の問題よ。それを防ぐ為には…』

 こくりとユウキは頷いた。

L.M.B長距離移動ブースターの射出と同時にドッキング。それを使って敵本拠地まで一気に加速し、心臓部であるコアを破壊する。そして皆の救出…ですよね」

『そうよ。コアを破壊できれば、敵は機能を停止するわ。そうすれば皆も助け出せる』

 そこで別オペレーターの声が入った。

『出撃準備完了。機体を第3リニアカタパルトに移動します』

 オペレーターが言い終えると同時に、上層のハッチが開き、上昇していく。

『―――第3エリア突破されました!』『―――第2エンジン被害増大!機能しません!』

『第4、第5エリアの隔壁急いで!―――第2エンジンの出力を0にカット、第4エンジンに全て回して!』

 オペレーターの報告と共に京香の指示する声が聞こえる。

『今聞いたようにかなり危ない状態だわ。電子ジャマーによる通信障害で皆の安否も分からなければ、増援も望めない…それにここには動かせるだけの機体も残ってない…あなたが最後の希望よ』

「……」

『大丈夫。今まで激戦を潜り抜けてきたあなたにならできるわ。…絶対に全員で帰るわよ、ユウキ』

『ちゃんと無事に帰ってこいよ!』

『皆をお願いね!』

 ブリッジにいるクルー達から声援が聞こえてくる。

「うん、ありがとう…行ってくる!」

 クルー達の声に京香は薄く微笑むと、別部隊に指示を飛ばした。

『ユウキが出るわ!グレイヴス隊、敵を近付けさせないで!』

『艦のフィールドを解除しました!第3デッキ、ハッチオープン!射出タイミングを、ナサイ君に譲渡します!』

 オペレーターの報告を聞き、操縦桿を握り直す。

 …絶対に成功させる!

「了解!デスティニーフォージ、ユウキ・ナサイ行きます!」

 スラスターの出力を上げ、母艦イモータルからユウキの乗るデスティニーフォージが出撃する。
 すると同時に、危険を知らせる電子音が鳴り響いた。

「…ッ!早速か!」

 イモータルの防御フィールドを一時的に解除したことにより、強引に突っ込んできた敵機がグレイヴス隊の包囲網を抜け接近してくる。
 ユウキはすぐ回避行動をとらせ、左右に装備している銃剣ガンソードを銃モードにし、トリガーを引き絞って牽制した。

『フィールド再展開、L.M.B射出準備開始!』

 ノイズ混じりのオペレーターの声が届く。

 敵の攻撃が激しすぎる!このままだと…!

「―――!」

 コクピット内に電子警報音が響き、直ぐ様反応する。

 右上方に敵!

 機体を向けると、半壊状態の敵機がすぐ目の前まで急迫していた。
 ユウキは銃モードから剣モードに変形させ、斬りかかってきた敵の斬撃を受け止める。

「この程度の攻撃…!」

 ユウキは斬撃を受け止めながら、もう片方の銃剣で敵の胴部を叩き斬った。
 だが、次の脅威は直ぐにやってくる。
 新たに後方から2機が接近し、ビームソードを振り下ろしてきた。だが既に剣先にユウキの機体は無く、素早く敵の攻撃を躱すと瞬間的にバーニアとスラスターを同時に噴かし、すれ違いざまに2機を両断した。

「……っ!」

 身体に大きな負荷がかかる。

 NLSが使えないと、ここまでダイレクトにくるのか…!機体も重いし…!

 だが、うろたえてはいられない。

 数を減らさないと…!このままじゃL.M.Bを射出できない!

 さっきよりも数が増えてきている。
 イモータルはフィールドを展開して敵の攻撃を辛うじて防いでいるが、L.M.B射出時にはその防御壁を解除しなくてはならず、その間に攻撃されれば撃沈しかねない。
 既に一度、敵の奇襲を受け、艦内に侵入も許している。これ以上被害を出す訳にはいかない。

「……ッ!」

 ユウキは左手に握らせている銃剣を逆手持ちにすると、ウイングユニットを展開した。
 歯を食いしばり、スラスターの出力を上げて敵機に接近していく。

 気を失うなよ…!

 そう自分に言い聞かせると、ユウキは何重にも重なる銃火を、腕部、脚部のバーニアを噴かして躱し、鋭角な動きを繰り返して次々と撃墜していった。

「ハァ…ハァ…!」

 体力の消耗が激しい。だが息をく暇もなく、コクピット内に電子警報音が鳴り響く。

『―――艦上方より敵機接近!』

 オペレーターからも報告が届き、ユウキは機体を母艦イモータルの真上に移動させ、左右の銃剣を構えた。

「あれは…!?」

『よりによって対艦隊戦仕様ね…!』

 母艦イモータルとデスティニーが迎撃を開始するのと同時に、手に全長の倍はある大きさのパイルバンカーを装備した3機が、前左右に展開する。

「挟撃なんてさせるか!」

 目の前から来る敵は囮。本命は左右に展開した2機だ。だがまずは目の前の敵を叩く。パイルバンカーを装備している以上、後回しはできない。
 ユウキは敵機に向け幾度となくトリガーを引き絞る。しかし放たれた銃弾は、小刻みな動きで回避され、殆どが無駄弾に終わってしまった。

「あんなデカ物持ってちょこまかと…っ!」

 ならばと右の銃剣を剣モードに切り替え、左で弾幕を張りながら接近していく。
 すると突然、右方から銃弾が撃ち込まれ、目の前の敵が爆散した。

『ナサイ!』

 声が聞こえ、サブウィンドウに男の顔が映し出される。

「ソランさん!」

 ソランの駆る機体が近付くと、デスティニーを守るように停止した。

『艦は私達が守る!君は、君が救うべき者達の為に進み続けろ!』

 気付けば、左右に展開した2機は既に別隊員によって撃破されている。

「お願いします!」

 ソランの言葉に返事をし、ユウキは艦の前方に移動した。

 今なら…!

 隊が敵機を引き付けてくれているお陰で、艦への砲火が弱まっている。

「―――沙希さん!」

『はい!L.M.B射出します!』

 艦のフィールドが解除され、第3リニアカタパルトからL.M.Bが射出される。
 ユウキはL.M.Bに向け、機体を飛翔させた。
 コンソールを操作し、ドッキングシークエンスに移行する。

『―――ドッキングシステム、起動―――』

 システム音声が聞こえ、L.M.Bが変形する。
 射出用のブースターがパージされ、台形を形作っていた5つの大型ブースターが上下左右に展開すると、折り畳まれた機首部からレーザーポインターが伸び、急停止したデスティニーの背部と結びついた。
 デスティニーフォージはオートで背面移動し、L.M.Bの接続口から伸びたパイプがメインスラスターに潜り込み、ドッキングが完了する。

 よし…行ける!

 ドッキングした状態なら、目標に一気に接近できる。

「デスティニーフォージ、目標に向けて飛翔します!」

 大型ブースターの出力を全開にし、爆破的な加速力を持って上空を一直線に進んで行く。

「…ッ」

 L.M.Bの加速によるGが、前方から見えざる巨大な手で押し潰されそうになる。だが今は耐えるしか無い。

『―――L.M.B使用限界時間まで032セコンド―――』

 目標である敵本拠地はまだ見えない。

『―――L.M.B使用限界時間まで012セコンド―――』

 よし…あれか…!

 残り約12秒程で敵本拠地を視認することができた。
 状況を確認するため、望遠カメラを呼び出して中の様子を伺ったのだが、中の様子を見てユウキは目を見開いた。

「コアが…どこにも無い…!?」

 コアの場所は、京香から渡された位置データに表示されている。だがいくら照らし合わせても、心臓部であるコアがどこにも見当たらなかった。

『―――L.M.B使用限界時間まで005セコンド―――』

 L.M.Bの使用限界時間が近づく。

『―――3…2…1…L.M.B使用限界、パージします―――』

  「ガコン」と背部から鈍い音がなり、L.M.Bがパージされた。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 今、艦内は敵の猛攻が止み、静寂に包まれていた。

「艦周辺に敵影は?」

 京香に問われた総士がセンサーを確認し答える。

「反応ありません。現空域に敵影なし」

「そう…」

「京香さん…成功したのでしょうか?」

「…まだなんとも言えないわ」

 答えが曖昧なのには、理由があった。

 いくら何でも早すぎる…

 L.M.Bの加速力があるからとは言え、この短時間で敵本拠地まで行き、コアを破壊するのは到底無理だ。
 皆が破壊したという可能性もあるが…

『―――ミス・イノエ』

 そこで通信が届き、ブリッジのモニターにグレイヴス隊の隊長、ソラン・ヴェスターが映し出された。

「何か変化はあった?」

 京香の問いに、ソランは小さく首を振った。

『いえ…ですが気になることが一つ』

「何?」

 そう言うと画像データが届き、京香は沙希に言ってモニターに表示させた。
 それは最初の…F.O.R.Tが出撃した直後の画像だ。

『これは、先程の戦闘データの一部です。ここに注目していただきたい』

 画像データが拡大され、そこに青がかった点が映し出される。徐々に画質が高められていき、数秒後には、藍色のした機体がはっきりと映し出された。
 しかも所々に、薄らと黒い歪なマークが確認出来る。

「あの機体は…」

『恐らく、最近噂になっているだと私は思います』

「「………!」」

 ソランの言葉に、皆は息を呑んだ。

「………」

 また厄介な事になってきたわね…

 映っている後ろ姿からして、進行方向は機械兵本拠地。そして向かう機体は、近頃噂になっている濃藍こあいの機体…

「分かったわ。情報提供に感謝します」

「京香さん…」

 葉月が心配そうな表情で呟く。

「ええ、そうね」

 京香は薄い微笑みを返すと、いつきに問いかけた。

「行けそう?」

「火器、各部エンジンの損傷が酷いですが―――」

『―――それは気にしなくていい』

 ここで通信が入り、母艦イモータルの専任整備士であるたつの声が聞こえた。

『そこは俺が何とかする。樹は無理矢理にでも母艦こいつを動かせ』

「―――ですね」

 竜の言葉に、樹も同感した。

「頼むわ」

 周りを見ると、皆覚悟を決めている。
 どうやら、意見は一致しているらしい。

『良いクルーをお持ちで』

「ありがとう」

 京香は微笑みを返すと、ソランを見て言った。

「聞いての通り、私達は今から機械兵本拠地に向かいます。よって、ここからは我々の独断行動、艦の防衛はここまでで大丈夫です。隊はエネルギーの補給後、本部への報告を―――」

『―――それには及びません』

 だがそこで、ソランが遮って言った。

『乗りかかった船です。最後までお付き合いしますよ』

「けれど…」

 京香の言葉に、ソランは『お気遣いなく』と言って言葉を続ける。

『今ここ一帯は、電波妨害でFDR(フライトデータレコーダー)が機能していません。理由なら、後でいくらでも作れますよ』

「…感謝するわ」

 京香は小さく頭を下げ、通信を終了する。

「沙希、第3カタパルトからグレイヴス隊の収容をお願い」

「はい」

 沙希の返事を聞いた京香は、艦長席に体を預け、天井を見上げた。

 ………

 濃藍の機体の出現、機械兵の心臓部。胸騒ぎが止まらない。そしてその不安は恐らく、いや確実に的中する。

 また来ると言うの…

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その後、L.M.Bをパージしたユウキは、迎撃に遭うこともなく機械兵本拠地の目の前まで来ていた。

 一体どうなってるんだ?敵の攻撃が無いなんて…

 ジャマーによる電波妨害は、機械兵には影響されない。こちらの存在には気づいているはずなのに、攻撃されず、敵を一機も確認できないのはとてもおかしな事だった。

 ………

 敵影が無い事を確認すると、機体を本拠地の中に着地させた。
 周辺に敵の姿は無く、静けさだけが漂っている。ただ、足元に何かの残骸を発見した。

「……!?」

 ユウキはそれを見て、何故敵が攻撃を仕掛けて来ないのか、その理由が分かった。

「全機…停止している?」

 そこには、機能が停止した機械兵がガラクタのように崩れ落ちていたのだ。
 しかも一機だけではなく、周りに停止した機械兵が多く散らばっている。
 この状況から分かることは、一つしかない。

 既にコアが破壊されてる…?皆がやったのか…?

 だが、その可能性は考えにくかった。
 もし皆がコアを破壊したとしたら、まだここにいるはずだ。いなかったとしても、ここ周辺にいるなら微かに味方機の反応があるはずなのだ。
 しかしその反応は無い。

  一体誰が… 

『―――おやー?どうやらまだ残党がいたみたいだね』

 声!?何処から?!

 突如聞こえた聞き覚えのない少年の声。その声は愉悦を含んでいた。

「何者だ…?」

 だが、相手はユウキの質問に答えず、逆に問い掛けてくる。

『もしかして君も、コアを狙いに来たのかい?』

 …君も?

 ユウキは姿が見えない相手に向けて言った。

「俺以外にも、ここに誰か来たのか…?」

『そうだね。丁度君みたいなのがここのコアを破壊しようとしてたよ。ほんと、馬鹿な奴ら』

 すると、上空から全身が濃藍に染まっている機体がゆっくりと降りて来た。恐らく、今通信している相手機体なのだろう。濃藍の機体はデスティニーフォージから数十メートル離れた場所に着地すると、言葉を続ける。

『君達はここ機械兵に奇襲を受け全滅の危機が迫っていた。討っても討っても、虫のように湧き出でくる増援。だからコアを破壊して機能を停止してやろう、確かにそれは良い選択だ。なのに…何故コアを破壊する必要がある?何故本質に気づかない?確かにコアは機械兵を動かすための心臓部だ。でもそれだけじゃない。もっと他のがある…』

「コアはどうした…?」

『僕が頂いておいたよ。今から起こす、のためにね』

 ―――!?

 その言葉を聞いた途端、ユウキは銃剣を構えた。

「歪みを引き起こして何を―――」

『―――あーはいはい、どうせ『何をするつもりだ』って言いたいんだろ?皆同じこと言ってる。って言うか、そんないかにも怪しい事、聞かれて答えるわけないだろ?』

『はぁ…』とため息をつくと、言葉を続ける。

『僕は争いに来た訳じゃないんだ。それでも邪魔をするって言うなら…』

 場の空気が重苦しく変わる。

『君も、なるかい?』

 瞬間、濃藍の機体は神速を持って急迫し、デスティニーフォージの右腕を付け根から斬り飛ばした。

「なっ…!」

 衝撃がコクピットに響き、右腕を斬られたのも束の間、次の瞬間には左腕を掴まれ無造作に投げ飛ばされていた。

「ぐぅっ…!」

 地面を転がり、機械兵の残骸にぶつかって派手な塵煙をあげる。

「…細身の機体で何てパワーだよ…」

 けれど残骸があって良かった。クッションになってくれたおかげで、ダメージが少なくて済ん―――

「―――!!」

 だが、ふと目に入った残骸の横…そこにを見て、息を呑んだ。

『おや、見つけたかい?君のもう1つの目的はだろ?』

「……そだ…」

 それは、見間違えるはずがなかった。

「…嘘だ…」

 コクピットごと刺し貫かれているケイン機、首元から両断されている小和機と源機、細長の剣が突き刺さっているダリル機、頭部と手足が引きちぎられ、人型としての原型を留めていなかった萌依機…みんなの機体が無残な姿に成り果てて崩れ落ちている。

「嘘だ…っ…!」

『感動的な再会だね。何か声をかけてあげたら?皆生きてるか分かんないけど』

「―――ッ!!」

 敵の愉悦の含んだ声に、悲しみが一瞬で憎しみに変わる。

「……よくも…」

 憎悪に満ちた目で敵機を睨みつける。

「よくもーーーーッ!!」

 ユウキはスラスターの出力を全開にすると、濃藍の機体に飛び込んで行った。

『ハッ!仲間の敵討ちかい?いいねぇ!素晴らしい仲間愛だよ!でもどっちみち君の目的はコアを破壊することなんだろう?だったら君も、あいつらと同じように殺さなきゃぁ!!』

 濃藍の機体は、デスティニーの斬撃を軽やかに躱すと、胸部に膝蹴りを食らわした。

「ガッ…!!」

 後ろに飛ばされ、その間にも濃藍の機体は細長の剣を横薙ぎに振るおうとしている。

「―――クッ!!」

 激しいGと衝撃で気を失いそうになるが、それを意思の力で耐え抜くと後方にバーニアを吹かし、瞬時に剣先から逃れると今度は前方に吹かして急接近、敵機に銃剣を振り下ろした。
 しかし、すんでの所で受け止められる。

「うあァァァァッ!!」

 だがユウキは機体出力を上げ、一気に敵を押し上げた。敵がバランスを崩した所で素早く機体をスピンさせ、敵の胴部に蹴りを喰らわせる。

『ハッ!君、なかなかやるねぇ!NSLがないのに僕に食らいつけるなんて、彼らよりよっぽどイレギュラーっぽいよ!』

 言いながら濃藍の機体は旋回し、ユウキは銃剣を放ちながら追いかける。

『―――ま、それは君にからなんだけどさぁッ!!』

 すると濃藍の機体は急停止し、こちらを振り返りると同時に首元を掴み上げられた。直ぐ抵抗しようとするが、敵機のサブアームが手足の関節部を掴み動かすことすらままならない。

『そういえば君の仲間に、1人面白いのがいたね!』

 だがユウキは左手首を回転させ、握らせている銃剣でサブアームを切断するとそのまま濃藍の機体に振り下ろす。

『この僕にまで、ある意味予想外だったよ!』

 斬撃は容易く受け止められ、互いにぶつかりあった実体剣同士が火花を散らし、コクピットモニターを白く染め上げる。

『―――おや?』

 すると、突然濃藍の機体はデスティニーから離れた。
 その瞬間に、一筋の粒子ビームが両機体の間にほとばしる。

 今の攻撃…!?

『―――見つけたぞ濃藍の機体!』

 声が聞こえ、粒子ビームが飛来した方向を見ると、グレイヴス隊の隊長機が接近していた。その後ろには母艦イモータルも確認できる。

「ソランさん!?皆もどうしてここに…!?」

『ハハッ!雑魚がわんさかッ!』

 増援を見るや否や、濃藍の機体は剣を振るって飛翔して行った。

「駄目だッ!!」

 ユウキも直ぐにその後を追いかけるが、敵機は桁違いの推力でどんどんかけ離していく。

『私が相手になる!』

 濃藍の機体と接触する寸前、ソラン機は飛行形態を解除して敵機の攻撃をすれ違いざまに躱すと、背後に弾丸を食らわせた。

『もうこれ以上…目の前で誰もやらせはせんッ!!』

 飛行形態に変形し、敵機の反撃を避けると再び変形を解除して背後から押さえ込む。

『今だ!!』

 ソランの声に、ユウキは銃剣からビーム刃を出現させて接近して行く。

『アハハハ!地上で何度も空中変形なんて、流石はA.G.Uの元エース!!』

『その声、まさか乗ってるのは子供かっ…!?』

『だったら何?あとさ…』

 急に敵パイロットの声音が変わる。

『―――気安く僕に触れるな』

 濃藍の機体の背部から大量の光る粒子が放出され、ソラン機は勢いに押され拘束を解いてしまった。

『クッ…!』

『甘いなー。あと今の寸前で離れるつもりだったんだろうけど、それバレてたら大きな隙になるよ?』

 言いながら遅れてやってきたデスティニーの攻撃を受け止め、もう片方の細剣で左脚を切断した。

「うァッ!!」

『ナサイ!』

『―――こうなるからさぁ!』

 濃藍の機体は、バランスを大きく崩したデスティニーフォージを斬りつけ、左腕を、左脚を斬り落としていく。
『ユウキ!』という京香の声が聞こえたが、手脚を切り落とされてしまったデスティニーフォージは何もする事が出来ず、バランスを取れなくなり錐揉み状態で落ちていく。

『さぁて!!そろそろ開幕と行こうか!』

 …助けれなかった…

 デスティニーの首を鷲掴みにし、後ろから迫っているソラン機の攻撃を神速で避けると、胸部に叩きつけて2機諸共艦に接近していった。

 間に合わなかった…

『君達丁度いいからさぁ!』

 ユウキは唯一残った頭部の機関砲で抵抗するも、濃藍の機体の装甲に傷をつけることも叶わず艦の甲板に叩きつけられる。
 そして濃藍の機体は、水色に輝く球体を天に掲げた。
 その瞬間、天に掲げていた球体は空気中に吸い込まれるようにして消えていく。

『上空に高エネルギー反応です!』

『―――全員どっかに消えちゃいなよ!!』

 皆の仇もとれずに…

 次の瞬間、球体が消えていった場所に亀裂が入った。

『2人とも早く脱出して…!!』

 こんな…ところで…!

 亀裂はどんどん広がっていき、ついにはコクピットの中まで潜り込む。そこで敵パイロットの声が聞こえた。

『…今はまだ君達を殺しはしない…ただになってもらうよ』

 そして敵パイロットがそう言った次の瞬間、亀裂が割れ、眩い光がユウキ達を包み込んでいった。
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